TIME OFF 働き方に“生産性”と“創造性”を取り戻す戦略的休息術(ジョン・フィッチ、マックス・フレンゼル)の書評

two blue beach chairs near body of water

TIME OFF 働き方に“生産性”と“創造性”を取り戻す戦略的休息術
ジョン・フィッチ、マックス・フレンゼル
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

TIME OFF 働き方に“生産性”と“創造性”を取り戻す戦略的休息術の要約

「TIME OFF」の著者たちは、現代社会に蔓延する「長時間労働=高評価」という考え方に真っ向から異議を唱えています。彼らの主張によれば、働きすぎは創造性の芽を摘んでしまうのです。むしろ、生産性を本当に高めたいのであれば、適切な休息が不可欠だと言うことを科学的研究や天才たちの事例から示しています。

TIME OFF(休息)が重要な理由

長時間労働したからといって、労働の質が上がるわけではない。量や忙しさではなく、大切なのは質だ。(ジョン・フィッチ、マックス・フレンゼル)

現代社会の喧騒の中で、真の生産性と創造性を取り戻す方法は休息を取ることです。ビジネス・コーチであり、エンジェル投資家でもあるジョン・フィッチと、AI研究者にしてライターのマックス・フレンゼルによるTIME OFFは、休息を単なる怠惰や時間の無駄遣いとして捉える従来の考え方に真っ向から挑戦します。

著者たちは、適切な休息が生産性と創造性を高める不可欠な要素であると主張し、その重要性を科学的な研究結果や天才たちの事例を通じて説得力ある形で示しています。

私たちはTIME OFF(休息)を取り、ペースを落とすことで、より充実した多面的な自分を再発見し、真の創造的潜在能力を引き出すことができるのです。

現代社会において、仕事の質と効率性の重要性がますます高まっています。特に注目すべき点は、労力の累積性に関する認識の変化です。 多くの人が、長時間働けば働くほど成果が上がると考えがちですが、実際にはそうではありません。まずいことに、労力は単純に累積しないのです。重要なのは、時間の使い方なのです。

例えば、50パーセントの集中力で2時間働いても、100パーセントの集中力で1時間働いた場合の成果には及びません。この事実は、特にクリエイティブな仕事において顕著に表れます。 クリエイティブな仕事では、アイデアの質や独創性が重要となります。そのため、疲労や集中力の低下は直接的に成果の質に影響を与えます。

フレッシュ(新鮮)な状態の脳で短時間集中的に取り組む方が、長時間だらだらと作業を続けるよりも、はるかに優れた結果を生み出す可能性が高いのです。 さらに、この傾向は今後ますます強まると予測されています。

長時間労働を美徳とする従来の価値観から脱却し、質の高い休息と集中力の維持を重視する新しい労働観へのシフトが求められています。

著者たちは「休息倫理」という新しい概念を提唱します。労働への倫理観と同様に、休息への倫理観も重要で、休息を仕事と同等の価値を持つものとして位置づけています。

「”余暇”の状態になれる能力こそ、人間の魂の基本的な能力なのだ」という哲学者のトマス・アクィナスの言葉を引用しながら、著者たちは休息の本質的な価値を強調します。

また、米国人起業家のステファン・アーストルの「ナレッジワーカーにとっての8時間労働というのは、産業労働者にとっての16時間労働と同等だ」という言葉を紹介し、従来の労働観に疑問を投げかけています。8時間労働は肉体労働のための基準でしかなく、精神のための基準ではないのです。

本書の核心は「戦略的休息」という革新的な概念です。著者たちは、休息には様々な形態があり、個人に合わせたアプローチが必要であると説きます。そして、世界の賢人35人の休息術を紹介しながら、読者が自身の生活に「戦略的休息」を取り入れるための具体的な方法を提案しています。

休息のための時間術とは?アイデアにも休息が必要!

