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文系AI人材になる: 統計・プログラム知識は不要
著者:野口竜司
出版社:東洋経済新報社
本書の要約
AIはやがてExcelのような身近なツールになります。その際、理系のAI人材だけでなく、ビジネスを理解している文系の人もAIを理解すべきです。多様な課題を解決するために、文系AI人材の企画力がこの分野に求められています。AIの技術や可能性を理解し、ビジネスに活用しましょう。
AIは今後Excelのように普及する!
「AIはExcelくらい誰もが使うツール」となります。文系・理系を問わず、Excelは本当に多くの人が使っている表計算ソフトです。少し大げさかもしれませんが、そのExcelと同じように、Alも多くの人が扱うことができる一般的なツールになりつつあります。ほんの少し前までのAIの世界は、理数系や技術系の「理系AI人材」が引っ張っていました。しかし、AI技術が一般化し誰もがAIを気軽に扱えるようになった今、「AIをどう作るか?」よりも、「AIをどう使いこなすのか?」のほうが大きな課題になりつつあります。そこで重要になるのが、ビジネスの現場も知っている文系AI人材なのです。
著者の野口竜司氏は今後AIが普及する中で、ビジネスパーソンにとって当たり前のツールになると指摘します。AIはやがてビジネスパーソンがオフィスで使うExcelのようになり、ビジネスを理解している文系人材こそAIを使いこなすべきだと言うのです。
AIの議論になると人間がAIに勝つ、負けるというスタンスの話になりがちですが、今こそAIと協業することを考えるべきです。AIによって自分の仕事がなくなるのなら、AIを味方にして、新しい職種にチェンジすればよいだけです。これまでの歴史を振り返ってみても、新しい技術が生まれて、それが社会に定着したとき、いくつかの職種がなくなってきましたが、その一方で新しい技術を使ったこれまでになかった新しい仕事が生まれてきています。
アクセンチュアによると、日本の労働者は「AIが私の仕事にポジティブな影響をもたらす」と回答した割合が22%にとどまり、世界平均の62%より40ポイント低かったそうです。「日本人は世界の他の国の人と比べて、よりAIへの不安を抱いている」といえますが、それはAIについての知識が少ないからです。
「Al失職」についての、漠然とした恐怖や不安から脱するために、まずはAlへの理解を深めましょう。Alをよく知れば恐怖がなくなるどころか、Alを使いこなす側になることができます。AIを知ることこそ、「AI失職」から解放され、AIを使いこなす「AI職」の道への第一歩なのです。
AIを使いこなす人材になろう!文系はAIに向いている?
これまでいろいろなAIプロジェクトにおいて、とにかく「Alを作ることが目的」になってしまったケースも多かったように思います。本来は、社内でAlを活用してできるだけ大きなビジネス価値を生むことが主目的であるべきです。その際、ビジネス価値を最大にするためには、自ら作ったAlであれ、構築済みAlであれ、それらの「Alをうまく使う」ことがキーポイントになるのです。精度が優れたAlが作れたとしても、ビジネス上のどのシーンでどのように使うかがしっかり設計されていないと、うまく活用が進まず成果もあげにくくなります。最悪のケースは、優れたAIはできたけれど、業務プロセスの中に組み込むことができず、お蔵入りしてしまうことです。
AI作りがカジュアルになり、構築済みAIサービスも増加している今、「AIをうまく使う」人材、つまり、ビジネスや業務知識にくわしく、かつAIにも精通した人材がより重宝されるようになるはずです。AIを作る専門能力がなくとも、ビジネスや業務知識をもった文系人材が、AIの基礎をしっかり学ぶことで「文系AI人材」となり、「AIをうまく使う」人材となることで、ビジネスの可能性を広げられます。せっかくAIを作るのなら、ビジネスに活用できるようにしなければ意味がありません。理系と文系の力を組み合わせることで、自社のAIの価値が高まるのです。
AIが世の中に浸透し、人間の業務がAIに置き換わったり、AIによって拡張されていき、人間とAIが一緒に共同して働くシーンが多くなることは間違いありません。人間とAIが共に働くことが前提になった環境において、「AIと働くチカラ」は、非常に重要な能力になります。時代は英数国理社の5教科にプラスし、AIの知識を文系ビジネスパーソンにも求めています
では、「AIと働くチカラ」を身につけるにはどうすればよいのでしょうか?答えは簡単で、本書に書かれているAIと協業するための4つのステップを踏むだけです。
1、AIの基本を丸暗記する
2、AIの作り方をザックリ理解する
3、AI企画力を磨く
4、AI事例をとことん知る
過去のSF映画で描かれてきた未来の想像が、現代のAIによって一部実現されてきています。また、今後のAIの発展や社会実装の進行によって、ますます過去の想像が現実の世界で実現されていくことでしょう。フランスの小説家であるジュール・ヴエルヌは「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」という言葉を残していますが、AIにおいても同じことがいえます。人間が想像できるAIはいずれ実現されていくということを前提に、アイデアを小振りなものにしないことを念頭において、AI企画に取り組み始めましょう。AIによる新しい世界を自由に想像することから始めることによって、AI導入のインパクト・変化量をより大きなものにするアイデアが生まれやすくなります。
文系Al人材に必要なAl知識をより広く、深く得ることによって、文系Al人材の中でも対応できる範囲を広げられたり、ひとつの領域を深堀することも可能になります。Alとは、人間と同様の知能を実現させようとする技術で、「画像・動画識別力」「自然言語・会話制御力」「物体制御力」で強みを発揮します。
人間の眼、耳と口、身体の代わりをAlが一部担える可能性が高まってきたと捉え、ビジネスにどう使えばよいかを考えるべきです。たくさんの企画を生み出すことで、自分の未来の可能性を広げられます。文系には文系のAIのビジネス活用法があるのです。 企画を小さくしないために、AIを導入する際に、「誰のために」×「なぜ?なんのために」AIを使うのか?を徹底的に自問しましょう。それと同時に、本書に書かれているフレームワークや豊富な事例を使えば、多様なアイデアを生み出せるようになるはずです。
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