UAV あなたが知らない あなたの会社だけの強み ― 顧客に選ばれ続ける「最強ブランド」のつくり方 (彌野泰弘)の書評

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UAV あなたが知らない あなたの会社だけの強み ― 顧客に選ばれ続ける「最強ブランド」のつくり方
彌野泰弘
日経BP

UAV あなたが知らない あなたの会社だけの強み(彌野泰弘)の要約

「UAVマーケティング」は、自社の強みと顧客インサイトに基づいた価値(UAV)を一貫して反映させることで、顧客に選ばれ続けるブランドを築くフレームワークです。商品・サービス、価格、販路、広告・販促のすべてにおいて一貫性を持たせることで、顧客の信頼を得て、持続的な成長を実現することができます。

顧客に支持されるUAVマーケティングとは?

UAVとは、ユニーク・アトラクティブ・バリューの略。「顧客に選ばれ続ける価値」を意味します。(彌野泰弘)

Bloom&Coが提供する「UAVマーケティング」フレームワークは、100社を超える企業のブランドマーケティング支援を通じて生まれた、企業規模や事業カテゴリーを問わず汎用的に活用できる手法です。このフレームワークは、多様な企業において持続的な成長を実現するための重要なツールとなっています。

Bloom&Coは、代表の彌野泰弘氏がP&GやDeNAで培った豊富な経験を活かし、日本、シンガポール、スイスにおいて、グローバルな視点でマーケティング戦略を策定・実行してきました。同社はグローバルカンパニーや日系大企業だけでなく、スタートアップ企業まで幅広いクライアントにサービスを提供しています。

その結果、様々な業界や市場で成功を収めてきました。消費者のライフスタイルが多様化する現代では、P&GのマスマーケティングとDeNAのデジタルマーケティングを組み合わせることが重要です。

UAVマーケティングフレームワークは、顧客インサイトと企業の強みを組み合わせることで、顧客に選ばれ続ける価値を生み出すことを目的としています。このフレームワークを活用することで、企業は自社の強みを最大限に活かし、持続的な売上成長を実現することが可能です。

UAV(ユニーク・アトラクティブ・バリュー)とは UAVは「顧客に選ばれ続ける価値」を意味し、企業が最強ブランドを築くために重要な考え方です。UAVマーケティングでは、他社に模倣されにくい自社の強みと顧客インサイトを組み合わせ、持続的な売り上げ成長を目指します。

同社はこれまで100社以上の企業を支援し、戦略を正確に実行した企業の約8割が目に見える効果を上げてきたと言います。そのうちの約半数は売り上げや新規顧客獲得で過去最高の結果を出し、支援前後で投資対効果が2~3倍、中には競合対比で5~10倍、顧客のLTVが約3倍に増加した企業もあるそうです。

企業規模や事業カテゴリーにかかわらず、再現性高く成果を出すには、汎用性の高いフレーム化されたマーケティングノウハウが求められます。

SNSの台頭により、消費者は多様な情報源と無限の選択肢を持つようになりました。この状況で企業が顧客に選ばれ続けるには、ブランドに対して明確な価値を感じてもらうことが必要です。そのため、本質的なマーケティングやブランディングに取り組むことが重要ですが、実現するのは容易ではありません。

多くの企業が顧客の購買行動を分析する際、「なぜ買わないのか」に注目しがちです。しかし、UAVマーケティングにおいて重要なのは、なぜ顧客が自社のブランドを選び、買ってくれているのかを特定することです。この「買う理由」を明確にすることで、顧客に選ばれ続ける価値を見出し、強化することができます。顧客が数ある選択肢の中から自社のブランドを選ぶ理由を明確にすることは、UAVの開発に直結します。

本書は非常に読み応えがあり、著者の考え方に深く共感しました。UAVは「自社の強み」と「顧客インサイト」を掛け合わせて生まれます。重要なポイントは、USP(ユニーク・セリング・プロポジション)が企業目線であるのに対し、UAVは顧客視点であるということです。これは、私が日頃顧問先にアドバイスしている内容でもあります。

「顧客に選ばれ続ける最強ブランド」をつくるために企業が行うべきことは、自社の強みと顧客インサイトを組み合わせて、顧客にとって魅力的な価値を提供することです。競合との差を意識するのではなく、顧客が何を求めているのか、自社がどのような価値を提供できるのかを見極めることが重要です。このアプローチを実践することで、顧客に選ばれ続ける強いブランドを築くことができます。

顧客のインサイトを深く理解し、自社の強みを活かした価値を戦略的に訴求することで、競合と戦わずして勝てる強いブランドを築けます。顧客理解に基づいたUAVマーケティングを実践し、持続的な成長を目指しましょう。そのためには、自社の強みを徹底的に深掘りし、顧客視点でマーケティングを行うことが大切です。