日付を決めて、その日は時計を気にせずに過ごしてみよう。タイムオフとタイムオンは、職場でも他の活動でも、リズムよく取り入れることができる。心身ともに1年を通して健康であるためには、集中する時間とリラックスする時間を意図的にとる必要がある。クロノス的時間で仕事をしていても、ときどき、カイロス的時間を試してみよう。うまくバランスを取ろうと気負わずに、まずはリズムを感じられたら上出来だと思って、気軽に取り組んでみてほしい。

時間に対する新たな捉え方を変えることで、余暇を楽しめるようになります。クロノスとカイロスという二つの時間概念の調和によって、私たちは時間の使い方を変えられます。

クロノスは、古代ギリシャ神話における時間の神です。これは私たちが日常的に意識する、時計で測れる定量的な時間を象徴しています。一方、カイロスは機会や好機の神であり、質的な時間、つまり充実感や達成感を感じる「意味のある瞬間」を表します。 著者たちは、これら二つの時間概念をバランスよく取り入れることの重要性を説いています。

例えば、著者たちは特定の日を決めて時計を気にせずに過ごすことを提案しています。これは、カイロス的時間を意識的に体験する良い機会となるでしょう。クロノス的時間で仕事をしていても、時折カイロス的時間を取り入れることで、創造性や生産性が高まる可能性があります。

タイムオフとタイムオンのリズミカルな導入も、本書の重要な提案の一つです。これは職場だけでなく、日常生活のあらゆる場面で実践できます。心身の健康を1年を通して維持するためには、集中する時間とリラックスする時間を意図的に設けることが不可欠だと著者たちは主張します。

「ヴァージン・グループ」の創設者、リチャード・ブランソンの言葉「デスクにいないと最高の仕事ができないなんて、すごく古臭い考え方だ」は、この新しい時間観と働き方の本質を端的に表現しています。従来のオフィス中心の働き方にとらわれず、より柔軟で創造的な休息の取り方を模索することが、これからの時代には求められているのです。

著者たちは、このような新しいアプローチを取り入れる際には、完璧を求めすぎないことも強調しています。バランスを取ろうと気負わずに、まずはリズムを感じられるようになることが大切だと説いています。気軽に取り組むことで、自然とクロノスとカイロスのバランスが整っていくのです。

グレアム・ウォーラスの創造的プロセスに関する仮説は、私たちの仕事や創造性に対する理解を根本から覆す可能性を秘めています。彼の理論によると、創造的なプロセスは4つのステージに分類されます。これらのステージは、私たちが通常「仕事」だと考えている活動と、一見すると仕事とは無関係に見える活動の両方を含んでいます。

まず、「準備する」ステージがあります。これは私たちが最も馴染みのある段階で、座って一生懸命仕事をしている状態です。この段階では、問題の分析や情報収集、アイデアの初期段階の検討などが行われます。

次に「温める」ステージがあります。ここで興味深いのは、この段階が従来の意味での「仕事」ではないということです。むしろ、心と頭を休ませ、全く違うことに取り組んでみることが重要です。散歩をしたり、趣味に時間を費やしたり、あるいは単に休息を取ったりすることがこれにあたります。

「ひらめく」ステージは、多くの人が創造的プロセスの核心だと考える部分です。これは、ずっと待っていた「これだ!」と思える瞬間が訪れる段階です。重要なのは、このひらめきが必ずしも「仕事中」に起こるわけではないということです。むしろ、リラックスしているときや、全く別のことを考えているときに訪れることが多いのです。

最後の「確認する」ステージでは、そのひらめきが本当に正しいのかを実証します。これは再び、従来の意味での「仕事」の形態に戻ります。 ウォーラスの理論が示唆しているのは、私たちが通常「仕事」だと考えているのは、実際の創造的プロセスの半分にすぎないということです。残りの半分の大切なプロセスは、実は「タイムオフ」の間に起こっているのです。

