できる人の仕事のしかた
リチャード・テンプラー
ディスカヴァー・トゥエンティワン

できる人の仕事のしかた(リチャード・テンプラー)の要約
仕事に行き詰まりを感じたとき、最も効率的な打開策は、すでにその道を通ってきた人の知恵に学ぶことです。リチャード・テンプラーの『できる人の仕事のしかた』は、単なるスキル習得にとどまらず、仕事に対する姿勢や人間関係の築き方、そして変化への柔軟な向き合い方にまで踏み込んだ一冊です。信頼を得るための行動や、キャリアを停滞させずに“更新”し続けるための実践的なルールが、具体的かつ明快にまとめられています。
仕事の悩みを解決する「ルール」の身につけ方
人生とは一生勉強だ。たった一つのルールを学ぶだけでも、まったく学ばないよりずっとよい。(リチャード・テンプラー)
仕事がうまくいかないと感じるとき、その悩みの多くは、すでに誰かが通り、考え、解いてきた問題でもあります。だからこそ私たちは「巨人の肩に乗る」ことで、無駄な遠回りをせずに済みます。
できる人の仕事のしかたは、まさにそのための一冊です。昨年、新版が刊行されたことを機に、あらためて読み返してみました。 一般的なキャリア本がスキルや専門能力の獲得にフォーカスするのに対し、著者のリチャード・テンプラーは、誰が評価され、誰が停滞するのかを分ける、より微妙な行動や姿勢、そして人間関係の力学に目を向けています。(リチャード・テンプラーの関連記事)
本書では、職場で成功するために著者自身が体得してきた118のルールが、驚くほどわかりやすく提示されています。「人生とは一生勉強だ。たった一つのルールを学ぶだけでも、まったく学ばないよりずっとよい」という言葉は、本書の基本姿勢を端的に表しています。
テンプラーは、職場とは目に見えないルールが存在する一種のゲームであり、その構造を理解した人が大きなアドバンテージを得ると考えます。評判のマネジメント、人間関係の築き方、誠実さを損なわずにオフィスポリティクスと向き合う方法まで、アドバイスは「成果」「好印象」「目標」といった整理された章立てで語られていきます。
特に印象的なのが、「自分だけの仕事を持つこと」の重要性です。自分の役割が明確で、代替のきかない仕事を担っている人は、行動の自由度が一気に高まります。行き先や細かな仕事内容を逐一説明する必要がなくなり、自然と活動範囲も広がる。
その結果、周囲からは「自由に動ける特別な人」として認識され、存在感が際立っていきます。これは自己主張の話ではなく、信頼の総量が増えた結果として生まれる自由だと言えるでしょう。
同時にテンプラーは、職場に蔓延しがちな空気にも疑問を投げかけます。仕事を嫌い、文句を言うことが一種の美徳のように扱われる環境は、決して珍しくありません。あたかも「一番仕事が嫌いな人が一番偉い」かのような雰囲気すら存在します。しかし彼は、そうした姿勢こそが人を停滞させると見抜いています。
仕事は楽しい。この感覚は、実は本当に成功している人だけが知っている秘密なのだと、著者は語ります。 仕事は楽しいと気づいた瞬間、足取りは軽くなり、余計なストレスは減っていきます。結果として、全身から前向きな空気がにじみ出るようになる。その変化は、周囲にも確実に伝わります。「仕事は楽しい」。この言葉を自分の胸に刻めるかどうかが、長期的なキャリアの分岐点になるのかもしれません。
習慣的に文句や悪口を言っている人は、文句や悪口の種を見つけるのが自然になる。ここで態度を変え、ポジティブなことを言うようにすれば、もっとポジティブな人間になれる。
また、著者は、「人との関わり方」における姿勢も重要なテーマとして提示しています。 たとえば——状況にかかわらず、嫌われている人をあえて弁護するという行動です。 一見、リスクを伴うようにも見えますが、それを実行できる人は、周囲から「他人のよい面を見つけられる人」として評価されるようになります。そして、その評判は想像以上に早く広まっていきます。
その結果、普段批判されがちな人にとっては、あなたの存在が大きな支えとなり、やがて深い信頼と忠誠心へとつながっていくのです。 このように、他者への見方や態度を柔軟に保つことは、自分自身の立ち位置を見直すきっかけにもなり、変化に向き合うための土台をつくる行動としても意味を持ちます。
