超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条 (フィリップ E テトロック, ダン ガードナー)の書評

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超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条
フィリップ・E・テトロック, ダン・ガードナー
早川書房

本書の要約

超予測者は、一般人が予測すべき事象そのものに注目する傾向があるのに対し、事象と距離を置き、それを同じような現象の一つの事例に過ぎないととらえることで、より正確な予測を行うことができます。また、自分の見解をほかの人々の見解などと比較・統合することで、より幅広い視点から事象を捉え、より正確な予測を行うことができます。

予測ができる人と予測できない人の違いとは?

超予測力には柔軟で、慎重で、好奇心に富み、そして何より自己批判的な思考が欠かせない。集中力も必要だ。卓越した判断を導き出す思考とは、楽にできるものではない。かなりの一貫性をもって卓越した判断を導きだせるのは意志の強い者だけであり、われわれの分析でも優れた実績を出す人の予測因子として最も有効なのは「自らを向上させようとする強い意志」であることが繰り返し示されている。(フィリップ・E・テトロック, ダン・ガードナー)

「専門家の予測精度はチンパンジーのダーツ投げ並みのお粗末さ」という調査結果で注目を浴びた本書の著者フィリップ・E・テトロックは、一方で実際に卓越した成績をおさめる「超予測者」が存在することも知り、その力の源泉を探るためのプロジェクトを開始しました。

テトロックは専門家の予測が限定的であることに疑問を持ち、なぜ一部の人々が驚くべき的中率を示すことができるのかを解明するため、その秘密を探るべく研究を進めました。彼のプロジェクトは、超予測者と呼ばれる人々の予測能力を分析し、その背後にある要素を明らかにすることを目指したのです。

プロジェクトは、データ分析、認知科学、統計学などの分野からの専門家チームを結集し、超予測者たちの予測方法や思考プロセスを徹底的に調査したのです。彼らは、過去の予測成績を分析し、特定のパターンや戦略が存在するかどうかを探求しました。

その結果、超予測者たちが卓越した成績を収める要素のいくつかが浮かび上がりました。彼らは、幅広い知識を持ち、多くの情報源からのデータを統合する能力が高いことが示唆されました。また、直感や洞察力に頼るだけでなく、統計的手法や予測モデルを活用する傾向もありました。

さらに、超予測者たちは、過去の予測の正確さを反省し、フィードバックを受け入れる柔軟性を持っていました。彼らは自己評価を客観的に見つめ直し、継続的な学習と成長を追求していました。 

超予測力を持つためには、いくつかの重要な要素が必要です。以下の要素を身につけることで、未来に対する感度が高まります。
・柔軟で慎重な思考
超予測力を持つ人は、固定観念にとらわれず柔軟な思考を持ち、異なる視点や情報を考慮します。また、慎重に分析し、データや情報の信頼性を確認することで、予測の質を向上させます。

・好奇心と情報収集
超予測力を持つ人は、好奇心に富み、広範な知識と情報を積極的に収集します。さまざまな分野や業界の動向やトレンドを把握し、それらを予測に活かします。

・自己批判的な思考
超予測力を持つ人は、自身の予測や意見を客観的に見つめ直し、自己批判的な思考を行います。失敗や誤りから学び、改善する意欲を持ちます。

・集中力と注意力:
超予測力を発揮するためには、高い集中力と注意力が必要です。情報の洪水の中で重要なポイントを見逃さず、的確な予測を行うために集中力を維持することが重要です。 強い意志と自己向上の意欲: 超予測力を持つ人は、自らを向上させるための強い意志を持ちます。常に学習し成長しようとする姿勢を持ち、自己啓発に努めます。

超予測者の3つの考え方

今後の予測においては、コンピュータによる予測と主観的な判断を組み合わせることが重要です。

コンピュータによる予測と主観的な判断を組み合わせることで、互いの利点を生かし、予測の精度と洞察力を向上させることができます。このような組み合わせは、現代の複雑な問題や不確実な状況に対応するために重要であり、将来の予測においてますます重要性を増すことが予想されます。

予測力に優れた人は、必ずしも知性やIQが高いわけではありません。むしろ、情報をどのように活用するかが重要です。 優秀な予測者は、以下の3つの考え方を持っています。
①フェルミ推定
予測する問いをいくつかの要素に分解して結論を導く手法です。

②外側の視点
統計的事実に基づく判断が重要です。統計を基準点として、そこに他の詳細要素をもとにした判断を加えながら予測することで正確性が増すのです。

③知的柔軟性
多角的な視点を取り入れることも重要です。反対意見も尊重し、必要なら自分の判断材料に加える、意見を変えることや予測の修正を厭わない、などの姿勢が大切です。 これらの考え方を参考にすることで、より正確な予測を行うことができるでしょう。

高い予測力を身につけて維持するためには、キャロル・S・ドゥエックが提唱する成長マインドセット(しなやかなマインドセット)が不可欠です。成長マインドセットを持つことで、予測力を身につけるだけでなく、維持することも可能となります。

柔軟な思考と学習意欲を持ち、失敗を受け入れながら成長することで、より高い予測力を発揮できるでしょう。成長マインドセットは、予測力の向上だけでなく、人生の様々な分野での成果を促す価値ある思考スタイルです。

その上で、予測の質を高めるためのアプローチを紹介します。まず第一に、失敗した時の批判を恐れず、リスクを取ることが重要です。予測は確実ではないため、間違う可能性もあることを認識し、過度な保守性や曖昧さを排除して具体的な予測を行うことが求められます。