顧客起点が重要な理由

UAVマーケティングでは見るべき対象を「競合」ではなく、「顧客」としています。競合ばかりを意識し、単純に競合他社よりも認知を高めることに躍起になったり、同じ土俵で優劣を競い合ったりしても、異なる競合がまた別の特徴のある商品を出してきたときに、顧客を奪われる可能性があります。

UAVマーケティングは、競合他社ではなく顧客に焦点を当てたアプローチです。この方法では、単純に競合よりも認知度を高めることや、同じ土俵で優劣を競うのではなく、顧客が何を求めているかを徹底的に理解し、それに応える価値を提供することが重視されます。

既存の競合起業にばかり目を向けると、ディスラプターなど今までとは異なる競合が、新たな特徴を持つ商品を投入した際に顧客を奪われるリスクが高まります。国内市場では少子高齢化が進み、消費者人口の減少が予測される一方、テクノロジーの進化により、国内企業にも海外進出のチャンスが広がっています。しかし、海外市場では競合がさらに増えるため、競合との「いたちごっこ」的な競争を続けていては持続的な売上成長は望めません。

選択肢と情報が過多な現代において、多くの顧客に永続的に愛されるブランドをつくるための答えが「UAV」にあります。UAVマーケティングの最大のポイントは、「顧客に選ばれ続けるためにどうすればいいか」を徹底的に突き詰めたマーケティングフレームワークであることです。

あらゆるマーケティング活動や計画において、目的・目標を明確にすることが重要です。さらに、「WHO(誰に)/WHAT(何を)/HOW(どのように)」というフレームワークを用いて戦略的なプランニングを実践・運用することが求められます。

・WHO(誰に)
ターゲットとなる顧客層を明確に定義することから始めます。顧客のニーズ、希望、行動パターンを詳細に理解し、彼らがどのような価値を求めているかを分析します。

・WHAT(何を)
次に、自社が提供できる独自の価値を明確にします。競合他社では提供できないユニークな製品やサービスを特定し、それを顧客にとって魅力的な形で提供する方法を検討します。

・HOW(どのように) 最後に、その価値をどのように顧客に伝えるかを考えます。マーケティングメッセージの作成、広告戦略、デジタルマーケティングなど、多岐にわたる施策を総合的に計画し、実行に移します。

マーケティングの成功の鍵は、顧客視点での意思決定を徹底すること。最良の事例を基に進化し続ける汎用性の高いフレームワークを持ち、全員がそれを使えるようにすること。優れたマーケティング施策を展開する高い実行力と、それを重んじる文化を醸成し、施策を的確に実行できる人材育成の仕組みをつくること。

自社の強みを最大限に活かし、顧客が魅力的に感じる価値を提供することで、持続的な成長が実現します。このアプローチにより、確実に売上を伸ばし、競合と戦わずして勝てる強いブランドが築かれます。企業が自社の強みを理解し、それを活かすことは、競争の激しいビジネス環境で成功するための重要な要素です。

強みを見つけるためには、自社の持つ資源や能力を客観的に評価し、顧客の視点から見てどのような付加価値を提供できるかを考えることが不可欠です。例えば、製品の品質や独自の技術、顧客サービスの質などが自社の強みとして挙げられます。これらの強みを活かすことで、顧客は他社との差別化を認識し、自社の価値を高く評価するようになります。

その結果、顧客のロイヤルティが高まり、売上が伸びることにつながります。さらに、自社の強みを活かすことで、競合他社と比較して独自のポジショニングを築くことができ、ブランド価値を高めることができます。このように、自社の強みを最大限に活かすことは、持続的な成長と競争力の向上につながる重要な戦略であると言えます。

売上アップのためには有効認知を獲得しよう!

「無効認知」とは、ブランド名や商品名は知っているが購入意向の喚起がされない認知のことを指します。ブランド名や商品名をただ連呼するテレビCMを想像してもらうと分かりやすいでしょう。これはブランド名称の認知獲得には有効ですが、「見たことがある」「聞いたことがある」程度で終わってしまうため、売り上げには直結しないことが多いです。一方「有効認知」は、その商品やサービスを購入する動機を喚起させる情報とセットになった認知のこと。売り上げ向上に寄与する認知、すなわち意味のある認知を指します。

企業が成功するためには、「無効認知」と「有効認知」の違いを理解し、効果的なマーケティング戦略を立てることが不可欠です。単にブランドや商品名を認知させるだけでは不十分であり、消費者にその商品を購入する動機を与えることが重要です。有効認知を高めることで、消費者の購買意欲を喚起し、売り上げの向上を実現することができます。企業は、この視点を持ってマーケティング活動を行い、顧客にとって魅力的な価値を提供することを目指しましょう。