クリエイティビティは、タイムオン(準備・確認)とタイムオフ(温める・ひらめく)の繰り返しで成り立っている。良いバランスを見つけ、そのふたつを行ったり来たりできれば最高だ。  時間ができたときに温められたらいいなという人が多いけれど、そんな時間が来ることはまずない。時間は意識的に作らなければならない。そのための休息倫理なのだ。

この認識は、私たちの仕事に対する考え方を大きく変える可能性があります。 さらに興味深いのは、意識的に仕事をしている間はむしろ、真の創造的なブレークスルーは起こりにくいという点です。「温める」と「ひらめく」のステージは、主に無意識下で進行します。しかし、これは完全にコントロール不能というわけではありません。むしろ、これらのプロセスを促進するスキルを意識的に習得することができるのです。

ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ博士の言葉は、創造性の本質に対する深い洞察を与えてくれます。彼の観察は、現代の創造性研究や生産性向上の取り組みにも大きな影響を与えています。 

全方位の問題への調査(とそのおさらい)によると、幸せなアイデアは予期せぬときに訪れる。ひらめきのように。私について言えば、心が疲れていたり、仕事机に向かったりするときにひらめきは訪れない。晴れた日にゆっくりと丘を登る。そんなときに降りてきてくれるようだ。(ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ)

この言葉は、創造性が必ずしも意図的な努力や集中的な作業から生まれるものではないことを示唆しています。むしろ、リラックスした状態や、仕事から離れた環境で、突如として訪れることが多いのです。

マルチドーリームを実現する方法

AIやロボティクスなどのテクノロジーの進歩により、工場などでの単調な仕事はほぼなくなるという予測さえあります。代わりに、創造性や高度な思考力を要する仕事が増加していきます。 このような変化に対応するためには、私たちの働き方を根本的に見直す必要があります。

創造性の源泉が多様な経験にあるという考えは、日々の生活の中で私たちがどのように時間を使うべきかについて、新たな示唆を与えてくれます。単に仕事に没頭したり、休息を取るだけでなく、余暇をエネルギッシュに過ごし、多様な体験に時間を使うことも重要になってきます。

休息の時間にアクティブに動いても、次の日の仕事には影響しない。仕事の効率が上がる場合さえある。異なるチャレンジに没頭すると、潜在意識が解き放たれ、意識のある頭で吸いとった情報に惑わされずに、問題解決方法を探すことができる。

例えば、異なる文化に触れる旅行、新たな趣味の習得、様々なジャンルの本を読むことなどが、創造性を育む土壌となるのです。 このアプローチは、単に個人の創造性を高めるだけでなく、急速に変化する社会への適応力も養います。

AIが急速に発展し、多くの定型的な仕事が自動化される未来では、ひとつのことだけに特化した専門家よりも、多様なスキルと経験を持つ「多才な個人」がより価値を発揮すると考えられています。

例えば、テクノロジー企業でプログラマーとして働きながら、芸術的な趣味を持つ人は、技術と美的センスを融合した革新的な製品開発に貢献できるかもしれません。また、経営学と心理学の両方に造詣が深い人材は、AIと人間のインタラクションを考慮した新しいビジネスモデルの構築に長けているかもしれません。

このような「T型人材」や「π型人材」と呼ばれる、深い専門性と幅広い知識を併せ持つ人材の重要性は、今後ますます高まると予想されています。

「T型人材」とは、一つの専門分野で深い知識や技能を持ちつつ(Tの縦棒)、同時に幅広い分野に対する理解や関心を持つ人材(Tの横棒)を指します。例えば、コンピュータサイエンスの専門家でありながら、デザインや心理学にも造詣が深い人物が該当します。このような人材は、自身の専門性を活かしつつ、他分野の知識を組み合わせることで、革新的なソリューションを生み出す可能性が高いとされています。