また、予測対象を細かな関連する質問に分解し、それぞれの要素について予測を行うことも重要です。複雑な現象や出来事は多くの要素から成り立っており、それぞれの要素に対して個別の予測を行うことで全体の予測の精度を向上させることができます。 さらに、予測の評価に真剣に取り組むことも重要です。

予測を行った後は、実際の結果と比較し、どれだけ的中したかを客観的に評価します。失敗した場合でも、その原因を分析し、フィードバックを受け入れることで次の予測に生かすことができます。

予測の質を高めるためには、以上のアプローチに加えて、以下の点にも注意することが重要です。
・質の高い情報の入手
予測に必要な情報は正確かつ信頼性の高いものであることが重要です。信頼できる情報源やデータを活用し、予測の根拠を慎重に選びましょう。 専門知識の獲得: 予測対象に関する専門知識を積極的に学び、理解を深めることで予測の精度を向上させることができます。関連する分野の専門家や研究を追跡し、最新の情報にアクセスすることも重要です。

・チームワークと議論
複数の視点や意見を取り入れることで予測の偏りを防ぎ、より総合的な予測を行うことができます。他の専門家やチームメンバーとの議論や意見交換を通じて、互いの予測を高め合うことが重要です。

・統計的手法と予測モデルの活用:
統計的手法や予測モデルを活用することで、データに基づいた客観的な予測を行うことができます。適切なモデルの選択や分析手法の適用に注意し、予測の精度向上に活用しましょう。

これらのアプローチを組み合わせて予測の質を高めることで、より正確で有用な予測が可能となります。しかし、予測は常に不確実性を伴うものであり、限界も存在します。そのため、予測結果を受け入れる際には常に注意と柔軟性を持つことも大切です。

予測力というのは「持っているか、いないか」が決まっている才能ではなく、育てることのできる才能だからだ。

予測力は、知的な能力や柔軟な思考、努力と学習への意欲など、個人の特性や努力によって伸ばすことができます。 状況によって、また一定のレベルまでであれば、将来を予測することは可能です。予測力に必要な能力は、情報を分析し、トレンドやパターンを発見する知的能力や、異なる視点を統合する柔軟な思考、常に学び続ける努力を惜しまない姿勢などです。これらの能力は、誰でも持つことができるものであり、個人の意欲と努力次第で伸ばすことができます。

予測力を育てるためには、楽観的な視点で可能性を見つけることと同時に、自身の予測を常に懐疑し、改善する意欲を持つことが重要です。

超予測者のための10の心得と超予測者は永遠のベータ

著者は最後に「超予測者のための10の心得」をまとめています。これを実践するだけで予測力を強化できます。
①トリアージ  困難すぎる問題に時間をかけず、努力が報われそうな質問に集中する。
②一見手に負えない問題は、サブ問題に分解し、仮定や推測によって見積もる。
③外側と内側の視点の適度なバランスを保て。
④エビデンスに対する過少反応と過剰反応を避けよ。
⑤どんな問題でも自らと対立する見解を考えよ。
⑥問題に応じて、不確実性はできるだけ細かく予測しよう。
⑦自信過少と自信過剰、慎重さと決断力の適度なバランスを見つけよう。
⑧失敗したときは原因を検証する。ただし後知恵バイアスにはご用心。
⑨仲間の最良の部分を引き出し、自分の最良の部分を引き出してもらおう。
⑩ミスをバランスよくかわして予測の自転車を乗りこなそう。

「挑戦、失敗、分析、修正、再挑戦」というサイクルを繰り返し、努力し続けることは、予測の精度を向上させるために重要です。このサイクルによって、予測の誤りや限界を特定し、改善点を見つけることができます。失敗を経験することで学び、得られた教訓を次の予測に反映させることができます。

また、超予測者は「永遠のベータ」であると言われています。これは、常に改善と学習を追求し、自らを磨き続ける意志と姿勢を持っていることを意味します。予測力を高めるためには、自己満足に陥らず、常に向上心を持ち、新たな情報や手法にアンテナを張り続けることが必要です。

予測の精度を上げるためには、過去の経験や失敗を反省し、分析することが重要です。データの収集や統計的手法を活用し、予測モデルの改善を行うことも有効です。また、他の専門家や意見リーダーとの議論や情報交換を通じて、自身の予測を洗練させることも重要です。

予測の精度を向上させるためには、自己啓発やスキルの向上にも積極的に取り組む必要があります。新たな知識や技術を学び、分析力や判断力を磨くことで、予測の精度が高まります。また、持続的な努力や継続的な学習を通じて、自身の予測能力を高めることができます。

私たちが自分自身の予測力を向上させるとともに、政治家、評論家、学者といった権威的立場の人々の予測を盲目的に信じるのではなく、「この人は過去にどの程度正確な予測をしてきたのか」という問いを立てることが重要です。

政治家やマスメディアの情報を鵜呑みにするのではなく、彼らの発言を客観視することで、痛い目に合わずにすみます。 これにより、表面的な論議を避けることができ、予測とその検証の過程を通じて、社会全体がより賢明になることを可能にします。 

超予測者は、予測の精度を向上させるために絶えず努力し、自らを磨き続ける存在です。彼らは決して満足せず、常に新たな課題に挑戦し、自己成長を追求する姿勢を持っています。このような姿勢と意識を持つことで、予測の精度を高めることができるでしょう。


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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