ジェームズ・マクグラスの瞬間フレームワークの書評


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瞬間フレームワーク
著者:ジェームズ・マクグラス
出版社:クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

本書の要約

ジェームズ・マクグラスの69のフレームワークを活用すれば、重要な決断を先延ばししなくなり、ビジネスで結果を出せるようになります。リーダーは複数のフレームワークを組み合わせることで、山積みの課題を解決できるようになります。決断・行動をスピードアップし、パフォーマンスを高めましょう。

決断には先延ばしは厳禁

決断しなければならない案件は、先延ばししないこと。(ジェームズ・マクグラス)

優秀なマネージャーになるためには、難しい決断を素早く、同時にいくつもこなしていく必要があります。判断ミスを防ぎ、最適解を出すためにはどうしたらよいのでしょうか?公認会計士でマネジメント・コンサルタントのジェームズ・マクグラスは、有効なフレームワークを活用すべきです。著者は本書ですぐに使える69のフレームワークをわかりやすく紹介しています。

このフレームを身につけることで、私たちは以下の10のメリットを得られます。
①より多くの情報を基にして、よりよい判断ができるようになる
②より有能な管理職になれる
③意思決定に関するさまざまな手法への理解が深まる
④自分と組織が置かれている環境への理解が深まる
⑤断固たる決断を取ることで、マネジメントに関する幅広い問題を速く効果的に解決できるようになる
⑥物事をやり遂げられるようになる
⑦年収や個人資産が増える
⑧考慮しなければならない判断材料について理性的に話せるようになる。判断が正しかった場合と間違っていた場合の影響も分析できるようになる
⑨あなたの信用が増し、昇進の可能性も見えてくる
⑩意思決定という重要な分野に関する知識が増えて、複雑な問題を扱う自信がつき、就職の面接ではきはきと話せるようになる

今日は意思決定のプロセスで使えるフレームワークを取り上げます。マネージャーはなんでも自分で判断しようとしますが、時には現場に判断を任せる勇気を持ちましょう。低コストで訂正しやすい案件については、わずかな情報しかなくても、自信を持って早く決断すべきです。あるいは、決定権を部下に委譲すれば、重要なタスクに集中できます。

決定の際に、他人を巻き込むことでメリットを得られます。意思決定に加えたいメンバーがいれば、案件ごとに人を集めて、独裁的な判断をしないようにすべきです。判断が現場からも支持され、よい結果を引き出せるようにするのも、リーダーの役割です。

高コストで訂正しにくい案件を決断する際には、より注意を払いましょう。適切な情報を集め、定量データ(ハードデータ=数値化された情報)と定性データ(ソフトデータ=数値に表せない質的な情報)の両方を参考にし、知識も駆使して決定するのです。完璧なデータが揃うことはあまりありませんから、適切なタイミングで決断するようにしましょう。

マクナマラの誤審理論

ベトナム戦争のころ、当時の米国防長官ロバート・マクナマラは「マクナマラの誤信(または量的誤信)」と呼ばれる理論を提唱しました。ベトナム戦争中、アメリカ全土と政治家たちはアメリカが優勢だと思い込んでいましたが、マクナマラはその誤信の理由を突き止めようとしたのです。

アメリカが誤信したのは、捕虜または死亡したベトコン(南ベトナム解放民族戦線およびそのゲリラ兵)の数などの、数値化された事実ばかりに注目して、定性データ―敵国側の士気や、1954年にフランス軍が撤退した後、ベトナムの人々が外国の支配下から解放されたがっていたこと―にはほとんど注意を払いませんでした。

マクナマラは、この誤信には4つの原因があると述べています。
①簡単に測れる数字を物差しにする
②数値化しにくい質的な要素を無視、または軽視する
③数値化できないものは重要ではないと思い込む
④数値化できないものは存在しないし戦況に影響することもないと思い込む

数値化できない定性データを無視することで、リーダーはミスを犯します。定性データを検討材料に加えるには、従業員の士気、経験、知識、競合他社に関する情報収集力、顧客との関係やスタッフと管理職の人間関係、管理手腕など組織にある“数値化できない資産”を見極めることが重要です。データだけでなく、職場のメンバーの表情や雰囲気などから士気が下がっていないかなどを確認することで、間違いを犯さなくなります。

