世界の最新メソッドを医学博士が一冊にまとめた 最強脳のつくり方大全 (ジェームズ・グッドウィン)の書評

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世界の最新メソッドを医学博士が一冊にまとめた 最強脳のつくり方大全
ジェームズ・グッドウィン
文藝春秋

最強脳のつくり方大全 (ジェームズ・グッドウィン)の要約

脳は何歳になってもアップデートできることが明らかになってきました。運動や食事、人とのつながりを意識的に保ちながら、知的好奇心を満たす活動を続け、質の良い睡眠をとることで、私たちは生涯を通じて脳をよい状態に維持できます。このような生活習慣の積み重ねが、健やかな脳づくりの基礎となるのです。

いくつになっても脳力は高められる?神経可塑性とはなにか?

大人になってからの知能指数(知力)に関して、DNAで決まるのはわずか4分の1とのことだ。残りの4分の3は、環境や生活習慣などで決まる。つまり、本人の心がけ次第なのだ。(ジェームズ・グッドウィン)

脳は、私たちが日々行うすべての決定や思考、そして感情に深く関わるなど私たちの存在を司ってくれています。しかし、現代社会に生きる多くの人々にとって、脳についての知識や健康を保つための具体的な方法はあまり知られていないのが現状です。

多くの人が年齢とともに脳機能の低下を心配するようになり、特に認知機能の衰えは高齢者の大きな課題となっています。最近になり、脳の健康は年齢だけで決まるものではないことが明らかになっています。

ブレインヘルスネットワークのジェームズ・グッドウィン教授が示すように、運動、食事、睡眠、社会活動といった日常の取り組み次第で、誰もが生涯にわたって脳を若く保つことができるのです。

脳の健康を支える要素として、まず注目すべきは「神経可塑性」です。これは、私たちの脳が新しい情報や経験に応じて変化する能力を指し、大人になっても脳が成長し続けられる力の源です。精神科医・精神分析医のノーマン・ドイジが指摘するように、脳の可塑性は一生涯にわたり続き、環境や生活習慣によって形づくられます。

実際、最近の研究によると100歳まで脳では新たな神経細胞が作られることがわかりました。90代でも脳のアップデートが続くのです。これはつまり、日々の習慣が脳を活性化し、脳力を高める可能性を秘めているということです。

日常生活の中で行う「決断」も、脳の重要な活動のひとつです。イエール大学の研究では、私たちは1日に3万5千回もの決断をしていることが分かっています。決断の積み重ねは脳を鍛える機会でもあり、複雑な判断や直感的な判断を繰り返すことが脳の実行機能を強化します。

この実行機能は、問題解決、論理的思考、学習といった知的活動を支え、私たちが現実の課題に向き合う力を与えてくれるのです。

脳の健康のために運動を日常生活に取り入れよう!

運動中に脳は体の組織に影響を及ぼし、組織のほうも脳に影響を及ぼす。

運動不足が現代社会で引き起こすリスクは、単に肥満や糖尿病といった身体的な問題にとどまりません。近年の研究は、運動が体のみならず脳に直接的な影響を与えることを明らかにしつつあります。体重増加や肥満が高血圧や心臓病の原因となることは広く知られていますが、実はそれらの健康問題が脳の健康にも関わっているのです。

肥満や糖尿病といった代謝の乱れは、アルツハイマー病や認知症の発症リスクを大きく引き上げます。さらに、肥満は子供の脳機能にも影響を与え、脳の成長の遅れや灰白質・白質の減少を引き起こすこともあります。こうした知見から、代謝を早期に適切に管理することが、生涯にわたる脳の健康を守る重要なカギだと言えるのです。

運動不足が深刻な問題となっている欧米の多くの国では、子供と若者の13~20%が太りすぎであり、肥満が彼らの健康と脳機能に影響を与えています。人生の早い段階で体を動かし、代謝機能を高めることで、脳に対する健康的な土台を築くことが可能です。

