成長の踊り場で必要な人材は愛を叫ぶ人。企業文化をデザインする 戦略を超えた「一体感」のつくり方 (冨田憲二)の書評

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企業文化をデザインする 戦略を超えた「一体感」のつくり方
冨田憲二
日本実業出版社

本書の要約

事業の成長や売上が鈍化する「成長の踊り場」に直面した企業では、それまでに溜め込まれた「負の感情エネルギー」が問題という形で噴出しがちです。それから救ってくれるのが、ネガティブな声を打ち消し、組織のグレーゾーンを明るく照らす「エモーショナルリーダー」や「ギバー」です。

成長の踊り場に陥った時に必要なこと

企業が、「成長の踊り場」で足踏みをしたとき、必ず組織課題が感情をともなって噴出します。そんなときに企業が最も大切にするべきなのは、”組織の中心で「愛」を叫ぶ人”です。(冨田憲二)

企業文化をデザインする 戦略を超えた「一体感」のつくり方(冨田憲二)書評を続けます。ベンチャー企業は成長しているものの、必ずしも一直線に成功へと進むわけではありません。成長の過程で、様々な困難や挑戦が立ちはだかり、一時的な停滞や壁に直面することがあります。これがいわゆる「成長の踊り場」と呼ばれるものです。

成長の踊り場から脱却し、飛躍するためには、事業の逆算的な経営が必要です。これは、将来の目標やビジョンを明確にし、そのために必要な戦略や手段を計画的に立てることです。また、新規投資を行いながらも、事業や産業の理解や洞察を持つことも重要です。

当然、組織にも変革が求められます。成長というポジティブ要因が薄まると、組織は成長するために必要な努力や工夫をしなくなる傾向があります。そのため、問題があっても放置され、組織課題が蓄積されていきます。

ネガティブ思考による問題探しは、たいていの場合チームや人材に行き着く。これは、チームや人材が成長の足を引っ張っているという考え方からくるものです。しかし、実際にはチームや人材が問題の原因であるとは限りません。むしろ、組織課題の根本的な原因は、組織の構造や仕組みにある場合もあります。

そもそも成長によって、それまで隠れていた組織課題が明るみに出ることがあります。これは、成長によって組織が複雑化し、問題が見えにくくなるためです。そのため、成長の踊り場では、組織課題を早期に発見し、解決することが重要です。

経営層が成長の踊り場でできることは、結果を出すことです。つまり、意地でも進路を成長ラインに戻すことです。結局、事業の成長がすべてを癒すのです。

そのためには、次の点に注意する必要があります。
・組織課題を早期に発見し、解決する。
・組織のビジョンやミッション、価値観を明確にし、共有する。
・組織の文化を醸成する。
・組織のモチベーションを高める。
・組織のコミュニケーションを活性化する。

成長の踊り場において企業文化のあるなしが結果を左右します。そして、その際必要なのが、エモーショナルリーダーなのです。

組織の中心で愛を叫ぶ人が必要な理由

常に、社内の人間関係やコミュニケーションの状態は健全か、新規に採用する人材は企業カルチャーにフィットしているかを入念にチェックするなど、日ごろから細心の注意を払う必要があります。ですから、事業の好不調にかかわらず、常に企業カルチャーの維持や感情マネジメントにリソースを投下し続けないと、成長の踊り場や外部環境の急激な変化に直面したときに、それまでのツケを一気に払うことになります。

もしも、組織が大きな打撃を受けたり、内部の崩壊の危機に瀕したり、または激しい賛否両論が伴う大きな挑戦に立ち向かわなければならない場合、重要なのは前線で活躍するエキスパートではなく、「組織の中核で『愛』を叫ぶ人」や他者に貢献するギバーなのです。

成長の停滞は、売上の数字などの数量的な要素ではなく、組織内に漂う「雰囲気」や「ニュアンス」、または進みたい方向への「流れ」が止まってしまう状況を指します。このような組織内のポジティブな気持ちが低下する成長の停滞期において、ネガティブなオピニオンリーダーが台頭します。

ネガティブな意見は数が少なくても、大きな影響力を持つことがあります。そして、多くの場合、特定の人物への批判として表れることがあります。経営陣や管理層が、このようなネガティブなオピニオンリーダーへの対応や社内の火消しに時間やエネルギーを費やしてしまうことで、肝心な事業を前進させるための力が根こそぎ奪われてしまうことがしばしば起こります。

実際には、マジョリティの考えや感情は二元論的ではなく、グレーゾーンの状態に存在しています。そのため、ネガティブな声を打ち消し、グレーゾーンをポジティブに照らし出す”エモーショナルリーダー”の存在が不可欠です。

エモーショナルリーダーは、組織が苦境から脱出する際に重要な役割を果たしてくれます。ただし、エモーショナルリーダーは必ずしも多数必要ではありません。組織が暗闇に包まれ、周囲に希望の光が見えないような状況でも、数人のエモーショナルリーダーが組織の成長を信じ、周囲の人々に希望を与えてくれるだけで十分なのです。

これからは企業力ルチャーにフィットしたポジティブな感情を継続的にマネジメントする「良質な感情デザイン」が重要になる。そのためには、企業力ルチャー浸透のキーマンとなる人材(濃い信者)を見出し、大切に育む必要がある。

組織が成長の停滞期にあるとき、組織への愛を持ちながら踊り続ける人々を育成することが重要です。彼らがいなければ、何も始まりません。成長の過程でリスクを厭わず、自身を組織の中心に置いて踊り続けることができる人々、つまり”エモーショナルリーダー”こそが、踊り場を乗り切る上で重要な存在です。

そして、組織デザインの成功は、彼らを適切に育成することにもかかっています。 もちろん、エモーショナルリーダーの育成だけでなく、彼らを承認し重要視すること、彼らのキャリアパスを適切にサポートすることも大切です。さらに重要なのは、順調な成長を遂げる組織環境を整え、エモーショナルリーダーたちがはしごを外れないようにすることです。

勝ち続ける組織を作るためには、勝てる組織カルチャーのデザインとエモーショナルリーダーの養成が欠かせないのです。行動する組織をつくることが経営者には求められています。

 

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