ジム・コリンズに学ぶ、リーダーの7つの要素

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ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる
著者:ジム・コリンズ、ビル・ラジアー
出版社:日経BP

本書の要約

ビジョナリー・カンパニーの著者のジム・コリンズはリーダーシップ・スタイルの7つの要素を紹介しています。誠実さ、決断力、集中力、人間味、対人スキル、コミュニケーション能力、常に前進する姿勢を身につけることで、偉大な経営者に生まれ変われます。

リーダーシップ・スタイルの7つの要素

リーダーシップとは、部下にやらなければならないことをやりたいと思わせる技術である。(ジム・コリンズ)

ジム・コリンズビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる書評を続けます。

ジムはリーダーシップを「部下にやらなければならないことをやりたいと思わせる技術だ」と定義し、重要な点を3つあげています。
①やらなければならないことを見きわめるのはリーダーの役目。
②重要なのはやらなければいけないことをやらせることではなく、やりたいと思わせること。
③リーダーシップとはサイエンスではなく、アートである。

誰もが自分らしいスタイルを発見し、身につけなければなりません。やらなければならないことを成し遂げるために、正しい人々がともに意欲的に働いてくれるようにすることがリーダーのつとめで、それを作品を創造するように生み出すのです。 自分自身のリーダーとしての特別な才能を見つけ、それを磨き続けることで、部下が自ら動いてくれるようになります。リーダーはアーティストのように経営すべきです。

著者はリーダーは以下の7つの要素を身につけるべきだと指摘します。
■誠実さ
■決断力
■集中力
■人間味
■対人スキル
■コミュニケーション能力
■常に前進する姿勢

■リーダーシップ・スタイルの要素1 誠実さ

有効なリーダーシップのもっとも重要な要素は、会社のビジョンを誠実に実践することだ。価値観や目標はリーダーが「何を言うか」ではなく、「何をするか」を通じて社内に浸透していく。健全な会社では、リーダーの語る言葉と心の中で抱いている思いに矛盾がない。

価値観はリーダーの体からにじみ出て、日々の活動を通じて組織に刷り込まれていきます。リーダーは価値観を組織の奥まで浸透させなければなりません。

有能な企業経営者は自分の価値観、信念、願望をどこまでも熱く語ります。価値観への思い入れを臆せず語り、ときには感情的になることもあります。

ナイキCEOのフィル・ナイトは内気な性格ですが、1990年の全社会議では、感情をあらわに自分が社員のことをどれほど誇りに思っているかを語りました。圧倒的に成功している会社の創業者で、成果、競争、勝利にこだわることで知られるナイトですが、この日は涙を見せ、スピーチを最後まで続けることができませんでした。それがナイトの「本心」であることが伝わったからこそ、社員は心を動かされたのです。 

リーダーは誠実に「語る」だけではなく、誠実に「行動」すべきです。会社で働く人たちは、リーダーの行動に驚くほど影響を受けます。リーダーの行動が社員の行動にどれほど影響を与えるか、過小評価してはならないのです。リーダーは自分が理想とする企業文化のロールモデルにならなければなりません。リーダーはコアバリューを実現するために行動し、社員の模範となるべきです。

会社にとって重要な戦略的決定を下す際にも、誠実さを貫くことが大切だ。あなた自身が日々の行動を通じて価値観や信念を体現するのと同じように、会社も主要な意思決定を通じて理念を体現しなければならない。

言行一致自らの言葉を行動で裏づけない経営者には、誰も共感しません。ビジョンを語るだけでなく、リーダーは自ら行動を起こし、社員を勇気づける必要があるのです。

第5水準のリーダーを目指せ!