ビジネスにおいて、変化が重要な理由
人は同じところにとどまっていてはいけない。動き続けなければ、停滞するだけだ。動くことが好きにならなければ、根が生えるようにじっとしていることになる。動き続ける人になろう。
ミドル世代にとって、今あらためて問われているのは、「変化に対する姿勢」です。 安定を優先し、現状にとどまることが必ずしも安心や安全をもたらすとは限りません。むしろ、それは気づかぬうちに、緩やかな停滞へと移行するリスクをはらんでいます。
私たちは、行動を止めた瞬間から、思考が硬直し、成長の機会を徐々に失っていきます。 そしてやがて、ただ時間だけが過ぎていく——こうした状態に陥るのは、特にミドル世代以降に見られがちな傾向といえるでしょう。
社会や技術の変化がますます激しさを増す現代において、「変わらないこと」よりも、「変わり続けること」のほうが、むしろ合理的で現実的な選択肢となっています。 こうした時代背景のなかで、本書が提示する視点は、極めて実践的かつ示唆に富んでいます。
特に注目すべきは、著者が「変化」を単なる未来志向のテーマとして語るのではなく、過去の経験や選択とどう向き合うかという内面的な視点にまで踏み込んでいる点です。
著者は読者に、次のような問いを静かに投げかけます。
・これまでの人生で、見過ごしたチャンスはなかったか。
・同じような機会が再び訪れたとしたら、今度はどう行動するか。
・あのとき動けなかったのは、能力が足りなかったからなのか。それとも、変化を恐れていたからなのか。
これらの問いは、単なる振り返りではありません。 自己認識を深め、思考を柔軟にし、次のアクションにつなげるための重要なプロセスです。
本書の価値は、こうした内省を通じて、過去・現在・未来をひとつながりのストーリーとして捉え直す視点を提供してくれるところにあります。 そして何より重要なのは、そこから導き出されるシンプルで力強いメッセージです。
「動き出すのに、遅すぎることはない」 ミドル世代こそ、変化とともに生きる視点を持ち直すことで、これからのキャリアと人生をより主体的に切り拓くことができるはずです。
実際、私自身も44歳のときに断酒という選択をし、その後の人生に大きな転機をもたらしました。そうした経験があるからこそ、著者のメッセージには、個人的にも強く共感しています。
「一生学び続ける」これを自分の目標として公言しよう。
本書が示しているのは、「仕事に直結するスキルや成果だけがキャリアを形づくるわけではない」という視点です。たとえ今の仕事に直接結びつかなくても、学び続ける姿勢そのものが、確実に視野を広げてくれます。新しい知識や分野に触れることで、精神は少しずつ自由になり、同時にしなやかに鍛えられていきます。
だからこそ、効率や即効性ばかりを求めるのではなく、自分が興味を持てることに挑戦し、それについて深く学ぶこと自体を目標に据えるべきだと、本書は背中を押してくれます。その蓄積が、結果として「自分だけの仕事」や、自由に動ける土台を形づくっていくのです。
本書は、文章が明快で読みやすく、各ルールが短く独立した章でまとめられています。そのため、どこからでも読み始めやすく、必要なときにすぐに該当箇所を参照できる構成になっています。 キャリアのスタート地点にいる若手はもちろん、すでに成果を上げていながらも行き詰まりを感じている人にも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
成功とは、何をするかだけで決まるものではありません。「それをしている自分が周囲からどう見えているのか」という視点を持ち、自分の行動や姿勢を少しずつ変えていくことで、仕事のやり方そのものが変わり始めます。本書は、その変化を現実のものにするための実践的なガイドとなるはずです。
















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