習慣超大全——スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法
BJ・フォッグ
ダイヤモンド社
習慣超大全(BJ・フォッグ)の要約
望ましくない悪習を取り除くと、その空白が新たな機会を生み出す可能性があります。そこには情熱を注げるプロジェクトや仕事の生産性向上、深い絆、新たなアイデンティティなど、ポジティブな要素が生まれる可能性があるのです。悪い習慣を良い習慣に置き換えることで、豊かな人生を送れるようになります。
習慣を変えることで、人生が良くできる理由
望ましくない習慣を取り除いたとき、そのスペースには、情熱を傾けるプロジェクトや、仕事の生産性の向上、かつてない深い絆、新たなアイデンティティといったものが生まれてくるかもしれない。(BJ・フォッグ)
BJ・フォッグの習慣超大全は、行動科学の知見を活用して人々の習慣を変える方法を探求する、画期的な一冊で、私は何度も読み返しています。スタンフォード大学行動デザイン研究所の創設者であるフォッグは、大学での教鞭とシリコンバレーでのコンサルティング活動を通じて、習慣によって、人生や組織をよくできると指摘します。
フォッグのアプローチの特徴は、単なる意志力や動機付けだけに頼るのではなく、環境や状況の整備に重点を置いていることです。これにより、持続可能な行動変容が可能になると考えられています。
著者は著者独自の行動モデルの概念を紹介しています。習慣形成の過程において、フォッグは3つの重要な要素を指摘しています。
・「MOTIVATION」
つまり行動を起こしたいという内的な動機づけ。
・「ABILITY」
その行動を実行する能力や可能性
・「TRIGGER」
行動を引き起こすきっかけ
これら3つの要素が揃って初めて、習慣が形成され、継続されるようになります。 著者は、大きな目標を掲げて挫折するよりも、達成可能な小さな行動から始めることで、持続的な変化を生み出せると述べています。
特筆すべき、著者が望ましくない習慣を取り除くことの重要性と、その先にある人生の可能性について言及していることです。彼は、望ましくない習慣を取り除いたときに生まれる「空白」が、新たな機会を生み出す可能性を秘めていると指摘しています。その空白には、情熱を傾けるプロジェクトや、仕事の生産性の向上、これまでにない深い絆、新たなアイデンティティといった、ポジティブな要素が生まれてくる可能性があるのです。
この考え方は、単に悪習慣を断ち切るだけでなく、その先にある人生の質的向上にまで視野を広げています。つまり、習慣の変革は単なる行動の修正ではなく、人生全体をより豊かで充実したものに変える可能性を秘めているということです。
人生を大きく変える転機は、時として何かを始めることではなく、何かをやめることから訪れることがあります。私にとって最も重要な変化をもたらしたのは、お酒を断つという決断でした。これは単なる習慣の変更ではなく、人生から完全にアルコールを排除する行動だったのです。
お酒は多くの人にとって、社交の潤滑油やストレス解消の手段として機能します。私もまた、人とのコミュニケーションを円滑にし、日々の緊張を和らげるためにお酒を飲んでいました。体調を崩した際に、これらの目的は健康的な方法で達成できるのではないかと考え始めたのです。
断酒の決意は容易なものではありませんでした。しかし、私は自身の健康と将来のために、この困難な挑戦に踏み出しました。まず、家にあるすべてのお酒を処分しました。代わりに炭酸水を常備し、それを新たな習慣として取り入れました。
さらに、飲酒仲間との時間を、朝活や読書、創造的なアウトプットの時間に置き換えていきました。これは単なる時間の使い方の変更ではなく、生活全体のリズムとクオリティを変える大きな転換点となりました。 この新しいライフスタイルは、予想以上の効果をもたらしました。良質な時間の過ごし方を見出すことで、精神的な安定が得られ、自己改善への意欲がさらに高まっていったのです。
夜の不健康な習慣であった飲酒を、朝の建設的な習慣で置き換えていきました。朝活や読書、瞑想といった朝の日課は、飲酒による悪影響を完全に払拭し、一日のスタートを活力に満ちたものに変えました。
このように単に新しい良い習慣を加えるだけでなく、人生から有害な要素を取り除くことで、より大きな変化と成長が可能になるのです。断酒によって生まれた空白を良い習慣に置き換えることによって、私はダメダメ人生から脱却でき、著者やベンチャーの取締役、大学の特任教授になれたのです。
習慣を変えるB=MAPのフォッグの行動モデル
ある行動が起きるのは、MAP(モチベーション、能力、きっかけ)が、一定の条件を満たしたときだ。 「モチベーション」とはどれだけそれをしたいかというあなたの思い、「能力」はその行動に対する自分の能力の高さ(やりやすいか、やりにくいか)、「きっかけ」は行動をうながす何らかの刺激を意味する。
B=MAPと言うフォッグ行動モデルは、人間の行動を理解し、習慣を形成するための強力なツールです。このモデルによると、ある行動が起こるためには、モチベーション(Motivation)、能力(Ability)、きっかけ(Prompt)の3つの要素が揃う必要があります。
モチベーションは、その行動をどれほど欲しているかという個人の願望を表します。能力は、その行動を実行する難易度や個人のスキルレベルを示します。きっかけは、行動を促す外部からの刺激や合図のことです。 これら3つの要素の相互作用が、行動の実行可能性を決定します。モチベーションが高ければ高いほど、行動を実行する可能性は高くなります。