「有効認知」を得るためには、まず自社が顧客にどのような価値を訴求すべきかを理解することが重要です。言い換えると、顧客に選ばれ続ける理由を知ることです。その理解がないままアプローチしても、「知っているけれどいらない」「お金を出してまで買う理由がない」「商品・サービスへの興味がない」といった無効認知で終わってしまいます。

ブランド戦略の策定とは、「顧客から選ばれ続ける理由」を明確に定義する作業です。定義した要件に従って、商品やサービスを通じて価値を提供し、広告宣伝によってその価値を伝えることがブランディングの本質です。 ブランド戦略で定めた要素が顧客に適切に伝わり、購入意向が高まったかどうか、実際に購入されたか、そして商品やサービスの利用後に期待を超える体験を提供できたかを評価することで、ブランディング活動の効果を定量的に測ることができます。

ブランディング活動においてもう一つ重要なのは、会社やチームが自社のブランド要件について共通理解を持つことです。特に大企業では、商品やサービスに関わる部署が多いため、部署間で一貫したブランド活動を行うことが求められます。ブランド要件を共通言語化し、社内で共有する仕組みを持つことで、ブランド構築や強化に向けた一貫性を担保できます。

UAVは顧客インサイトに応えているため、顧客が自発的に購入意向を持つブランドを形成します。UAVは自社の強みに基づいた構造的優位性を持つため、競合他社から模倣されにくく、持続的な売り上げ成長が期待できるブランドとなります。 UAVをコミュニケーションの核とすることで、一貫性のあるブランド認識を顧客に強化し続けられます。

また、UAVは顧客生涯価値(LTV)が高い理想的な顧客を獲得しやすく、投資対効果が上がり、収益性の高いブランドを構築できます。さらに、UAVが社内の共通言語となるため、組織が一体となって商品開発から販路開拓、広告宣伝まで求心力を持って行うことができ、最強のブランドをつくることができます。

UAVの発掘・強化のポイントは以下の3つになります。
①明文化する
企業が存続している限りUAVは存在します。UAVを開発(再定義)し、明文化することで、何がUAVであるかを関係者の共通認識とします。

②一貫性を持たせる
情報の方向性と時系列の2軸で一貫性を持たせます。UAVが定着するのには数年かかるため、一定期間、同じメッセージを発信し続けることで定着を図ります。

③組織横断、全社で取り組む
UAVは会社の存在価値です。「売り上げ向上」に向けた情報発信だけでなく、採用など会社の情報発信にも一貫性を持たせることが大切です。

4Aのフレームワークで持続的な成長を目指そう!

購入ドライバーと購入バリアは、一つではなく複数あることがほとんどです。この時、ドライバーの総和が、バリアの総和よりも大きければ購入意向は生まれますし、バリアの総和の方が大きければ購入意向はなくなります。

購入意向を促進するためには、顧客のペインポイント、購入ドライバー、購入バリアを理解することが重要です。購入ドライバーとは、顧客が商品やサービスを購入する動機や理由であり、購入バリアは購入を妨げる障害や懸念を指します。

購入ドライバーと購入バリアは通常、複数存在します。購入ドライバーの総和が購入バリアの総和を上回れば、顧客は購入意向を持ちます。一方で、購入バリアの総和が大きい場合、購入意向は低下します。それぞれのドライバーやバリアの影響力は等価ではなく、ターゲット顧客にとっての重要度に基づいて重み付けされます。

購入意向を高めるためには、顧客視点で商品やサービスを評価することが必要です。ここで役立つのが「4A」のフレームワークです。4Aは、伝統的な4P(プロダクト、プレイス、プライス、プロモーション)を顧客視点で評価しやすくするためのフレームワークです。

1. Attractive(魅力的な価値)
まず、商品やサービスが顧客にとって魅力的な価値を提供しているかどうかを評価します。顧客のニーズや希望を満たし、他社製品と比較して優れた特徴があるかを確認します。

2. Available(買いやすい販路)
次に、商品やサービスが顧客にとって買いやすい販路で提供されているかを確認します。例えば、オンラインでの購入が可能か、店舗がアクセスしやすい場所にあるかなどを評価します。

3. Affordable(買いやすい価格)
価格設定が顧客にとって適切であるかも重要です。顧客が経済的に負担を感じずに購入できる価格であるか、コストパフォーマンスが良いかを判断します。

4. Aware(価値を認識しているか)
最後に、顧客が商品やサービスの価値を認識しているかを確認します。効果的なプロモーションや広告戦略を通じて、顧客が製品の存在やその利点を理解しているかを評価します。

購入意向を高めるためには、顧客のペインポイント、購入ドライバー、購入バリアを理解し、それに基づいて戦略を立てることが重要です。4Aフレームワークを用いることで、顧客視点で商品やサービスを評価・改善し、購入意向を促進することができます。企業はこのフレームワークを活用し、顧客にとって魅力的な価値を提供することで、持続的な成長を目指しましょう。