こうした背景もあり、欧米の政府機関では、適切な運動量を週に150分の有酸素運動とし、心血管疾患や肥満、高血圧の予防につなげるよう推奨しています。これが慢性的な病気の予防に寄与することはもちろん、脳の健康にまで良い影響を及ぼすことがわかってきています。

実際、さまざまな年齢層や健康状態の人々を対象とした研究では、運動が加齢による認知機能の低下や神経変性疾患の予防において、非常に効果的であることが明らかになっています。特に、健康な高齢者から病弱な人、さらには認知障害や認知症を抱える人々に対しても、運動が大きな効果をもたらすことがわかっています。薬に頼らずとも、適度な運動が脳機能の低下を予防し、老化を遅らせる効果を持つのです。

さらに、運動が脳に及ぼす影響は驚くべきものです。運動中、体内の筋細胞からは「イリシン」と呼ばれる特殊なタンパク質が放出されます。このイリシンは血流を通じて脳に伝わり、記憶や学習に重要な役割を果たす「海馬」でのBDNF(脳由来神経栄養因子)の生成を促進します。

BDNFは脳の神経細胞の成長やシナプスの増加を助けるため、脳の活性化や認知機能の維持に不可欠です。運動を通じて、このように脳が活性化することで、私たちは精神的なストレスに対しても強くなります。筋肉から脳へと送られるイリシンのシグナルは、ストレス耐性を高める作用を引き起こし、心と体が連携しながら健康を維持することができるのです。

また、座りっぱなしの生活が脳に与える悪影響も見逃せません。いくつかの研究によれば、座りがちな生活はアルツハイマー病の発症予測因子のひとつであり、世界中のアルツハイマー病患者の13%が運動不足を原因としている可能性があると言われています。さらに、じっと座っている時間が25%減れば、全世界で100万件ものアルツハイマー病の発症を防げるとも考えられています。

生涯にわたって身体活動が増えるように生活習慣を改めて、その習慣をきちんと守れば、脳が健康になる確率が大幅に上がる。

こうした知見を踏まえると、ただ運動をするだけでなく、日常生活の中で適度に立ち上がり、体を動かすことが重要だとわかります。 体を動かすことが、脳の健康を支える一つの柱であることがわかると、運動は単なる体力向上のためだけのものではなく、心と脳のためにも重要な習慣であると気付かされます。私たちは日常的に運動できるかを考え、運動を継続すべきなのです。

脳と腸と食事の密接な関係

脳のとりわけ重要な神経伝達物質で〝幸せホルモン〟と呼ばれるセロトニンは、脳内だけで作られるわけではない。なんと、約90%は腸で作られる。腸内細菌叢、あるいは腸内フローラと呼ばれる1兆個の細菌が作ってくれるのだ。 セロトニンは人の気分の状態に大きく関係する。体に悪いものを食べれば、機嫌が悪くなるのはあたりまえなのだ。

最新の研究により、脳と腸の関係性が、私たちの健康と幸福に深く関わっていることが明らかになってきています。特に注目すべきは、「幸せホルモン」として知られるセロトニンの生成過程です。驚くべきことに、このセロトニンの約90%が腸内で作られているのです。

腸内フローラと呼ばれる1兆個もの細菌が、私たちの心の状態に直接的な影響を与えているのです。 このことは、私たちが口にする食事の重要性を改めて示しています。摂取するものが心の状態を左右するという事実は、まさに「腸は第二の脳」という表現の正当性を裏付けています。

さらに近年の神経科学研究は、カロリー制限が脳の健康に驚くべき効果をもたらすことを明らかにしています。 わずか10~11%のカロリー制限でさえ、体内に大きな変化をもたらします。抗炎症作用が強化され、酸化ストレスが軽減され、脳のシナプス可塑性が向上します。