一方で、行動の難易度が高ければ高いほど、実行の可能性は低くなります。困難な行動を実行するには、強いモチベーションが必要になるのです。 興味深いのは、行動の実行が簡単であればあるほど、その行動が習慣化する可能性が高まるという法則です。
大きな目標を掲げるのは確かに大事ですが、それでは長続きしません。自分を変えるには、小さな行動を習慣化するようにすべきです。このタイニー・ハビットを続けることが、人生をより良くできる秘訣です。
モチベーションと能力は、チームメイトのように協力し合います。一方が弱い場合、もう一方を強化することで、行動を実行可能な領域に押し上げることができます。この補完関係を理解することで、行動の分析とデザインに新たな視点がもたらされます。 しかし、どれほどモチベーションと能力が高くても、適切なきっかけがなければ行動は起こりません。
きっかけの重要性は絶大で、望まない習慣を断ち切るには、そのきっかけを排除することが最も効果的な方法となります。 新しい習慣を形成する際は、「したい」と「できる」が一致する行動を選ぶことが重要です。そのような行動こそが、習慣を成長させる最も肥沃な土壌となります。
習慣のデザインを始める際には、明確な願望を持つことが重要です。それにより、自然と「成長する習慣」と「増殖する習慣」に取り組むことになります。例えば、出版という大きな目標があれば、書くという習慣(成長する習慣)と、読書や良い体験などのインプットを積み重ねる、著者との良質なコミュニケーションなどの関連習慣(増殖する習慣)を同時に形成していけます。
私は最初の本を出版する際に、まずX (ツイッター)に投稿することから始めました。それを組み合わせるうちに、徐々に文章ができあがり、それを編集することで、一冊の本が出来上がっていったのです。毎日少しの量を書き続ける習慣がその後も続き、この書評ブログを毎日書き続けることができるようになりました。
今では、アウトプットが苦ではなくなり、アルコールを飲んでいた時には避けてきたセミナーの登壇や大学での講義が楽しくなったのも、この小さな習慣のおかげだったのです。
タイニー・ハビットの考え方は、新しい習慣を「小さな種」と捉え、適切な場所に蒔くことで自然と成長させていく方法です。この手法では、既存の日課を新しい習慣のきっかけとして活用することが効果的とされています。
例えば、歯を磨くという既存の習慣の後にフロスをするという新しい習慣を追加するなど、「何のあとに何をするか」を考えることで、習慣形成のプロセスをプログラミングのように組み立てることができます。
タイニー・ハビットの実践者たちに見られる飛躍的な成功の背景には、小さな成功体験によるモチベーションの急上昇があります。これにより、より困難な行動に挑戦する勇気が生まれるのです。私がベンチャーの社外取締役や大学教授などさまざまなことにチャレンジできるようになったのも、習慣化によって、酒浸りでダメダメだった自分の思考と行動が変わり、自分のに自信を持てるようになったからです。
この個人的な経験は、タイニー・ハビットの力を如実に示しています。小さな習慣の積み重ねが、大きな人生の転換点となり得るのです。
フォッグによると、習慣化のプロセスは、願望の明確化から始まり、行動の選択、小さな一歩の実践、効果的なきっかけの発見、成功の祝福、そして継続的な改善と拡大へと進んでいきます。このプロセスを通じて、私たちは変化のスキルを身につけ、理想に向かって前進し、自分自身と周囲の世界をより良いものに変えていく力を得ることができます。
特に「祝福」がこのプロセスのキーポイントとなると著者は言います。祝福とは、その行為ができた時に「できた!やったぞ!」と自分を褒めることで気持ちよくなることです。習慣化のためには、その行為に達成感や喜び、快感などのポジティブな気持ちを持てるかどうかが重要なのです。
私も断酒をした際に、毎晩、「今日もお酒を飲まなかった。習慣を変えられてえらい」と自分を褒めていました。明日も飲まないと言う誓いをすることで、飲まないと言うモチベーションが高まっていったのです、
タイニー・ハビットの実践は、個人的な成功だけでなく、周囲の環境や人々にも良い影響を与える可能性を秘めています。酒浸りの生活から抜け出し、自信を取り戻すような大きな変化も、小さな習慣から始まるのです。
習慣の力は、単に個人の生活を改善するだけでなく、他者や社会全体にも良い影響を与える可能性を秘めています。日々の小さな行動の積み重ねが、やがて大きな変化をもたらし、より明るい世界の創造につながるのです。
読者は本書から、自分自身や周囲の人々の行動を変えるための具体的なアクションプランを立てる際に役立つ多くの示唆を得ることができるでしょう。さらに、望ましくない習慣を取り除いた後に待ち受けている、新たな可能性や成長の機会についても考えを巡らせることができるでしょう。
フォッグの理論は、行動の根本的な仕組みに基づいた実践的なアドバイスを提供しながら、同時に人生の質的向上という大きな視点も持ち合わせています。これにより、私たちは自分の悪い習慣を客観的に分析し、効果的になりたい自分になるためのツールを手に入れるだけでなく、その先にある人生の新たな可能性についても考えを巡らせることができるのです。
コメント