若手はどう言えば動くのか? ~相手を「腹落ち」させたいときの伝え方(ひきたよしあき)の書評

two people sitting during day

若手はどう言えば動くのか? ~相手を「腹落ち」させたいときの伝え方
ひきたよしあき
日経BP

若手はどう言えば動くのか? (ひきたよしあき)の要約

若手とのコミュニケーションに悩む上司が増える中、著者は「適切な言葉選び」の重要性を指摘します。若い世代の価値観の違いを受け入れつつ、仕事の目的やゴールを明確に伝え、「腹落ち」させることが大切です。特に「失敗談」を10個用意し、自らの経験を率直に語ることで、若手との距離を縮められます。

若手を腹落ちさせるための5つの心得

若手を動かすために大切な「伝え方のコツ」とは何か。それは「相手の価値観を容認した上で、丁寧に説明する」という姿勢です。(ひきたよしあき)

「最近の若手は無気力だ」「やる気がない」という声を耳にすることがあります。しかし、本当にそれは若手社員の問題なのでしょうか? ひきたよしあき氏の若手はどう言えば動くのか? ~相手を「腹落ち」させたいときの伝え方によると、その本質はリーダーの「伝え方」にあるといいます。

私自身、情報経営イノベーション専門職大学でフレームワークの講義を担当する中で、近年の学生たちが想像以上に真面目であることを実感しています。適切なコミュニケーションをとれば、彼らはしっかり応答し、行動できるのです。

しかし、「今どきの若者は…」という固定観念を持って接してしまうと、関係性が深まることはありません。学生が無気力に見えるのは、彼らの資質ではなく、教員側の伝え方や関わり方に課題がある可能性が高いのです。学生の意欲を引き出し、より良い教育環境を築くためには、先入観を捨て、一人ひとりと真剣に向き合う姿勢が求められます。

ひきた氏の著書では「腹落ち」という概念が重要なキーワードとなっています。つまり、若手が納得し、主体的に動くためには、リーダーが「伝えたつもり」になるのではなく、相手が本当に理解し、共感できるように伝えることが必要なのです。単なる指示ではなく、「なぜそれが重要なのか」「その行動がどのような価値を生むのか」を丁寧に伝えることで、相手の意識と行動を変えていくことができるでしょう。

私の講義でも、学生が積極的に参加するのは、課題の意義を理解し、自分ごととして捉えたときです。逆に、その意義が伝わらないと、「やらされている感」が強くなり、受け身の姿勢になりがちです。 若手のやる気が見えにくいと感じるなら、まず「どのように伝えているか」「若手の立場や価値観を理解できているか」を考えることが重要です。適切な関わり方をすれば、若手は十分に力を発揮できるはずです。

現代の職場環境は、働き方改革やハラスメント防止の取り組みにより大きく変化しています。「昭和型」の指導方法が通用しなくなった今、新任リーダーにとって部下の育成は大きな課題です。本書では、若手を腹落ちさせ、チームの戦力となってもらうための5つの心得を紹介しています

①価値観の違いを受け入れる
時代や環境の違いによって、若手の価値観は多様化しています。相手の考えを理解し、尊重した上で接することが大切です。

②仕事の目的やゴールを明確に伝える
「先輩の姿を見て学ぶ」だけでは通用しません。仕事の目的や手順、ゴールを丁寧に説明し、相手の気持ちを考えながら指導しましょう。

③スキルの重要性を意識
転職が一般的になり、若手は社内での昇進よりも社外でも役立つスキルを求めています。「会社のため」ではなく、「相手にとって役立つこと」を伝えることが大切です。

④適切に指摘しながらも尊重する
「褒める」と「甘やかす」は異なります。相手を傷つけないよう配慮しながらも、適切な言葉で伝え、成長を促すことを心がけましょう。

⑤失敗しても自分を責めすぎない
社会が大きく変化している今、誰もが正解を持っているわけではありません。「自分のせい」と抱え込まず、努力する自分を認め、労わることも大切です。

10の失敗談を共有し、若手との関係を変えよう!

10個の失敗談を、自分の体験から選び出し、物語化しておく。新しいネタができたら入れ替える。そして大切なことは、「失敗談から学んだ教訓も語れるようにしておく」ということです。失敗談だけだとプライベートな話で終わりますが、そこに教訓がプラスされれば「私に教えてくれたいい話」となる。若手と話のネタに困ったら、説教、昔話、自慢話と思われないように注意しながら、失敗談を語ってみてください。

若手とのコミュニケーションで最も重要なのは、適切な言葉選びです。現代では「昔の話はするな」「プライベートなことを聞くな」といった考え方が広がっています。その中で、リーダーはどのような話をすれば、若手と良好な関係を築けるのでしょうか? 本書では、「失敗談」を10個用意することを推奨しています。

自らの失敗経験を率直に語ることで、若手は「この人も失敗するんだ」と安心し、親近感を抱きやすくなります。完璧なリーダーを演じるよりも、人間味を見せることで信頼関係の構築が可能になります。 著者は次の10の失敗談を準備しておく良いと言います。

