脳と腸の関係性とは? 健康の土台をつくる 腸内細菌の科学の書評

a close up of a cell phone with a black background

健康の土台をつくる 腸内細菌の科学 健康の土台をつくる 腸内細菌の科学
内藤裕二
日経BP

腸内細菌の科学(内藤裕二)の要約

最近の研究で、脳と腸が密接に関係していることが明らかになってきました。腸内環境を整える食事や生活習慣を意識することで、脳と腸の健康が支えられ、心身のバランスが整い、充実感や幸福感が得られるようになります。脳と腸の適切な連携が、全身の調和と真の健康の基盤となるのです。

脳と腸の特別な絆とは?

迷走神経とは脳神経のひとつで、首から胸部、腹部にある臓器や血管がこの神経の支配を受けている。迷走神経は、脳から各臓器に指令を送る下行性神経と、臓器でうけとった情報を脳に届ける上行性神経でセットになっていて、上行性神経では腸で受け取った栄養や腸内細菌代謝物、分泌されたホルモンなどの情報を瞬時に脳に届けていると考えられている。(内藤裕二)

近年の研究により、私たちの脳と腸が深い結びつきで互いに影響し合っていることが明らかになってきました。かつてはまったく別の役割を持つ器官と考えられていた脳と腸ですが、最新の科学的な発見により、両者が密接な関係を持つことが次々と示されています。

京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座の内藤裕二教授は、この関係性における腸内細菌の重要性を指摘しています。私たちの腸内には数え切れないほどの細菌が棲みついており、それらは単なる「居候」ではなく、健康維持に欠かせないパートナーとして機能しています。(内藤裕二氏の関連記事はこちらから

これらの細菌は、私たちが日々摂取する食事を栄養源として活用し、その代謝過程で様々な有益な物質を生み出しています。 この複雑な相互作用を仲介する重要な役割を果たしているのが、迷走神経です。首から腹部にかけて広がるこの神経は、まるで精巧な通信網のように、脳からの指令を各器官に伝える下行性神経と、逆に各器官からの情報を脳に伝える上行性神経として機能しています。

この双方向のコミュニケーションにより、私たちの体は消化活動や呼吸、血圧など、生命維持に必要な多くの機能を自動的に調整しているのです。

特に注目すべきは、腸内細菌が免疫系に及ぼす影響です。近年の研究により、腸内細菌が「制御性T細胞」と呼ばれる免疫細胞の活動を促進し、体内の炎症を適切にコントロールしていることが分かってきました。

一見すると、私たちは腸内細菌に「操られている」かのように思えるかもしれません。しかし実際には、脳が迷走神経を通じてこれらの免疫細胞の働きを巧みに調整し、体全体の健康バランスを保っているのです。 さらに興味深いのは、腸内細菌と認知機能との関連性です。40兆から100兆個もの細菌が存在する腸内環境は、私たちの精神状態や脳の健康に密接に関わっています。

2020年に発表された研究では、認知症の有無と腸内細菌叢の関係が調査され、興味深い結果が得られました。認知症を発症していない人々は、味噌や魚介類、緑黄色野菜、海藻類などの伝統的な日本食を積極的に摂取する傾向にあり、その結果として良好な腸内環境が維持されていることが示唆されたのです。

このように、腸内細菌の代謝活動は、単なる消化吸収にとどまらず、私たちの心身の健康に広範な影響を及ぼしています。日々の食事選択が腸内環境を通じて脳の健康にまで影響を与えるという事実は、改めて食生活の重要性を私たちに問いかけています。脳と腸の調和のとれた関係を保つことこそが、健康長寿への近道なのかもしれません。

腸内で産生されたセロトニンが私たちを幸せにする?

私たちの体の中で、「幸せホルモン」として知られるセロトニンは、意外にもその約90%が腸内で生成されています。この事実は多くの人にとって驚きかもしれませんが、セロトニンの働きは腸と脳のつながりを理解するうえで重要な鍵となっています。

腸内で産生されたセロトニンは、脳での働きとは異なる役割を持っています。血流に乗り全身に行き渡る腸由来のセロトニンは、体温の調節、痛みの緩和、血液の凝固を助ける役割など、生命維持に欠かせないさまざまな機能を担っています。

さらに、腸内のセロトニンは腸の蠕動運動を促進し、消化管の健全な働きをサポートする役割も果たしています。加えて、腸内での防御機能を通じて、有害な細菌の増殖を抑えるといった面でも腸内環境の健康維持に貢献しています。

一方、脳内で生成されるセロトニンは、脳幹の神経細胞から分泌され、神経伝達物質として機能しています。これは、精神的な安定性や自律神経の調整、覚醒状態の維持などに深く関わり、私たちの気分や感情のバランスに大きな影響を与えます。

こうした脳と腸のセロトニンの役割はそれぞれ異なるものの、両者は密接に連携し、私たちの心身の健康を支えているのです。 腸内には膨大な数の細菌が共生しており、これを腸内細菌叢と呼びますが、近年の研究では、腸内細菌は単に消化を助けるだけでなく、免疫システムの調整、炎症反応の制御、さらには精神的な安定にまで関与していることが明らかになっています。

中には、直接セロトニンの生成を促進する細菌も存在し、腸内細菌の種類やバランスが私たちの全身の健康に大きな影響を及ぼすことが分かってきました。 こうした脳と腸の複雑なつながりは「脳腸相関」と呼ばれ、腸と脳が絶え間なく情報をやり取りしていることを示しています。腸内細菌叢を良好に保つことが、消化器の健康のみならず、精神的な安定感や幸福感にも関わっているのです。

腸内環境を整え、脳腸相関のバランスを保つために効果的な習慣や食事法について、いくつかのポイントを挙げてみましょう。 まず、腸内細菌を活性化させるためには、発酵食品や食物繊維を多く含む食事が重要です。

発酵食品は、腸内で有益な乳酸菌やビフィズス菌を増やし、消化器系の健康をサポートします。例えば、納豆や味噌、ヨーグルトなどは日常的に取り入れやすい発酵食品です。

また、食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えるうえで欠かせません。野菜、果物、全粒穀物、豆類などに豊富に含まれるため、これらをバランスよく摂取することが勧められます。

さらに、オメガ3脂肪酸を含む食材も脳と腸に良い影響を与えます。オメガ3脂肪酸は、脳の神経細胞の働きを助け、炎症を抑える効果があるため、脳の健康維持に役立つとされています。魚(特にサーモンやイワシなど)、ナッツ、亜麻仁油、チアシードなどから摂取できるため、定期的に取り入れると良いでしょう。

ストレス管理も脳腸相関のバランスにおいて重要な要素です。慢性的なストレスは腸内環境を悪化させ、脳内のセロトニンのバランスにも影響を与えかねません。適度な運動やリラックスできる時間を確保することで、ストレスを和らげ、セロトニンの分泌を促進する効果が期待されます。

特に、ウォーキングやヨガなどの穏やかな運動は腸にも優しく、消化機能を助けると同時に気分の安定にも寄与します。 さらに、質の良い睡眠も脳と腸にとって重要です。睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こし、腸内の善玉菌にも悪影響を与えることが知られています。規則正しい睡眠時間を確保することは、精神的な安定だけでなく、腸内環境の健全化にもつながります。

このように、腸内環境を整える食事や生活習慣を意識することで、脳と腸の健康を保ち、心身のバランスが整った充実感や幸福感を得ることができるでしょう。脳と腸が連携し、私たちの体全体が調和の取れた状態を保つことが、真の健康への第一歩となるのです。

最強Appleフレームワーク


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
習慣化書評ブログライフハック健康
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました