ジム・コリンズ、ビル・ラジアーのビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になるの書評


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ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる
著者:ジム・コリンズ、ビル・ラジアー
出版社:日経BP

本書の要約

起業家は正しい事業のアイデアより、正しい人材のほうがはるかに重要であることを忘れないようにしましょう。今考えているアイデア、あるいは事業戦略にしか適性のない人材ばかり集めたら、そのアイデアが失敗し、別のアイデアに挑戦しなければならない時には、同じバスに乗っている人のクオリティが重要になります。

起業は人なり

いつでも安全な道に戻れる選択肢を残しておこうとすると、一生選択しないままで終わる。ジム・コリンズ

ビジョナリー・カンパニーシリーズの著者のジム・コリンズは、私の恩人の1人です。サラリーマンをやめ、独立する頃、彼の著作を貪るように読み、人生をよりよくする方法を学びました。そして、人生や仕事において、リスクを取ることの重要性を学びました。失敗を恐れるのではなく、行動することで、多くの学びを得られることをジムから学ぶことで、私の人生をよりよいものに変えられました。

今回、今まで日本語訳されずにいたジム・コリンズの名著『Beyond Entrepreneurship』の改訂版がビジョナリー・カンパニーZERO というタイトルで出版されました。早速、本書を紹介していきたいと思います。内容のある本なので、何度かに分けて記事にしていきます。

著者は、偉大な企業を動かす要因について4半世紀以上にわたって徹底的に研究してきましたが、その中で見つけた重要な原則が、「最初に人を選ぶ」ことです。有名なビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則のなかで取り上げられていた「正しい人材をバスに乗せること」が、本書でも説かれています。

起業家は正しい事業のアイデアより、正しい人材のほうがはるかに重要であることを忘れないようにしましょう。今考えているアイデア、あるいは事業戦略にしか適性のない人材ばかり集めたら、そのアイデアが失敗し、別のアイデアに挑戦しなければならない時には、同じバスに乗っている人のクオリティが重要になります。

反対に最初のアイデアが成功し、さらにスケールの大きい優れたアイデアが見つかったら、どう対処するのかを考える必要があります。特定の戦略だけに適した人材を採用するのは、最初から失敗の確率を高めるようなものなのです。偉大な企業をつくるためのもっとも重要なスキルは、人材について優れた意思決定をする能力なのです。

バスに乗ってもらう人を探すためには、リーダーは何をしたらよいのでしょうか?よい人との「幸運な出会い」をデザインするためには、常に自分は採用活動をしているのだという意識を持ち、どこにいても周囲にすばらしい才能の持ち主が潜んでいるのではないかと目を光らせるようにするのです。

「幸運な出会い」はいつ訪れるかわからないが、人生に何度も起こることは確かだ。あらゆることを「幸運な出会い」というレンズでとらえなおすと、つまり幸運な「出来事」を「出会い」という視点で見直すと、幸運な出会いに気づきやすくなる。

創業チームに正しい人を入れれば、優れたアイデアが生まれ、うまくいく可能性は高まります。正しいメンターと出会えば、正しい選択ができるようになります。

まず、最高の人材を集めることから始めましょう。次にメンバーに大きな仕事を与えます。大きな仕事を選ぶほど、さらに最高の人材が必要になります。するとさらに大きな仕事が必要になり、さらに多くの最高の人材を獲得する必要が出てきます。今度はそれ以上無理というぐらい大きな仕事が必要になります。それを何度も何度も繰り返すことで、企業は成長します。

Amazonのジェフベゾスは、最高の人材を採用し、「弾み車の法則」を使うことで、類まれな成長企業を創り上げたのです。(弾み車の法則の関連記事

採用には、高い給与が必要だと多くのリーダーが考えがちですが、金銭的インセンティブは偉大な企業になる要因ではないと著者は指摘します。お金で間違った人材を正しい人材に変えることはできません。金銭的インセンティブがなければ、最高の成果をあげられない人には、偉大な仕事を成し遂げるのに必要な、強烈な内発的意欲や動機づけが欠けているのです。

不適切なインセンティブがあり、バスの主要な座席に不適切な人材が座っていると、どんな会社でも衰退の悪循環に陥るリスクがあります。

バスに間違った人が乗っていた場合の対処法

悪循環は会社のコアバリューに反する行動をとり、文化を殿損する誤った人材をバスに乗せてしまうところから始まる。こうした人材の一部が権限を持つと、コアバリューに反するインセンティブを設定するようになる。それは誤った人々の行動を助長し、正しい人々は会社に失望するようになる。誤った人々が文化を支配するようになり、正しい人々にとっては徐々に居心地が悪くなる。正しい人々はどんどんバスを降りていき、誤った人の割合がクリティカルマス(臨界量)に達する。そうしてある日気づくと、あなたが丹精込めてつくりあげてきた文化が破壊されている。

スタートアップやベンチャーの規模が大きくなると、重要なポストに誰をつけるかが問題になります。創業時のメンバーが重要なポストの仕事をこなせなくなっているのならば、誰かに交代させなければなりません。コアバリューに反する人を重要なポストにつけることで、優種な人材が逃げ出していきます。

不適格な人物を重要なポストにとどめているために、他の優秀な人材が会社を去りはじめていたなら、会社にとってはよくない選択になります。遅すぎる交代によって、本来バスに乗るべき仲間を去らせてしまうのです。

重要ポストに相応しい人は、自分が与えられているのは「業務」ではなく「責任」だと理解しています。偉大な医者は、単に手術をするといった「業務」を遂行するだけでなく、患者の健康に対する責任を引き受けます。偉大なコーチは単にトレーニングを準備するという「業務」をこなすのではなく、選手をよりよい人間に育てる責任を果たそうとします。重要ポストに就く者は例外なく、業務リストではなく広範な責任を担います。

バスに相応しい人材を間違った座席に座らせてしまうこともあります。その人物の能力や性格に合わない席に配置してしまっているなら、彼らをやめさせるのではなく、相応しいポストを用意すべきです。

交代を決断する際に、リーダーはこの人物が退社したときのことを想像しましょう。もし、ほっとしたなら、その人はバスに相応しくない人なのです。逆に心底がっかりしたなら、やめさせてはいけないということです。

境界線に達したと判断し、重要ポストにいる人物を交代させると決めたら、「厳格であれ、非情になるな」と自分自身に言い聞かせてほしい。両者の違いを区別することはとても大切だ。厳格さとは自分に正直になり、重要ポストの誰かを交代させる必要性と正面から向き合うことだ。しかし厳格に意思決定をすることと、その変更を非情なやり方で実施することはイコールではない。厳格でありつつ非情にならないためには、勇気と思いやりを併せ持つことが必要だ。

リーダーは他の誰かに任せるのではなく、自分から部下に交代の理由を伝えるべきです。自ら決断し、その知らせを伝える責任を引き受ける胆力がないのなら、リーダーの資格はありません。

正しい人材をバスに乗せ、最適な人を重要なポストに置くことで、企業は飛躍的に成長します。コアバリューに反したり、実力が足りなくなった創業メンバーを重要なポストにつけていると、優秀なメンバーがバスから逃げ出します。正しい人々が乗るべきバスを用意することがリーダーの重要な仕事になるのです。

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