一方、「π型人材」は、T型人材の概念をさらに発展させたものです。πの形のように、二つ以上の専門分野で深い知識や技能を持ち(πの二本の縦棒)、さらにそれらを横断的に結びつける能力(πの横棒)を持つ人材を指します。

例えば、エンジニアリングと経営学の両方に精通し、技術的な革新とビジネス戦略を同時に考えられる人物などが挙げられます。 これらの人材タイプが注目される理由は、現代社会が直面する問題の多くが、単一の専門分野だけでは解決できないほど複雑化しているからです。環境問題、高齢化社会の課題、AIと人間の共存など、現代の重要な課題は、技術、社会、経済、倫理など多岐にわたる分野の知識を組み合わせて取り組む必要があります。

マルチドリームの概念は、現代社会における個人の可能性と成功の新しい形を示唆しています。この考え方は、従来の「一つの夢に全てを賭ける」という固定観念を覆し、複数の夢や目標を同時に追求することの価値を強調しています。

元AppleでGoogleのエンジニアでラッパーのブランドン・トーリーの言葉は、この考え方を端的に表現しています。「人間が叶える夢は、人生でひとつだけじゃなくていいと信じている」というトーリーの主張は、多くの人々に新しい視点を提供しています。

彼は、仕事と個人的な情熱を明確に区別することが、むしろ非生産的だと考えています。「仕事は面倒なオマケじゃない」という彼の言葉は、仕事と個人的な興味を融合させることの重要性を示唆しています。

マルチドリームの重要性は、複数の側面から考えることができます。まず、複数の夢を追求することで、人生がより豊かで充実したものになる可能性があります。一つの分野だけでなく、複数の分野で自己実現を図ることで、より多様な経験と満足感を得ることができるのです。

また、複数の夢を同時に追いかけることで、予期せぬシナジー効果が生まれる可能性もあります。ある分野での学びや経験が、別の分野での成功につながることがあります。例えば、音楽を学ぶことでリズム感が養われ、それがプログラミングのスキル向上に役立つかもしれません。

しかし、マルチドリームの追求には注意点もあります。トーリーが指摘するように、「秀でるためにすべてを出し切らないといけないなら、常に活動を変えることはあまり意味がない」のです。つまり、複数の夢を追いかけるからといって、浅く広くだけになってはいけません。各分野で一定以上の深さと熱意を持って取り組むことが重要です。

創造的であることは、点と点を繋ぐことだ。幅広い興味を探求すれば、それだけ多くの点に出会える。  しかし、点がどれだけあろうと、そのひとつに固執しすぎたり、準備の沼にはまったりすると、近くの点と点しか繋げなくなる。結果、面白くない古臭いアイデアしか生まれない。  面白い点繋ぎをしたいなら、新しい視点を得るために少し遠くまでいかなければ。

創造性の本質は、異なる要素を結びつけ、新しい価値を生み出すことにあります。この考え方は、「コネクティング・ドット」という概念で表現されることがあります。それは、点と点を繋ぐことで、これまでにない発想や革新的なアイデアが生まれるという考え方です。

この観点から見ると、創造的であるためには、できるだけ多くの「点」、つまり多様な経験や知識を持つことが重要になります。幅広い興味を探求し、様々な分野に触れることで、私たちは数多くの「点」を手に入れることができます。これは、マルチドリームの追求とも深く結びついています。

しかし、単に多くの「点」を持っているだけでは十分ではありません。ひとつの「点」に固執しすぎたり、準備に時間をかけすぎたりすると、視野が狭くなり、近くの「点」同士しか繋げられなくなってしまいます。その結果、生まれるアイデアは古臭く、面白みに欠けるものになりがちです。

真に革新的で面白いアイデアを生み出すためには、少し遠くまで視野を広げ、一見関係のないように見える「点」同士を繋ぐ勇気が必要です。これは、異なる分野や経験を持つ人々と交流したり、自分の専門外の領域に積極的に踏み込んだりすることで実現できます。