クライナーとクリステンセンの結果理論

クリスチャン・クライナーとソーレン・クリステンセンの結果理論は、「決定を下すまでにかけた時間」と、「決定を下す際に入手可能な情報量」との間には、トレードオフ(何かを達成するには、別の何かを犠牲にしなければならない関係のこと)が生じると指摘します。

意思決定プロセスの最初の段階では、入手可能な情報は限られています。当然、時間が経過すると情報量も増えるので、決定次第でどうなるかを予測しやすくなります。しかし、よい結果は適切なタイミングの決定によってもたらされますから、判断のタイミングを間違えないようにしましょう。

遅れても、延期しても、下さなかったとしても、それ自体が決定となります。何もしないで放置することにはリスクが伴いますし、決定を下していれば得られたであろうメリットも失われます。

例え、最初の決定で失敗しても、小さな失敗であれば、改善を重ねることで、取り戻せます。また、早いタイミングであれば、間違った決断をしたとしてもすぐに撤退でき、他のアプローチを選べます。

ロジャースとブレンコの意思決定のRAPID理論

リーダーは重要な決断を人に任せてはいけません。1つの案件に対して決定権を持つ人が2人いることで、問題や混乱が生じます。意思決定が遅れたり、論争になったり、縄張り争いが起こりますから、最終決断を人に任せないようにしましょう。

決断する際に、ポール・ロジャースとマルシア・ブレンコは、「意思決定のRAPID理論」を使うと決断での失敗を防げます。「RAPIDのフレームワーク」では、具体的な役割を人々に与え、リーダーが的確な判断を下し、メンバーが行動できるようにすることで、パフォーマンスをアップします。
①推薦者(リコメンド=R)
推薦者はデータを集めて、こうしてはどうかと提案する。推薦者は、情報提供者(I)に相談し、さらに賛成者(A)の提案を聞く
②賛成者(アグリー=A)
賛成者は推薦者(R)に提案して、一連の行動計画に変更を加えてはどうかと交渉する。交渉が決裂した場合、賛成者は必要に応じてプロジェクトを拒否できる
③実行者(パフォーム=P)
決定が承認されたら、実行者は決定内容が確実に実行されるよう責任を負う
④情報提供者(インプツト=I)
情報提供者は推薦者(R)に情報を提供し、行動計画が実行できそうか、また実行したときに生じそうな問題を分析・評価する
⑤決定者(ディサイド=D)
決定者は、必要に応じて推薦者(R)と賛成者(A)と実行者(P)情報提供者(I)の仲裁に入り、意思決定を実行するか否かに関する最終判断を下す。

リーダーは各役割の責任を明らかにして、それの任務を担う人を任命します。小規模な企業、または小さな案件の場合は1人の人が2つ以上の役割を担うこともあります。全てを一人でやることで、判断ミスのリスクが高まります。賛成者(A)と情報提供者(I)をほかの人にやってもらうことで、適切な判断を下せるようになります。

逆に、大きな組織では、1つの役割を数人の従業員が担うことがあります。賛成者(A)を増やすと、争いが起こる可能性が増え、判断ミスにつながります。賛成者を1人に絞ることで、混乱を防げますから、信頼できる人を賛成者に選びましょう。また、情報提供者を多くすると判断ミスが起こります。情報が多いのはよいことだと思いますが、情報過多になり、不要な情報に惑わされ、間違った判断を下します。

どんな決定でも成功するためには、実行者(P)が不可欠です。実行段階でつまずいて失敗するケースや、成果が上がらないケースはこくさんあります。実行者(P)には優秀な中間管理職を選びましょう。一決定事項に対する全体的な責任を負う人[通常は決定者(D)か推薦者R)]は、実施状況をモニタリングしましょう。但し、報告は簡単なものにし、実行することを優先させるべきです。

本書には、戦略コンサルが活用するフレームワークが一冊に凝縮されているので、フレームワークの入門書として活用できます。複数のフレームワークを組み合わせることで、スピーディに的確な判断を下せるようになります。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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