なぜ、アルコールでは幸福になれないのか?悪習慣の罠 (山下あきこ)の書評

photography of person holding glass bottles during sunset

悪習慣の罠
山下あきこ
扶桑社

本書の要約

快楽と幸福は基本的に異なるものだからです。快楽は一時的な喜びを与えますが、長期的な幸福感には必ずしもつながりません。それに対して、幸福は持続的な満足感をもたらし、生活の質を向上させるものです。 この快楽と幸福の違いを理解することが、人生をより良いものにする第一歩です。

快楽と幸せは違う!

その幸せをもたらすように見えるものは、どれも私たちの死因、殺し屋なのだ。それでも、優しい顔をして私たちを誘惑する。(山下あきこ)

人生をより良くするためには、習慣を変えることが重要です。しかし、多くの人々は悪習慣に悩んでいることでしょう。特に依存性のある物質を摂取し続けることは、長期的な健康と幸福にとって低い確率となるでしょう。

「快楽」と「幸せ」は異なるものです。快楽は一時的な満足感をもたらし、さらなる欲求を生み出し、大切なことを後回しにしてしまうことで人々を変えてしまう傾向があります。

現代社会では、私たちは強い刺激に常にさらされています。その結果、刺激がない状態が苦痛に感じられるようになってしまったのです。歩くときに音楽を聴き、座るとすぐにスマートフォンを見るなど、単純な行為を行うことが難しくなっています。これらの行為が退屈で我慢できないようになってしまったのです。

ドラッグ、ゲーム、オンラインカジノ、甘いお菓子、強い酒など、刺激を求める人と刺激を与える産業は互いに快楽のレベルを高め合い、依存症が増加しています。

幸福には大きく分けて、2つの種類があります。
①ヘドニア(短期的な幸せ)
これは快楽とも言えます。酒、タバコ、甘いもの、炭水化物、ギャンブル、恋愛などは幸福感をもたらすと思われがちですが、実際には高揚感が伴い、すぐに消えてしまいます。

②ユーダイモニア(長期的な幸福)
この種類の幸せは人生全体を通じて続くものです。親切さ、平和、良好な人間関係、信頼、愛情、健康などが長期的な幸福をもたらしてくれます。

著者はヘドニアは幸せではなく、「快楽」だと捉えるべきだと言います。快楽と幸せを混同している限り、悪習慣の罠から抜け出すことはできません。「お酒を飲んで幸せ、タバコを吸って幸せ」と言っている限り、「お酒のない人生は不幸、タバコのない人生は不幸」となってしまいます。

私は44歳までアルコールに依存していました。当時の私はまさにヘドニア的な幸せ(快楽)を追求していました。しかし、アルコールでは幸福になれないと気づいてから、自分の人生を棚卸し、やりたいことを書き出しました。著者になる、社外取締役になるなどの夢を書き出すことで、自分の思考と行動を変えることができ、アルコールをやめることができました。

断酒後、私は自分の人生を見つめ直し、夢や目標を明確にしました。それにより、思考や行動が変わり、アルコールをやめることができました。そして、夢が叶うようになり、今ではユーダイモニアのある充実した生活を送ることができています。

早く気づかなくてはいけない。本当の幸せは、快楽を得た先にあるのではなく、「今、ここ」にあることを。

真の幸せは快楽の追求ではなく、「今、ここ」にあることを理解することです。幸せは、現在の瞬間に集中し、自分自身や周囲の環境に敏感になることで見つけられます。

快楽の一時的な刺激にとらわれる代わりに、深いつながりや喜びを感じることに重点を置くことが大切です。自分自身や他の人々との関係を大切にし、自然や芸術、思考、創造性に没頭することで、本当の幸せを見出すことができるでしょう。私は大量に本を読み、ブログを書くことに集中することで、人生の可能性を広げてきました。

快楽に対する依存を克服し、「今、ここ」に意識を向けることで、より豊かで充実した人生を築くことができるはずです。

快楽を追求するのをやめ、幸福貯金を貯めよう!

今の幸福レベルが高いなら、快楽を求める必要はないだろう。人間関係が満たされ、社会に貢献し、今ある環境に感謝をし、身体的に健康で、金銭も余裕があり、「ああ人生は幸せだ」と毎日思って過ごしている人は、ドラッグでハイになる必要なんてないはずだ。 つまり、日ごろから「幸福貯金」を貯めておけば、慌てて快楽で埋め合わせなくても良いのだ。だが、「幸福貯金」が底をついたら、快楽で借金しなくてはいけない。

日々の生活を幸せだと感じている人々は、人間関係の充実、社会への貢献、現在の環境への感謝、体の健康状態、そして経済的な余裕といった要素を持っています。これらが揃っている場合、快楽を追求する必要はなくなると考えられます。 著者はこの状態を「幸福貯金」と表現しています。