マルチドリームの実践においても、この「コネクティング・ドット」の考え方は非常に有効です。複数の夢を追求することは、それぞれの夢が独立して存在するのではなく、互いに影響し合い、予想外の形で繋がっていくプロセスだと考えることができます。

急速に変化する世界では、一つの専門性だけに頼るのではなく、複数の能力を持ち合わせていることが強みになります。マルチドリームの追求は、そのような多面的な能力開発の自然な方法となり得るのです。

私も社外取締役や著者・ブロガー・大学教授として働いていますが、マルチな経験を重ねることで、自分の夢を実現してきました。仕事以外の余暇を楽しむことで、私の幸福度は確実にアップしています。

マルチドリームを追求することは、個人の満足度や幸福感を高める可能性があります。一つの夢にすべてを賭けることのプレッシャーから解放され、複数の興味や情熱を追求することで、人生をより柔軟に、そして楽しく生きることができるかもしれません。

天才たちの時間の使い方を真似しよう!

1日4時間は集中できるということだ。ちゃんと休息をとって適切に取り組めば、その時間だけで偉大なことは成し遂げられるのだ。

チャールズ・ダーウィン、アンリ・ポアンカレ、ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディなどの天才たちの働き方は、現代の私たちに重要な示唆を与えてくれます。彼らの仕事スタイルは、一見すると非効率的に見えるかもしれませんが、実は生産性を高めていたのです。

チャールズ・ダーウィンの例を見てみましょう。彼の仕事時間は1日にわずか90分間を3回、合計4時間30分だけでした。残りの時間は散歩や昼寝、そして「ぼーっとする」ことに費やしていたといいます。一見すると怠惰に見えるこの習慣が、実は「種の起源」という革命的な理論を生み出す土壌となったのです。

アンリ・ポアンカレも同様に、限られた時間で効率的に仕事をしていました。彼は朝10時から正午まで、そして夕方5時から夜7時までの計4時間だけ働いていたそうです。しかし、この短い時間で数学、物理学、哲学など様々な分野で多大な業績を残しました。ポアンカレの秘訣は、問題を一度把握したら、あとは「無意識」にバトンタッチするという方法でした。

ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディも、1日4時間が仕事の限度だと主張しています。さらに彼は、それ以外の時間に忙しくしすぎると、かえって生産性が落ちると指摘しています。これは、現代の「常に忙しくしていなければならない」という考え方に一石を投じるものです。

これらの例から、私たちは何を学ぶことができるでしょうか。まず、質の高い集中時間の重要性です。彼らは短い時間で効率的に仕事をこなし、その他の時間は意識的に「何もしない」時間を作っています。この「何もしない」時間が、実は創造性と生産性を高める鍵となっているのです。

また、「無意識」の力を活用することの重要性も示唆されています。ポアンカレの例のように、問題を意識的に考えた後、しばらく置いておくことで、無意識のうちに解決策が熟成されていくのです。これは、先ほど述べたヘルムホルツ博士の洞察とも一致します。

イノベーションとクリエイティビティを必要とする仕事には、リラックスする時間が欠かせない。積極的に働く時間と同じくらいに大切にしなければならない。

休息時、私たちの脳は一見何もしていないように見えますが、実際には非常に重要な活動を行っています。記憶の整理や問題解決方法の探索が、静かに、しかし確実に進行しているのです。この過程で中心的な役割を果たしているのが、「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる脳の領域です。

デフォルトモードネットワークは、私たちが特定の課題に集中していないときに活発になります。例えば、ぼんやりとした状態や、日常的なルーティンを行っているときなどです。この状態で、脳は直感力を研ぎ澄まし、創造力や問題解決のスキルを様々な方向に結びつけていきます。

