「協力」の生命全史―進化と淘汰がもたらした集団の力学(ニコラ・ライハニ)の書評

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「協力」の生命全史―進化と淘汰がもたらした集団の力学
ニコラ・ライハニ
東洋経済新報社

本書の要約

ヒトは協力することで進化してきました。協力は、現在私たちが直面している地球規模の問題を解決するための鍵となります。しかし、協力の能力が私たちの衰退を招く可能性もあることを忘れてはなりません。私たちは、協力のメリットとデメリットを理解し、適切に利用していく必要があります。 

人はなぜ協力するのか?

協力は私たちの歴史を形づくってきた要素の一つだが、未来を築く要素でもある。(ニコラ・ライハニ)

ニコラ・ライハニは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの進化論・行動学の教授です。彼は、協力の進化を研究し、そのメカニズムを解明することに貢献しています。 ライハニは、協力が進化した理由は、協力することで、個体は生存と繁殖の可能性が高まるためであると主張しています。

人間の歴史を通じて、我々が達成してきたすべての偉業には、協力が必要だったと言えます。そして、もっと広い視点で見れば、協力がなければ、地球上に生命そのものが誕生しなかったかもしれません。 協力は、生命の誕生と発展に不可欠な要素です。

もし協力が存在しなければ、私たち自身をはじめとするあらゆる生物が、今の形で存在することはありませんでした。協力の力は、私たちが思っている以上に私たち自身の根底に影響を及ぼしています。

実際、あなた自身が存在するためには、あなたの体の中の無数の細胞が協力し合う必要があります。これらの細胞は、それぞれが持つゲノム、つまり遺伝情報を共有し、一緒に働き、あなたという個体を形成しています。 それぞれの細胞内では、無数の遺伝子が協力し合っています。これらの遺伝子は、各々が持つ特性や能力を結集して、あなたの体をより健康で、より機能的に保つために努力しています。

例えば、狩猟採集社会では、協力することで、より多くの獲物を捕まえることができ、食べ物に困ることなく生きていくことができます。また、協力することで、危険を回避したり、敵を倒したりすることもできます。

協力が進化するメカニズムには、親族選択や直接相互利益の獲得などがあります。親族選択とは、血縁関係のある個体同士が協力することで、自分の遺伝子を次世代に残す確率を高めることです。例えば、兄弟や親子などの近親者同士が協力することで、自分の遺伝子が継承される可能性が高まります。

また、直接相互利益の獲得とは、協力することでお互いに利益を得ることです。例えば、狩猟採集社会では、仲間と協力して獲物を捕まえることで、食べ物を確保できるだけでなく、危険からも守ります。このような協力行動は、個体の生存と繁殖の成功に直結しています。

さらに、ライハニは、協力の進化には文化や社会的な要素も関与していると指摘しています。人間は社会的な生物であり、文化や社会的なルールに従って行動する傾向があります。社会的な協力は、個体の社会的地位や信頼関係の構築にも関わっており、個体の生存と繁殖の成功に大きな影響を与えます。

協力は生命の基盤であり、私たちが日々の生活を送るうえで重要な役割を果たしています。この視点を忘れず、私たちは協力の価値を日々の生活にも取り入れることで、より豊かで有意義な人生を送ることができます。

人間は、家族や友人だけでなく、知らない人や一度きりの出会いの人とも協力できる能力を持っています。このような傾向が、人間の社会的な性質を支え、人類の地球上での成功に寄与してきました。

人間は、類人猿と比べて非常に協力的な生き物です。これは、私たちが集団で狩りをしたり、子育てをしたり、食料や水を集めたりするために協力する必要があったためです。また、私たちは、自然災害や病気などの脅威から身を守るためにも協力する必要がありました。そのため、私たちは、相互依存によって心理が形づくられ、非常に素晴らしい協力能力を獲得しました。

しかし、人間の協力能力には、リスクも伴っています。例えば、私たちは、社会的比較によって、自分自身を他人と比べて劣っていると感じてしまうことがあります。

また、パラノイア(妄想症)によって、他人を敵対視してしまうこともあります。これらの問題は、私たちの心の病を招く可能性もあります。 協力は、現在私たちが直面している地球規模の問題を解決するための鍵となります。しかし、協力の能力が私たちの衰退を招く可能性もあることを忘れてはなりません。私たちは、協力のメリットとデメリットを理解し、適切に利用していく必要があります。 

仲間とのつながりがヒトを幸せにもたらす?