私たちは日常生活の中で、「幸福貯金」を少しずつ積み重ねています。良好な人間関係や社会貢献、感謝の心、健康な体、経済的な安定といった要素が「幸福貯金」の一部となり、私たちの生活を豊かにしてくれます。 この「幸福貯金」が豊富であればあるほど、アルコールに依存したり、過度な娯楽を追求したりするような特別な快楽を求める必要がなくなります。それは、日常の中に既に十分な幸せを感じることができているからです。

しかし、「幸福貯金」が底をついてしまったとき、人は快楽を追求するようになるかもしれません。アルコールのような快楽は一時的な幸せを与えてくれますが、その一方で「借金」のようなものを背負います。

私がアルコールに依存していた頃は幸福貯金がほとんどなく、借金生活を送っていました。今は充実した生活を送っているので、幸福貯金が積み上がっています。私たちは日々の生活で「幸福貯金」を増やすよう努めるべきです。そうすれば、特別な快楽を求めることなく、日々の生活そのものが幸せであると感じられるでしょう。

このブログでもおなじみのカリフォルニア大学の心理学教授ソニア・リュボミアスキーは、幸せがずっと続く12の行動習慣の中で、幸福度を高める行動を12個紹介しています。

①感謝の気持ちを表す
②楽観的になる
③考えすぎない、他人と比較しない
④親切にする
⑤人間関係を育てる
⑥ストレスや悩みへの対抗策を練る
⑦人を許す
⑧熱中できる活動を増やす
⑨人生の喜びを深く味わう
⑩目標達成に全力を尽くす
⑪内面的なものを大切にする
⑫身体を大切にする──瞑想と運動

幸福学で有名な前野隆司氏の「幸せの4因子」は、人々が幸せを感じるために必要な心の状態を表す考え方です。具体的には、以下の4つの要素からなります。
・やってみよう因子
自分自身に新たな挑戦をする意欲や能力。新しい経験を通じて学び、成長することで、人は喜びや満足感を得ることができます。

・ありがとう因子
日常生活の中で感じる感謝の気持ちを表しています。他人からの援助や支持、自分が得ている恩恵に感謝の意識を持つことで、幸せを感じることができます。

・なんとかなる因子
困難な状況に直面したときに、それを乗り越える自信や希望があれば、人生を明るくできます。自分自身の能力や状況を信じ、前向きな態度を保つことで、ストレスを軽減し、幸せを感じることができます。

・ありのまま因子
自分自身を受け入れ、現状に満足する能力。自分自身の長所と短所を認識し、自分を変える必要性から解放されることで、人はストレスを軽減し、幸せを感じることができます。

これらの4つの因子は、私たちが日常生活で幸せを感じるための重要な要素であり、これらを意識し、向上させることで、幸せな生活を送ることができると考えられています。

ハーバード大学の心理学博士であるタル・ベン・シャハーは、「幸せの4つのモデル」を提案しています。このモデルは、2つの軸を用いて構築されており、縦軸には将来の利益と不利益があり、横軸には現在の利益と不利益が存在します。

まず、左下の領域は悲観的なタイプで、現在も将来も不利益を感じている状態を指します。このタイプの人々は、現在の喜びを味わうことも、将来に希望を抱くこともできません。

次に、左上の領域は出世競争による未来の利益がある一方で、現在は不利益を感じている状態を表します。そのため、このタイプの人々は他者を下に見る働き方をしており、人間関係が悪化し、現在の幸福感を得ることができません。

右下の領域は、現在の快楽を優先し、将来の困難にもかかわらず楽しむタイプを示します。この状態にある人々は、依存関係に陥っていることが多く、快楽を追い求めることに集中しています。

最後に、右上の領域は至福のタイプであり、将来の利益と現在の利益の両方を享受することができます。これは理想的な状態であり、今を大切にしながらも将来の幸福のために行動することができます。 この至福の状態を目指すことが、シャハー氏による提案のゴールになります。

快楽と幸福は基本的に異なります。快楽は一時的な喜びを与えますが、長期的な幸福感には必ずしもつながりません。それに対して、幸福は持続的な満足感をもたらし、生活の質を向上させるものです。 この快楽と幸福の違いを理解することが、人生をより良いものにする第一歩です。

快楽と幸福を見分けられない限り、「幸福貯金」は増え続けることはありません。 だからこそ、今すぐ行動を起こしましょう。悪習慣の罠から抜け出すことは、誰でも、何歳からでもできるのです。

日々の生活で意識的に幸福を追求する行動をとることで、私たちの「幸福貯金」は必ず増えていきます。そして、人生の最後には、温かい幸福を感じられるでしょう。アルコールなどに依存するのをやめ、自分を幸せにする行動の時間を増やしましょう。


 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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