私の大学の授業では、私も自分の過去の失敗談を共有するようにしています。失敗をどのように乗り越えたかまで伝えることで、学生との距離が縮まり、親しみやすい雰囲気を作ることができます。特に、最初の授業では積極的に失敗談を話し、学生がチャレンジし、失敗を恐れずに学べるような勇気を与えることを心がけています。

・今日の失敗談
・ここ最近の失敗談
・人生最大の失敗談
・子どもの頃の失敗談
・学生時代の失敗談
・新人の頃の失敗談
・親子関係での失敗談
・友人関係での失敗談
・旅先での失敗談
・大きなイベントでの失敗談

これらのエピソードを事前に準備し、新しいネタができたら入れ替えていくことが大切です。さらに、「失敗から得た教訓を語る」ことも重要です。ただ失敗を話すだけでは単なる雑談になりますが、そこに学びを加えることで「ためになる話」となります。 若手との会話では、説教や自慢話にならないよう注意しつつ、こうした「共感を生む失敗談」を活用しましょう。

また、若手を褒める際には「根拠ある承認」が重要です。「よくやったね」ではなく、「このプレゼン資料はデータの整理が分かりやすかった」と具体的に伝えることで、成長意欲を引き出せます。 若手が主体的に動くための環境づくり 指示待ちではなく「自分で考えて動く若手」を育てることは、リーダーにとって大きな目標です。そのためには、若手自身に考えさせ、行動を促す伝え方が求められます。

「褒める」とは、「根拠のある承認」だとひきた氏は言います。その根拠を見つけるには、相手をよく観察し、成長のポイントを見極めることが大切です。著者は「褒めること」を、「相手の長所や成長を見つける宝探し」だと考えているそうです。

ただ何となく接するだけではなく、過去と現在を比較し、「成長した」と思える点を探すことで、初めて本当に意味のある褒め言葉が生まれます。 「仕事の質を上げてほしい」「もっと成長してほしい」と思うなら、「ここが足りていない」と指摘するだけでなく、「どこを改善すればいい?」と問いかけてみるのも一つの方法です。こうすることで、一方的ではなく、相手自身が気づきを得る機会になります。

また、職場で良いコミュニケーションを生むために、次の3つの言葉を習慣にするとよいと言います。
・「いいね」(好意)
・「すごいね」(賞賛)
・「ありがとう」(感謝)

「好意・賞賛・感謝」は、効果的な褒め言葉の3要素です。これらを自然に使いこなせるようになることで、褒めることが習慣化し、「人の良いところを承認する文化」が生まれます。私もこの考えを参考にしながら、若い世代とのコミュニケーションに積極的に取り入れていきたいと思います。

仕事に「やらされ感」を抱くとモチベーションは低下します。そこで重要なのが「自分軸」です。指示を出す際は、「この仕事がキャリアや成長にどう役立つのか」を伝えることで、前向きに取り組めるようになります。

また、「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」のための日報も、単なる義務ではなく「自身の評価や成長につながる」と認識してもらうことが大切です。「君のために必要なんだ」と伝え、メリットを明確にしましょう。

記憶に関する心理学者ヘルマン・エビングハウスの研究によれば、人は20分で40%の記憶を忘れるとされています。この知識を活かし、「話を聞くときにはメモを取ろう」と促すと良いと言います。

「メモは、未来の自分へのラブレターなんだよ」とにかく、未来の自分にとってメリットになることを、メモに残す。 これが成長の糧になるこ とを、若手にも伝えてほしいのです。

メモを活用すれば、同じミスを繰り返さず、業務効率が向上します。「メモは未来の自分へのラブレター」という意識を若手に持ってもらうことで、彼らの成長を後押しできそうです。

さらに、ビジネスでは「曖昧な表現」を避けることが大切です。特に「大丈夫」という言葉は、人によって解釈が異なります。若手には、「大丈夫」の代わりに具体的な言葉で意思を伝える重要性を教えましょう。 では、仕事の完成度はどの程度求めるべきでしょうか?

ある企業では「20%できたら見せて」と上司が声をかけるルールを導入しているそうです。完璧を求められるとプレッシャーになりますが、「20%の段階で見せる」というルールがあることで、気軽に相談しやすくなります。同時に、「最低限20%はやらなければならない」という責任感も生まれるのです。

20%という早い段階で、アウトプットを可視化するという考え方は今の若い世代には有効だと思います。このように、働く意欲を高めるためには、指示の仕方や伝え方を工夫し、個々の成長につながる視点を持つことが重要です。

本書には、若い世代とのコミュニケーションに悩むリーダーのための具体的な解決策が数多く紹介されています。著者のアドバイスを通じて、私自身も多くの気づきを得ることができました。若手との関係に課題を感じているビジネスパーソンに、ぜひおすすめしたい一冊です。

最強Appleフレームワーク


 

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