特筆すべきは、BDNF(脳由来神経栄養因子)の増加です。これにより神経細胞の成長が促進され、脳の活性化が図られます。つまり、加齢による脳細胞の損傷を予防する効果があるのです。 この科学的知見を実践的に体現しているのが、沖縄の伝統的な食文化です。「腹八分目」という古くからの知恵は、現代科学によってその価値が証明されています。

沖縄の人々の摂取カロリーは、平均的な日本人と比べて約20%も少ないとされています。この習慣が、沖縄が世界的な長寿地域「ブルーゾーン」の一つとして認識される要因となっています。 また、沖縄における認知症、特にアルツハイマー病の発症率の低さが注目されています。

これは、カロリー制限を含む伝統的な食習慣が、脳の健康維持に大きく貢献していることを示唆しています。沖縄の伝統食に含まれる新鮮な野菜、豆類、海藻などには、抗酸化物質や脳を活性化する栄養素が豊富に含まれています。

このような食生活の効果は、単なる長寿だけでなく、認知機能の維持にも顕著な影響を与えています。高齢者の認知機能が良好に保たれているという事実は、この食習慣の有効性を実証しています。 世界的に注目を集める沖縄の食事スタイルは、脳の健康を守るための具体的な指針を私たちに示しています。

適度なカロリー制限と栄養バランスの取れた食事は、脳と腸の健康を同時に維持する効果的な方法といえます。 この知見は、現代社会において特に重要です。過剰なカロリー摂取が一般的となっている現代において、意識的な「腹八分目」の実践は、脳の健康を守る賢明な選択となります。

セロトニンの生成を促し、脳の機能を最適に保つために、私たちは食事の質と量の両面に注意を払う必要があります。それは、より健康で幸せな人生への確かな道筋となるのです。 私たちの体内には、驚くべき微細な生態系が存在しています。

BMIを25以下に維持し、適切な微生物を摂取することで、この生態系のバランスを保つことができます。この生態系の主役である腸内細菌は、私たちの心身の健康に想像以上の影響を及ぼしています。 特に注目すべきは、食事と腸内細菌の関係です。野菜や果物に含まれるポリフェノールは、小腸での吸収率がわずか1~5%と低いものの、腸内細菌にとっては理想的な栄養源となります。

腸内細菌はポリフェノールを分解し、脳機能に不可欠なフェノール酸を生産します。このフェノール酸は、神経保護作用と抗炎症作用を持つ抗酸化物質として、有害なフリーラジカルから私たちの体を守っています。 天然のプロバイオティクス食品は、腸内細菌の多様性を高める重要な役割を果たします。

例えば、果物を丸ごと食べることは、腸内細菌の種類を増やす効果的な方法です。さらに、ビールに含まれる酵母も、腸内環境の安定性を高める働きがあります。 フラボノイドやポリフェノールを豊富に含む食品も、腸内細菌の健康に貢献します。茶、コーヒー、ビターチョコレート、各種スパイス、ワイン、大豆、チコリ、アーティチョーク、紫タマネギ、ホウレンソウ、紫のブドウなどがその代表例です。これらの食品を積極的に摂取することで、腸内細菌に必要な栄養素を効果的に供給することができます。

腸と脳の関係は双方向的だと著者は指摘します。腸の状態が脳に影響を与え、逆に脳の状態も腸に影響を及ぼします。例えば、胃腸の不調は不安やストレス、気分の落ち込みを引き起こすことがあります。特にストレス関連のサイトカインストームは、脳の神経回路に混乱をもたらし、気分の変動を助長します。

健康な腸内細菌叢は、ストレス耐性を高めます。反対に、ストレスによって腸内細菌のバランスが崩れると、扁桃体をはじめとする大脳辺縁系に影響が及び、情動の制御が難しくなります。 さらに興味深いことに、腸内細菌は私たちの食欲や嗜好にも影響を与えています。特定の食品をおいしく感じる感覚は、実は腸内細菌がその栄養素を必要としているサインかもしれません。