UAVマーケティングのファネル

マーケティング施策の実行フェーズでは、ブランドが持つ価値を「商品の実態価値」と「顧客の認識価値」の両面で考えることが重要です。これにより、施策を展開する際、UAVに基づいて「商品の実態価値」と「顧客の認識価値」の両方が一致した形で進めることが理想です。

「実態価値」とは、商品の実際の品質や機能、性能を指します。一方、「認識価値」とは、顧客がその商品について抱くイメージや感じる価値のことです。マーケティング施策においては、これら二つの価値が一致することが重要です。

・新規顧客獲得の失敗
新規顧客が獲得できなかった場合、考えられる原因は2つです。開発したUAVが誤っているか、「広告」にUAVが反映されていない可能性があります。適切なUAVが設定されていないと、顧客に訴求力のあるメッセージが伝わりません。また、広告にUAVが反映されていないと、実態価値が顧客に伝わらず、興味を引くことができません。

・リピート購入の失敗
新規顧客を獲得したがリピート購入されなかった場合、これも2つの原因が考えられます。開発したUAVが誤っているか、「商品」にUAVが反映されていない可能性があります。顧客が購入後に期待していた価値が提供されなければ、満足感が得られず、リピート購入には至りません。

・商品が売れない場合
「商品」と「広告」の両方にUAVを適切に反映したにもかかわらず、商品が売れなかった場合は、開発したUAV自体が誤っている可能性が高いです。この場合、顧客が求める価値と商品が提供する価値がミスマッチしているため、再度UAVの見直しが必要です。

▪️UAVのマーケティングファネル。
4つのマーケティングファネルの4段階で、UAVを意識し、顧客との対話を行いましょう。 
①購入意向の訴求
買いたくなる理由をターゲット顧客に認識させ、購入意向を高めます。UAVの伝達が重要です。

②ブランド名称の記憶
購入意向を持った顧客がブランド名を記憶するようになります。これにより、ブランド認知が高まります。

③検索・検討
買いたいと思った顧客は、ネットや店舗で商品を探し、検討を始めます。この段階での情報提供が重要です。

④購入
最終的に、顧客は商品を比較検討し、購入に至ります。この段階まで一貫したUAVの伝達が必要です。

“広く、深く”顧客を捉える「マクロWHO/WHAT」× 「マイクロWHO/WHAT」

マーケティング戦略には、「マクロWHO/WHAT」と「マイクロWHO/WHAT」という2つのアプローチがあります。これら2つの施策を統合することで、効果的なマーケティングを実現することができます。

「マクロWHO/WHAT」は、自社の商品やサービスを購入する可能性があると考えられるすべての顧客を対象としたマーケティングアプローチです。ここでの「WHAT」はUAVを指し、対象となる「マクロWHO」に対して一貫した施策を展開します。言い換えると、これはマスマーケティングの手法に相当します。

一方、「マイクロWHO/WHAT」は、マクロWHO/WHATを土台にしながら、より細分化した顧客を対象とするマーケティングアプローチです。これにより、特定のニーズや嗜好に合わせた施策を展開することが可能になります。つまり、デジタルマーケティングの手法に相当します。

効果的なマーケティングを展開するためには、マスマーケティング(マクロ)とデジタルマーケティング(マイクロ)の両方を融合させる必要があります。これにより、ブランドとしての整合性を保ちつつ、幅広い顧客層にリーチし、同時に個別のニーズにも対応できるようになります。

マクロWHO/WHATでは、広範なターゲットに向けて一貫したメッセージを伝えることが重要です。テレビ広告や大規模なキャンペーンを通じてブランドの認知度を高め、潜在顧客全体にリーチします。

 一方、マイクロWHO/WHATでは、特定の顧客セグメントに向けてパーソナライズされたメッセージを届けます。ソーシャルメディアやメールなどのデジタルマーケティング活用し、個々の顧客の嗜好や行動に基づいたコミュニケーションを行います。

「UAVマーケティング」は、自社の強みと顧客インサイトに基づいた価値(UAV)を一貫して反映させることで、顧客に選ばれ続けるブランドを築くフレームワークです。商品・サービス、価格、販路、広告・販促のすべてにおいて一貫性を持たせることで、顧客の信頼を得て、持続的な成長を実現することができます。

本書には、具体的な事例や著名なマーケターとの対談も収録されており、マーケティングの最前線を学びたい方におすすめの一冊になっています。


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