著者は本書で、有名なリーダーシップの第5水準の原則を改めて説明します。第5水準のリーダーは以下の第1水準から第4水準までのすべてのスキルを駆使して、ビジョンを実現するために全力を尽くします。
第1水準(個人的スキル)
第2水準(チームワークのスキル)
第3水準(管理スキル)
第4水準(リーダーシップスキル)

第5水準のリーダーは謙虚さと不屈の意思という矛盾するような性質を併せ持っており、なおかつ野心的です。彼らはあらゆるエネルギーを事業に注ぎ、目標を達成しようとします。その野心は自分のためではなく、会社のため、目的のために向けられます。

第5水準のリーダーになりたければ、自分の大義は何かを問うべきです。自分自身ためではなく、大義のためにリーダーシップを発揮すべきです。

■リーダーシップ・スタイルの要素2 決断力

偉大な企業をつくるリーダーは、優柔不断に陥ることがない。完壁な情報がなくても分析、可能性の評価はいずれも意思決定に必要だ。ただあくまでも目的は分析を尽くすことではなく、「意思決定を下すこと」だと頭に入れておこう。

ジョージ・C・マーシャルは、リーダーにとってもっとも大切なのは意思決定能力だと指摘しています。多くのリーダーは優柔不断ですが、卓越したリーダーは正しい決断を行います。

スタンフォード大学の初代学長であるデイビッド・スターン・ジョーダンは、「すべてのエビデンスが出そろったと思ったら、イエスかノーか決断し、あとは一か八か賭けてみる」とよいと述べています。不完全な情報しかないときには本能や直感に従い、経験値を高めていくようにします。意思決定が上手な人は、たいてい冷静な分析と直感の両方を組み合わせています。

直感を活用するためには、リスクにかかわらず、正しいと思うことを実行する勇気が必要です。
●初めから問題あるいは判断の核心を見る。
●枝葉末節を整理する。
●次のシンプルな問いと向き合うことで、決断する力を高められます。「直感はイエスと言っているのか、ノーと言っているのか」 「これが正しい行動だと思うが、○○という不安がある」というときは、直感に反して危険な判断を下そうとしているサインになります。

失敗を恐れず、決断し、組織をまとめ、行動することで、結果を出せるようになります。

判断は「誤る」ほうが「しない」よりましなことが多い。あなたがどれだけ優秀であっても、判断で打率10割を達成するのは不可能だ。あなたの下す判断の相当な割合がベストなものではないだろう。人生とはそういうものだ。何かを選択するとき、絶対の確信が持てるまで先延ばししたら、ほぼ確実に優柔不断の泥沼にはまる。何もしないのは安心に思えるかもしれない。すぐにリスクに直面するわけではないからだ。しかし足を止めることが許されない中小企業の世界では、それは大失敗につながることが多い。差し迫った問題があるなら、決断を下し、なんとかやっていくしかない。判断をしないことは往々にして、誤った判断を下すより悪い結果につながる。

問題と正面から向き合い、先延ばしをするのをやめ、データと直感を信じて、決断することを習慣化しましょう。何度かは「失敗」し、そこから学習するプロセスによって、自分の能力を高められるのです。

重要な意思決定の基本的な流れは次のとおりです。
1、意思決定にどれくらいの時間をかけられるか判断します。数分、数時間、数日、数カ月、あるいは数年なのかを確認します。

2、最善の選択肢を見きわめるため、ファクトやエビデンスに基づく対話や議論を促します。

3、何をすべきかが明確になったら、あるいは検討時間がなくなったら、一切の曖昧さを排した明確な意思決定を下します。この際、合意が形成されるまで、先送りしてはいけません。

4、意思決定の下に団結し、規律を持って遂行します。

■リーダーシップ・スタイルの要素3 集中力

有能なリーダーは集中する。優先課題を最小限に絞り、脇目もふらずに専念する。すべてをやれる人間はいない。偉大な企業を目指す組織も同じことだ。

集中するためには、優先事項のリストを作成します。この優先事項はできるだけ短くし、一時期にひとつに絞るのが効果的です。優先事項を決めたら、片が付くまでそれに集中します。どうしても複数になる場合でも、3つを超えないようにしましょう。それ以上になるのは優先順位を決めていないのと同義です。 仕事は無限で、時間は有限であると考え、優先事項に集中するのです。