人間は1人で生まれるわけではない。私たちは仲間といっしょにいるのが好きだし、それだけでなく、仲間が必要だ。社会的なやり取りから排除されていると感じると、脳内で痛みのシグナル(手をやけどしたり骨を折ったりしたときに発せられるのと同種のシグナル)が発せられる。また、孤独は睡眠障害から、免疫機能の低下、死亡リスクの増大まで、さまざまな隠れた副作用と関連がある。連帯感は私たちのなかにあまりにも深く組み込まれていて、集団生活の利点を客観的に評価するのが難しいほどだ。

人間は社会的な生き物であり、孤立した存在ではありません。私たちは社会的な関係の中で育ち、発展します。このような関係は、私たちが集団を形成し、一緒に時間を過ごすことを好む存在であることを示しています。これは単に好みの問題だけでなく、生存と成長のための深く根ざした要素であり、人間が社会的な生き物である証拠でもあります。

孤立や孤独は、精神的な苦痛だけでなく、健康上のリスクをもたらす可能性があります。孤立は睡眠障害や免疫機能の低下などの深刻な副作用につながることがあります。これらの事実は、人間が他人とつながり、共に生きていくことの重要性を強調しています。

私たちの生命と健康は、連帯感に深く組み込まれているため、集団生活の利点を客観的に評価することは難しいかもしれません。しかし、その重要性は疑いようのない事実です。

人類の進化の歴史を辿ってみると、一つの明確な結論に行き着きます。それは、私たちが生き延びるためには協力が必要不可欠であるという事実です。この結論を利用すれば、東アフリカの大地溝帯で人類と共に他の類人猿がほとんど存在しないという化石記録の謎を説明することができます。

大型類人猿が大地溝帯のような厳しい環境ではなく、季節の変化が少なく、食物が豊富な環境に住んでいるのは、彼らが生き延びるために極端な協力行動をとる必要がないからだと考えられます。つまり、生存環境が厳しくなるほど、生き物はより高度な協力行動を発展させていくのです。

人類の進化と生存のための協力行動の歴史は、私たちがいかにして現在の社会性を形成したかを示す一例であり、その進化の過程は、私たちが日々の生活の中で他者とどのように関わるべきかを理解する手助けにもなります。

人間の社会性と連帯感は、生活の質と幸福感を向上させる重要な要素です。他人との関係を築き、維持することは、健康で充実した人生を送るための重要な一歩となるでしょう。私たちはお互いに支え合い、共に成長し、幸せを分かち合うために、社会的なつながりを大切にするべきです。

ヒトはなぜ集団の利益を重視するのか?

ヒトはもっと根本的な点でほかの生物と異なる。私たちは日々の暮らしで自分と血縁のない人々を自発的に助ける。二度と会わないと思われる人にも手を差し伸べるし、何の見返りも得られない場面でも手助けする。また、多数の証拠から、ヒトは地球上で他者の痛みを感じる能力、そして可能ならばその痛みを和らげようとする能力を備えた唯一の種であるとも考えられる。

人類が協力的に繁殖を行なってきた歴史があるから、人間の性質が進化したと考えられています。このような性質は、他者に手を差し伸べる親切心、寛容性、意欲など、家族で生活する上で役立つものと思われます。

人類が進化してきた過程で、協力は非常に重要な要素でした。協力をすることで、生活の質を向上させることができました。例えば、狩猟や農業の分野では、協力して仕事を進めることでより多くの食料を確保することができました。また、協力することで、身の安全を守ることもできました。集団で行動することで、捕食者から身を守ることができ、生存率を高めることができたのです。

さらに、家族や共同体での協力は、社会的なつながりを築くためにも重要でした。家族や共同体との協力を通じて、相互の信頼関係を築くことができました。信頼関係があることで、より円滑なコミュニケーションや協力が可能になります。また、協力を通じて、共同体全体の利益を追求することができました。

個々の利益を超えて、共同体全体の繁栄を目指すことができたのです。 さらに、人間の協力的な性質は、文化や知識の伝承にも関係しています。協力をすることで、知識や技術を共有し、進歩していくことができました。また、協力を通じて、文化や価値観を形成し、継承していくことも可能になりました。このような協力的な性質があったからこそ、人類は文明を築いてきたのです。

私たちは、日常生活の中で他者との関係を築くことに多くの労力を注いできました。その中には、初対面の人々との関係も含まれています。これは、私たちが将来再び会うことがないかもしれない人々ですが、それでも私たちは彼らを信頼し、助け合うことを本能的に行ってきました。

この信頼関係を築くことは、私たちの社会を支える重要な要素です。信頼があるからこそ、私たちは他者に対してオープンに接し、協力し合うことができます。信頼は、個人と個人、個人と組織、さらには国家間の関係においても不可欠です。 信頼を築くためには、相手を理解し、共感することが重要です。

