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2030年 ビジネスの未来地図 これからを生き抜くための戦い方
著者:夫馬賢治、石井菜穂子ほか
出版社:PHP研究所
本書の要約
私たちの経済システムが地球環境に与えてきた負荷は臨界点にあり、それを超えると不可逆的変化を起こしてしまいます。あと10年の間にそれを阻止できなければ、その後、何をしようと回復不能になります。企業が環境対策を行わなければ、顧客はやがてその製品を買わなくなります。SXを意識した経営を企業は行うべきです。
SXの時代に企業は何をすべきか?
環境対策をしない企業は顧客を失う。あらゆる産業が転換を迫られている中、日本は世界の潮流に乗り遅れた。(夫馬賢治)
今後、経営者が意識すべきキーワードはSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)だと言われています。持続可能な社会を実現するために、サステナビリティを軸にした経営改革を行うことが経営者に求められています。今後、起こりうる変化を先取りし、環境保護のために何をすべきかを明確にし、経営を行う必要があります。
「Sustainable Japan」編集長の夫馬賢治氏は、環境対策を行わない企業は、顧客を失うと指摘します。これ以上の地球温暖化を防ぐためには、二酸化炭素の排出を減らすしかありません。この数年で、世界中のグローバル企業や機関投資家が、気候変動対策として、二酸化炭素削減に一斉に舵を切っています。
この動きによって、自動車産業、製鉄、化学など様々な産業で、既に変化が起こり始めています。製品使用時に二酸化炭素を排出しないだけでなく、製品の生産過程でも二酸化炭素を排出しないことが求められ、その要請に応えられない企業は、やがて顧客を失っていくことになります。
特に、Z世代はサステナブルな意識が高く、環境経営を行っている会社の商品を買っています。今後、このZ世代がマーケットの中心になれば、環境経営を行っていない企業の行く末は、暗いものになります。
日本でも環境経営を進める動きが出始めています。例えば、日本コカ・コーラが2030年までにすべてのペットボトルを再生プラスチックに切り替える計画を発表しています。サントリー伊右衛門はラベルレスのペットボトルを販売し始めています。
将来的にペットボトルや洗剤のボトルを再生プラスチックやバイオプラスチックに転換しなければ、顧客から支持されなくなります。飲料や食品メーカーが変われば、石油由来のプラスチックをつくってきた化学メーカーも、再生プラスチックを作らなければ、存続が厳しくなります。
今後、二酸化炭素削減のための新技術や、それに適応したビジネスをする企業は成長が期待されます。廃棄物を減らし、資源を循環させるかに着目したビジネスモデルが、今後伸びていくはずです。
サーキュラーエコノミーを取り入れた企業が成長し、それ以外の企業は衰退していきます。最近になって、SXを意識した日本の化学メーカーは、再生プラスチックの開発では後発で、海外の先行企業に追いつくためには、今後相当の投資が必要になります。
気候変動や業界を超えた産業転換が進む中で、これからの技術者には、社会の変化に目を向け、先を読む力を身につけることが求められていきます。
アメリカやヨーロッパは、ここ数年で無農薬農業が当たり前になっています。穀物メジャーや大学などの研究機関が、土地を痩せさせないための施策を実施していますが、日本はこの分野でも出遅れています。
気候変動による降水パターンや気温変化を予測し、撒く水の量をどのように変えるか、温度管理をどうしたらいいか、それらの変化を見据えて今やるべきことは何か、といったことをAI(人工知能)を活用すれば、農家が把握できます。世界最大手の総合化学メーカーであるドイツのBASFはこれを行い、日本のJAでの導入が決まったと言います。
日本全国の農家のデータは、様々な事業や製品を開発するヒントとなりますが、日本メーカーが海外製品に遅れをとると、貴重なデータが全て流出してしまいます。データが全部海外に溜まっていけば、日本企業やアグリテックのベンチャーの事業機会を減らしてしまいます。
「地球」を壊さないための4つの「経済システム」変革
多くの識者は、2030年が地球上に生きる私たちにとって1つの「リミット」になると考えています。私たち人類は、過去1万2000年の完新世の間、安定的な地球システムに支えられ文明を発展させてきました。しかし、「経済システムと地球システムとの衝突」する「人新世」の時代が続くことで、地球環境が悪化しています。
私たちの経済システムが地球環境に与えてきた負荷は臨界点にあり、それを超えると不可逆的変化を起こしてしまいます。あと10年の間にそれを阻止できなければ、その後、何をしようと回復不能になると言うのです。
気候変動と脱炭素だけでなく、自然率の1000倍の速度で進む生物多様性の喪失、海洋汚染や土壌砂漠化など、いくつもの難問を私たちは抱えています。
私たちの経済システムが、私たちの繁栄の基盤である地球を壊しかけていることを強く認識し、それを食い止めるため、経済システムを転換しなくてはなりません。(石井菜穂子)
私たちの地球を破壊させないためには、経済システムの変革が欠かせません。東京大学の理事・教授である石井菜穂子氏は、4つの変革を行うべきだと主張します。
①エネルギーシステム
カーボンニュートラル、「脱炭素社会」の構築は喫緊の課題。
②「都市のあり方」
現在、世界の総人口の約半数が都市に住んでいて、30年後には約70%になると予測されています。経済活動も約80%が都市に集中しています。都市をどのように作り、住むかが、地球環境の将来に大きな影響を与えます。
③生産と消費のシステム
地球資源があたかも無限であるかのように採掘され、商品として生産され、消費し切れなければ廃棄されるという直線型のシステムを、循環型に変える必要があります。
④食糧システム
食糧生産は、森林の農地転用を通じて生物多様性喪失の最大の原因となっています。温室効果ガスの25%を生み出し、水資源の7割を蕩尽しています。
生活者が持続可能社会を意識することで、購買行動が変わります。顧客が変わり、企業がSX経営を取り入れることで、経済システムも変わります。ひとりひとりが環境を意識し、行動を変えることが、地球環境によい影響を及ぼしますが、もはや先延ばしは許されなくなっています。
今日は本書の中から、気候変動のリスクについて紹介しましたが、これ以外にも少子高齢化や働き方の変化が予測されています。2030年から逆算し、現代を捉え直すことで、今、経営者が何をすべきかが見えてきます。
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