高城剛氏の2049 日本がEUに加盟する日 HUMAN3.0の誕生の書評

AIやロボティックスに取って代わられ、はじめに職がなくなると言われるのは、誰でもできる仕事(いわゆるマックジョブ)なのだろうが、日々、同じ場所から同じ会社に通い、同じ人々とばかり接しているのでは、そのリスクは高まるだろう。それが、たとえ「先生」と言われるような職業であっても。つまり、いくつもの場所で、いくつもの仕事を、不規則的にこなしている人々は、AIに取って代わられることがない。すでに我々は、「便利」と引き換えに、多くのものを失っているのを、忘れてはならない。(高城剛)

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2049年の未来はどうなる?

今から30年後の2049年以降、世界は、人類はどう変わっていくのでしょうか?1989年に私は広告会社で働きながら、書籍や雑誌など様々な情報を活用し、未来を夢想していました。今振り返ると現実になったアイデアもありますが、多くの悲観論は的外れな物でした。

2019年になった今も未来談義は悲観論に傾いているような気がします。巷では、AIによって私たちの仕事がなくなると喧伝されていますが、本当にそうなるかどうかはわかりません。高城剛氏は多くの知識層と話すうちにAIによって仕事はなくならないことを確信します。(2049 日本がEUに加盟する日 HUMAN3.0の誕生)ただ、変化しない人の職業がなくなる可能性は高そうです。このように未来について語られる事実は何が正しいかはわかりません。

労働問題をはじめ、人口・環境問題など多くの未来予測が著者によってなされますが、その予測は他の書籍で書かれている世界観とは異なります。著者の膨大な実体験や識者へのインタビューを通じて導き出された予測は、想定外の話が多く、私の脳に猛烈な刺激を与えてくれました。本書の未来予測を読むと時に悲観になりますが、未来を理解しておくことで人は何かしらの対策を練れます。極端な悲観論に流されるのではなく、現実をしっかりと受け止め、そこからチャンスを見出すようにしましょう。

シリコンバレーの顔役のピーター・ティールはシリコンバレーの終焉が近づいていると考え、ニュージーランド国籍を密かに取得したそうです。彼は文明崩壊に備え、広大な牧場を購入しました。このレベルの避難は私には無理ですが、脳の力を活用することで自分の未来は変えられます。
以下本書のエッセンスを簡単に紹介します。
■短期的には地球は寒冷化に向かう
(食糧危機・ドイツなど寒冷地からの移民の移動よる労働力不足・大規模停電)
■アメリカの分断・格差の拡大
(ラストベルト・内陸部の停滞、都市内での格差)
■中国に破壊されるシリコンバレー
(IoT、製造業では中国に惨敗)
■アメリカ軍の海外からの撤退
(トランプの軍事費削減で世界の秩序は大きく変化)
■$の弱体化、絶対的な基軸通貨ではなくなる
■アメリカ、中国、インド、EUのどれもが停滞する
(2029年の経済規模は中国が1位、アメリカ2位、インドが3位に)
■爆発する人口問題。一方アジアは少子高齢化が進む。
■資本主義、新自由主義の限界
今日はこの中から中国の可能性と限界についてを紹介しようと思います。

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中国の成長は今後も続くのか?

杭州はアジア最大の企業集団アリババのおかげで急激に変化しています。従来の街作りとは異なり、杭州では企業が街のグランドデザインを描いています。杭州では、現金がほとんど使われておらず、決済はアリババが提供する決済サービス「アリペイ」によって支払われています。(アリババ・アリペイの参考記事

近年、訪れた国のイノベーションレベルを確かめるとき、シェアライドの普及とキャッシュレスに個人的に着目している。道端の屋台に目をやれば、一見、昔と変わらない光景だが、杭州では驚くほどにキャツシュレス化が進む。一方、日本では、相変わらず現金がやりとりされている。だが、杭州ではボロボロの屋台であっても現金を使う人はほとんどいない。つまり、昔と変わらない光景に見えても、実は現金を持ち歩かなくなったなど、ライフスタイルは一変している。これが、本当の未来の光景なのだ。

ジャック・マーはパパママストアや屋台でもアリペイを使えるようにして、キャッシュレス社会を短期間で実現しました。中国の通貨はもちろん人民元だが、杭州でもっとも重要な通貨はアリペイになっています。杭州の住民の9割はアリペイを使ってモノを買い、サービスを利用しているのです。中国人民銀行によれば、2013年における中国国内のモバイル決済総額は9兆6400億元。一方、2017年には202兆9300億元にも達しています。

そしてアリペイは、海外でも使える場所を着々と増やしています。アリペイは日本だけでなくヨーロッパでも勢力を伸ばしています。

例えばコペンハーゲンに住むデンマーク人が、わずか50キロメートル離れたスウエーデンのマルメで買い物をしようとしたら、デンマーク・ クローネとスウェーデンクローナという2種類の通貨を使わなくてはなりません。ところが中国人は、北京から8000キロメートル離れたロンドンに旅行しても、一つの財布だけどころか、手ぶらでもいいのです。なぜなら、現地にローカライズされたアリペイが使えるからです。アリペイはモバイルウォレットとして、今後、世界的に拡大していくでしょう。(クリス・スキナー)