■リーダーシップ・スタイルの要素4 人間味

偉大な企業を育てるリーダーは「現場型」だ。ビジネスに人間味を加えようとする。

偉大な企業には、すばらしい人間関係があります。顧客との関係、サプライヤーとの関係、投資家との関係、社員との関係、そして社会全体と良好な関係、リーダーはつながりを意識し、人間関係を良好にすべきです。

顧客や社員をファンに変え、会社と個人的につながっていると感じてもらいましょう。 企業のリーダーが自ら関係づくりに時間をかけることで、このような親密な関係が育まれます。

■リーダーシップ・スタイルの要素5 対人スキル

偉大な企業をつくるリーダーは、硬軟の使い分けに習熟している。社員におそろしく高い水準のパフォーマンスを求める(硬)一方、社員の自信を育み、自分自身と自らの能力を肯定できるようあらゆる手を尽くす(軟)。

フィードバックをしないリーダーは、優れたリーダーにはなれません。部下に「ポジティブ(肯定的)な」フィードバックを行えば、人はパフォーマンスを高められます。ポジティブなフィードバックはパフォーマンスを改善する一方、ネガティブなフィードバックはパフォーマンスを低下させる傾向があることがわかっています。リーダーは積極的なフィードバックを心がけましょう。

■リーダーシップ・スタイルの要素6 コミュニケーション能力

多くの企業経営者はコミュニケーションが不得手だ。コミュニケーションができないのではない。しないのだ。

偉大な企業はコミュニケーションを糧に成長します。有能なリーダーはあらゆる場面でコミュニケーションをとろうとします。彼らは常に組織のなかで、コミュニケーションを行い、社員にビジョンを話、質問をし、ポジティブなフィードバックを行っています。社長室に籠るのをやめ、社内を歩き回り、社員への声がけを行いましょう。

■リーダーシップ・スタイルの要素7 常に前進する姿勢

偉大な企業のリーダーは、個人として常に前進、つまり向上している(個人的成長)。さらに常に前進する精神を会社にも浸透させる。こうしたリーダーはエネルギーレベルが高く、決して慢心しない。

優秀なリーダーは、「常に前進する」メンタリティを持っています。彼らは有能なリーダーになるための努力を怠りません。常に高い基準を目指すという揺るぎない決意を持ち、日々、昨日より上を目指しています。

自分の弱みや欠点に注意を払い、自分の弱点を改善していきます。他者からの手厳しいフィードバックを求め、コメントをもらうのです。客観的で正直な第三者を社外取締役として迎えて、改善のアドバイスをします。

私は社外取締役やアドバイザーをしていますが、優秀なリーダーは自分への批判を恐れません。真に傑出したリーダーになるために、彼らは私のような人間を雇い、自己研鐙にコミットしています。

彼らは自分の体と心と精神を大切にし、自分のためによいことを心がけています。彼らは高いエネルギーレベルを維持するために、常に「変化」しています。新しいことを試し、新しいプロジェクトに首を突っ込み、仕事のやり方を変えています。好奇心を持ち、常に新鮮な気持ちでいられるように、若い人に会ったり、読者などのインプットを忘れません。

偉大な企業の顕著な特徴のひとつが、変化し、改善し、新しいことに挑戦するのを決してやめないことだ。偉大な企業は決してゴールに到着しない。もうこうれで十分、とは決して思わない。偉大な企業という目的地があるわけではない。それはひたすら成長と改善を積み重ねていく、長く困難で苦しい道のりだ。

偉大な企業はいったん高みに上り詰めると、新たな課題、リスク、冒険、さらに高い基準を探します。彼らは成功しても、それに満足せずに、前進を続けます。優秀なリーダーはやるべきことをやり、前に進みつづけることを厭いません。

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