腸内細菌は、セロトニン、GABA、ドーパミンといった重要な神経伝達物質の生成にも関与し、これらは私たちの性格形成にも影響を及ぼします。また、学習能力や記憶力などの認知機能も、腸内の善玉菌の状態と密接に関連しています。 社会的行動の発達においても、腸内細菌は重要な役割を果たしています。

健康な腸内細菌叢は社会性の発達を促進し、逆に良好な社会的交流は善玉菌の増殖を促すという、相互に有益な関係が存在しているのです。 このように、腸内細菌は単なる消化器系の住人ではなく、私たちの心身の健康を支える重要なパートナーといえます。加工されていない自然な食品、色とりどりの果物、旬の野菜を積極的に摂取することで、この小さな協力者たちの健康を守り、ひいては私たち自身の心身の健康を維持することができるのです。

睡眠が脳に良い影響を及ぼす!

社会的孤立が心身の健康に及ぼす影響は、近年の研究でますます明らかになってきています。長期的な孤立は深刻なストレス要因となり、炎症の増加、免疫システムの低下、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、脳の健康に悪影響を及ぼします。

しかし、年齢を問わず、充実した社会生活を送ることで、脳の健康を維持・向上させることが可能です。人々との関わりは、生涯を通じて思考能力の維持に重要な役割を果たしています。

ただし、脳の健康維持には、社会的つながりだけでなく、総合的なアプローチが必要です。 健康的な食事、適度な運動、質の高い睡眠に加えて、文化的な活動も重要な要素となります。音楽、美術、演劇、映画の鑑賞、自然との触れ合い、読書、会話、メディアを通じた知識の習得など、様々な活動が脳の活性化に寄与します。

これらの活動は、心理学者が「認知予備力」と呼ぶ能力の構築に貢献します。 認知予備力とは、脳のダメージに対する心の抵抗力を指します。車の強力なエンジンにたとえられるこの能力は、予期せぬ困難に対して柔軟に対応する力を与えてくれます。生涯を通じて知識と経験を積み重ねることで、この能力は発達し続けます。

特に注目すべきは、外国語学習の効果です。年齢に関係なく、新しい言語を学ぶことは脳の「配線」を増やし、知的能力を向上させる有効な方法となります。また、ダンスの習得も、生涯にわたって処理能力を維持し、向上させる効果があることが多くの研究で示されています。

効果的な認知機能の刺激には、挑戦的な要素が必要です。単純な習慣的活動ではなく、難しく、集中力を要し、習得に時間のかかる活動が望ましいとされています。外国語学習やダンスの他にも、カードゲーム、チェス、太極拳、ヨガ、ジャグリングなどの活動が効果的です。

良質な睡眠も脳の健康維持に不可欠です。睡眠と概日リズムの同期が重要で、太陽光の適切な摂取がこれを促進します。2016年のグローバル・カウンシル・オン・ブレイン・ヘルスの報告書によると、睡眠不足は注意力、記憶力、実行機能の低下を引き起こし、中高年期の認知機能障害のリスクを高めることが明らかになっています。

不眠症は、うつ病や不安障害、脳卒中などの様々な健康問題と密接に関連しています。良質な睡眠は脳の炎症を抑制し、知的能力、情動のバランス、社会活動能力の向上に寄与します。高齢者の睡眠障害は、必ずしも年齢だけが原因ではありません。

若いうちから適切な生活習慣を築くことで、加齢後も脳の適応能力を活かした良質な睡眠を確保することが可能です。 これらの知見は、年齢に関係なく、私たちが自身の脳の健康を積極的に守り、育てていけることを示しています。

運動や食事、人とのつながりを意識的に保ちながら、知的好奇心を満たす活動を続け、質の良い睡眠をとることで、私たちは生涯を通じて脳をよい状態に保てます。このような生活習慣の積み重ねが、健やかな脳づくりの基礎となるのです。

健康寿命を伸ばすためには、脳を良い状態に保つことが欠かせません。本書のアドバイスを取り入れ、日々脳のアップデートを続けたいと思います。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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