これまで世界の決済市場を支配していたのは、アメリカの企業であるビザとマスターカードでしたが、あっという間にアリペイ+QRコードに牙城を崩されてしまいました。アリペイには、ユーザーが使うメリットがあります。利用者がアリペイを使うと、「芝麻信用」という評価システムのスコアが上がり、ホテルやシェアリングサービスの保証金が安くなり、ローンで優遇を受けられ、ビザの取得が簡単になるのです。

クレジットカードの決済手数料は通常3~5%程度ですが、アリペイはゼロのため、店舗にも利益をもたらします。アリペイのチャージ分を現金化する際、一定金額以上の場合は0.1%の手数料がかかりますが、店側の負担はほとんどありません。アリペイのおかげで、集客アップや、決済の簡素化が期待できるのですから、アリペイはどんどん普及します。

中国はアメリカに送った優秀な人材を自国に取り戻し、成長を加速させています。このウミガメ政策で中国はアメリカで学んだエキスパートを次々と高待遇で採用しています。この結果、中国の大学は軒並み評価を高めているのです。清華大学は今やシンガポール大学を抜いてアジアナンバー1の大学として有名です。北京大学、深圳大学、香港大学、香港科学大学なども世界大学ランキングで50位以内に入り、卒業生たちは北京や深圳のハイテク企業に就職し、イノベーションを起こす原動力になっています。

ハイテク分野や軍事面でアメリカと中国の覇権争いが激しくなっていますが、中国の時代は来るのでしょうか?これだけの好条件が整っているにもかかわらず、著者は中国の限界を指摘します。

イギリスが覇権を握って世界が比較的安定をしていた時代は、ローマ帝国が栄華を極めた「パクス・ロマーナ」になぞらえて「パクス・ブリタニカ」と呼ばれた。同様に、20世紀後半のアメリカ一極体制の時代は「パクス・アメリカーナ」だ。ちなみに「パクス」とは、ローマ神話に登場する平和と秩序の女神のことで、”秩序の回復”の象徴である。では、「パクス・チャイニーズ」の時代はやってくるだろうか。結論から言えば、僕はNOと答える。

中国では政権交代が起こりにくくなっています。政権を握っている中国共産党が、軍隊を握っているのがその理由です。中国の憲法には、「中華人民共和国中央軍事委員会が全国の武力を領導する」と明記されています。つまり、中国人民解放軍は共産党の軍隊なのです。ですから、共産党内での権力闘争はあっても、共産党以外が権力の座に就く可能性は低いのです。しかし、この安定がデメリットになりかねません。

一般的に、社会の多様性と流動性が大きいほどイノベーションは起こりやすい。多彩な人々が集まり、互いに刺激を与え合うことが新たなものづくり・サービスの源泉となるからだ。その点、中国は不利に見える。権力は共産党によって握られていて、庶民がその権力に割って入るのはほぼ不可能。また、中央政府や地方政府の中では、取り締まりを行っても腐敗を払拭できないという事実もある。そして国際社会の中ではガラパゴス。こうした中で、イノベーションを起こし続けるのは難しい。

中国は、豊富な資金力を生かして周辺国に惜しみなく資金を提供しています。しかし、その影響力を発揮できるのは短期間になりそうです。やがて資金が尽きれば、周辺国も離れていくはずです。また、人口問題も中国の成長に影を落とします。

中国では2016年に1人っ子政策が緩和されましたが、出生率は相変わらず低いのが現状です。新浪財経によると、2017年の出生率はわずか1.24。これは日本の水準(1.43)よりも低くなっています。いずれは中国も少子高齢化に悩まされることになります。

中国は広大な土地と世界一の人口を背景に、今後もガラパゴスなまま伸びるだろう。だが、まもなく成長は、急速に鈍化すると思える(政府が正しい数字を公表するか否かはさておき)。おそらく、アメリカと肩を並べる程度の市場にはなるだろうが、アメリカを抜いて覇権を握るのは無理だと、僕は考えている。

FacebookやTwitterを拒否するガラパゴスな中国の成長には限界があると高城氏は指摘します。中国の成長は今後も続くでしょうが、彼らが多くの問題を抱えていることも事実です。様々なデータや情報、自分の体験を組み合わせ、未来を予測する精度を高めたいと思います。

まとめ

高城剛氏は様々なデータ、豊富な体験、識者へのインタビューを組み合わせることで未来を予測します。本書の未来論は類書のそれとは異なるものが多く、新たな視点で未来を考えるヒントになります。アメリカ、中国、日本の未来は楽観できませんが、本書のアドバイスを参考にすれば、未来の変化に適応できるはずです。

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