田村潤氏の負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法の書評

■身体は脳の支配下にあると思われがちだが、本当は逆で、身体が主導権を握っている
モチベーションというものが存在するから行動できるという考え方は間違いで、行動するからモチベーションが発生する
■”やる気が出たからやる”のではなく、”やるからやる気が出る”(池谷裕二)


photo credit: eightfivezero Kirin via photopin (license)

行動によってモチベーションを高めよう!

田村潤氏は負けグセ社員たちを「戦う集団」に変えるたった1つの方法の中で、脳科学者の池谷裕二氏の言葉を紹介しています。行動することで、人のモチベーションは高まりますが、この池谷氏の考え方を田村氏は自分の組織に持ち込みました。負け戦に慣れていたキリンビールを変えるために、現場を重視し、飲食店を回ることを行動目標に掲げたのです。目先の売り上げではなく、現場に行った回数を営業マンに問いますが、最初のうちはこの目標もなかなか達成できません。しかし、田村氏は高知の人に美味しいビールを飲んでもらう理念を部下に示し、訪問を続けることを部下に求めました。

社員が熱心に現場を回るうちにモチベーションが生まれ、飲食店や量販店との関係をよくすることができました。キリンの本社を見るのではなく、目の前のお客様のために働くことでキリンのファンを増やせたのです。ビールサーバーが故障した店があれば、社員がすぐに対応するようになりました。美味しいビールを飲んでもらうことを理念にしたことで、社員の行動が変わり、お店の人たちをファンにできたのです。

数字が上がらないときは、思い切って他のことを捨てて1つのことに集中したほうがよいと田村氏は述べています。現場に集中し、飲食店や量販店との関係を改善することで、キリンビールの高知支店は結果を出せるようになったのです。

お客さまのことを考えて仕事をしていると、社外で応援者が必ず増えていきます。お客さまに共感が生まれていったのです。それに応えようと、メンバーたちはさらに仕事に集中していきます。それと同時に支店内で仲間への共感が生まれてきました。互いにリスペクトするようになったのです。こうして強いチームができあがっていきました。

自分たちの売り上げをアップするという利己的な目的をやめ、お客様のため(利他を目的)に行動することで、共感の量が増えて、社内の空気を変えることができます。

 

ブランドスイッチは共感から生まれる!

現場を回っているうちに田村氏は「ビールは情報によって飲まれている」という事実を発見します。テレビや新聞、雑誌などマスメディアを媒介とした情報も影響力をもちますが、それ以上に高知の人びとのあいだで大きな影響力をもっていたのはロコミだったのです。「ロコミで話題になるビール=売れているビール、人気のあって元気のいいビール」という情報が人びとの心の中にどんどん蓄積されることで、キリンブランドは強くなっていきました。

ブランドスイッチ は心の中で情報が臨界点に達した時に起こるのです。情報の流れをアサヒからキリンに逆転させるために飲食店や量販店との関係を改善していったのです。

ひとりのお客さまは、朝に新聞を読み、車でラジオを聞き、小売店で買い物をし、居酒屋でお酒を飲み、ときどき百貨店にも足を運びます。そこで、あらゆる接点を押さえ、そこからキリンの良さを発信させ、シナジーを起こすことが戦略となりました。こうして「キリンがいいらしいぞ」という情報が、消費者、小売店、料飲店のあいだにロコミで広がっていきました。変化は小さな積み重ねから生まれてきます。夢やビジョンは、目の前の「いま、ここ」を果たした延長上にあります。

机上で戦略を議論するのをやめ、現場を喜ばすことを優先し、お客様のための情報を発信したのです。高知支店の理念を作り直し、「われわれの顧客」は高知の人びとに変えました。量販店の店長やスタッフと一緒に良い売り場をつくり、互いに信頼関係を築きながら、キリンビールのブランド価値を高知の人たちに伝えることにしました。その結果、キリンのファンが増え、量販店の売上全体も上がっていたのです。量販店は取引先と同時に戦略を一緒にするパートナーで、彼らを喜ばすことで、キリンビールは強くなったのです。

田村氏は「伝える」という姿勢を重視し、凡事を積み重ねたのです。そうした積み重ねが臨界点を超えた時に、よいロコミが起こりました。「キリンはいいらしい」「頑張っている」「困ったら助けてくれそうだ」という情報が、高知県内に広がり、高知支店の売り上げが復活したのです。

目の前のお客様を喜ばし、共感を生み出すことで、負け組社員の思考と行動が変わりました。お客様との共感が組織の内部にも伝染し、社員の力を高めていったのです。結果をよくするヒントは必ず現場にあると信じ、目の前のお客様に貢献することで、共感が生まれます。この共感の輪を高知・四国・東海やがては全国に広げることで、キリンブランドは復活したのです。

まとめ

解決のヒントは現場にあり、本社の意向に従ってばかりでは結果は残せません。現場を周り、お客様の声を聞くことから課題が見つかります。目の前のお客様を喜ばすことで、共感が生まれ、応援してもらえるようになります。お客様のための行動を続けるうちに感謝され、社員のモチベーションが高まったのです。組織がお客様の共感によって生まれ変わることで、キリンビールは復活を遂げたのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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