その動きは直線的ではなく、むしろ自由で予測不可能なものです。 日常生活の中で、シャワーを浴びている最中や散歩の途中に、突然のひらめきや、まるでお告げのような白昼夢を経験したことはないでしょうか。それこそが、デフォルトモードネットワークの働きによるものなのです。これらの瞬間は、私たちの無意識の中で進行していた創造的プロセスの結果が、意識の表面に浮かび上がってきた瞬間だと言えます。

ベートーベン、ヘンリー・デビッド・ソローなど多くの天才が散歩を楽しんでいました。運動は脳の柔軟性を高めます。

運動中は、神経細胞の発生や機能を強化するプロテインの神経栄養因子の産生量が大幅に増える。さらに、筋肉に負荷をかける運動はイリシンというホルモンを産出させる。このホルモンは脳由来神経栄養因子(BDNF)の産出を脳に促す。神経栄養因子のなかでも、とりわけ活発な因子だ。  

運動と脳の健康の関係性について、近年の研究が興味深い発見をもたらしています。特に注目すべきは、汗をかくような運動が脳の成長を促進し、新しい神経回路を形成するという点です。この過程が、私たちの問題解決能力や創造性に大きな影響を与える可能性があることがわかってきました。

汗をかくような有酸素運動を行うと、脳内で神経成長因子(BDNF)という物質の分泌が促進されます。BDNFは、いわば脳の肥料のような役割を果たし、新しい神経細胞の生成や既存の神経細胞の強化を助けます。この過程を通じて、脳は文字通り「成長」し、新しい回路を形成していくのです。

これらの新しい神経回路は、私たちの思考プロセスに大きな影響を与えます。特に、行き詰まっていた問題への新しいアプローチや、これまで思いつかなかった創造的なアイデアを生み出す可能性を高めます。つまり、運動によって形成された新しい脳の回路が、従来の思考のパターンを超えた、新しい視点や解決策をもたらすのです。

例えば、長時間デスクに向かって取り組んでいた難問が、ジョギングの最中や直後に突然解決することがあります。これは、運動によって活性化された脳が、新しい角度から問題を捉え直すことができるようになったためだと考えられます。 また、創造的な仕事に従事する人々の中には、アイデアが行き詰まったときに意図的に運動を取り入れる人も多くいます。彼らは経験的に、運動後に創造性が高まることを知っているのです。

忙しさが当たり前となっている環境では、多くのビジネスパーソンが休息を取ることが困難になっています。しかし、私たちの健康と生産性を維持するためには、休息時間を意識的に作り出し、それを守ることが不可欠です。

アレックス・スジョン‐キム・パンは、この課題に対する重要な洞察を提供しています。彼は、休息を単に「取る」のではなく、「守る」ことの必要性を強調しています。

「休息をちゃんと取るには、まず重要さを理解して、休憩する権利を主張するところから始まる。人生でちゃんと休めるスペースを削り出し、それを死守するんだ」というパンの言葉は、休息を単なる「余暇」ではなく、生産性と創造性を高めるための不可欠な要素として捉え直すことを意味します。休息は贅沢品ではなく、むしろ私たちの健康と効率的な仕事のために必要不可欠な「投資」なのです。

米国人作家であり、オンライン事業起業家のセス・ゴーディンは、『人間の素晴らしい経験のためには、休息、内省、回復のための時間、つまり重圧や期待から心と体を解き放つための「タイムオフ(休息)」の時間が必要だ』と述べています。この言葉は、本書の核心を見事に表現しています。

著者たちは、創造性を発揮するために必要な条件はひとりになる時間を持つことだと強調し、読者に新たな視点を提供しています。 総じて、”TIME OFF”は現代社会において非常に重要なテーマを扱った良書です。

忙しさに追われがちな現代人にとって、本書は自身の生活を見直し、より生産的で創造的な日々を送るためのヒントを与えてくれます。休息を戦略的に活用することで、より充実した仕事と生活のバランスを実現できる可能性を示唆している点で、本書は多くの読者にとって価値ある一冊となるでしょう。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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