エンパシー(共感力)を持つことで、他者の立場や感情を理解し、彼らとのつながりを深めることができます。また、自制心を持つことも大切です。自分の考えや感情をコントロールし、相手に対して誠実であることが信頼関係の構築に役立ちます。

私たちが日常生活で遭遇する様々な協力に関する問題は、「社会的ジレンマ」というフレームワークで考えることができます。これらの問題は「社会的」であるという特性を持つのは、私たちの決断が他人に影響を及ぼすからです。

一方で、これらの問題が「ジレンマ」であるのは、個人の利益と集団の利益が常に一致するわけではないからです。 このような個人と集団の間の利益の対立という状況からは、一見、協力行動が生じるとは思えないかもしれません。ところが、私たちは時折、自己の利益を犠牲にしてでも他者の利益を高める行動、つまり無私的な行動を取ることがあります。

これは、私たちが個人の利益だけでなく集団の利益も考えて行動することが、長期的には個人の幸福にも寄与するという認識が根底にあるのかもしれません。そしてこれが、私たちが社会的な生き物であり続ける理由であり、また私たちの社会が持続可能である理由でもあります。

利他行動が集団を進化させる理由

利他行動によってその当人に利益がもたらされる可能性があるという考えを受け入れることはできる。空腹などの感情を抱いたり、セックスが気持ちいいと感じたりするような心理機構が進化で形づくられたように、他者の役に立つ行動や親切な行動、道徳的な行動のもとになる動機も、おそらく進化で形成されたのだろう。それによって、私たちの遺伝子の利益となる行動を楽しむようになる。

私たちは容易に、利他行動がその行動を起こす個人にも利益をもたらす可能性があるという考えを受け入れることができます。これは進化の観点から理解することができます。 たとえば、私たちは空腹を感じたり、性的な快感を経験したりする心理機構が、生存や繁殖といった遺伝子の利益につながる行動を促すように進化によって形成されたと理解しています。

同様に、他者を助ける行動、親切な行動、道徳的な行動を起こす動機も、おそらくは進化の過程で形成されたと考えることができます。 その結果、私たちは自分自身の利益だけでなく、他者や集団全体の利益につながる行動を享受することができるのです。これは、個々の行動が集団全体の成功に寄与するという社会的な生物である人間の特性を強調しています。

進化の視点から見ると、利他行動は個々の生存と繁殖に寄与するだけでなく、集団全体の成功にも寄与する重要な要素となります。これは私たちが社会的な存在であり、そして私たちの行動が個人だけでなく他者にも影響を及ぼすという事実を強調しています。

人間は社会的な生物であり、他者との関係を築くことが生存に不可欠です。他者の労力に頼ることで、自分の生存と繁殖の成功を保証することができるのです。しかし、他者の労力を利用することは公平である必要があります。公平であると評判を得るためには、相手を観察し評価する能力が必要です。

このような社会的な性質は、人間が進化の過程で獲得したものと考えられます。自分自身をよく見せることや相手を観察し評価することで、他者との関係を円滑に築くことができます。これにより、生存に欠かせない危険な冒険にも付き合う仲間を得ることができます。

人間の進化過程においては、社会的能力の発展が重要な位置を占めてきました。自然環境におけるさまざまな課題—食料や水の供給不足、危険な捕食動物からの脅威—は、協力によって軽減されることができました。

しかし、その結果として、他の人間が新たな挑戦となりました。自然との闘争は次第に影を潜め、代わりに人間同士の相互関係が重要性を増していきました。 このような状況下で、進化は私たちの社会的スキルを向上させました。それは自分自身の社会的支援ネットワークの構築と管理、出会った他者との関係や同盟の観察、そして何よりも重要な、社会的脅威の検出と回避の能力です。

この脅威の検出システムが効率的に機能することによって、自分自身が危険な状況に陥ることを避けることができます。しかし、その検出が不十分な場合、自分自身が社会的に危険な立場に置かれる可能性があります。

例えば、食料不足や水不足などの困難に直面した際、単独では解決が難しい場合も、他の人々との協力によりこれらの問題を克服することができました。同様に、危険な捕食動物との対処も、協力によって可能になりました。 人間は社会的な存在であり、私たちの生活は他人との関係性に大きく影響を受けています。

自分自身の社会的支援ネットワークを構築することにより、私たちは個々の困難を乗り越え、豊かな生活を実現できるのです。他者との交流を通じて、我々は互いに知識や経験を共有し、助け合うことができます。

人類の物語における協力の役割は、ほとんどおとぎ話のようでもある。協力をうまく利用すれば富をもたらしてくれるが、悪者が悪意をもって利用すれば破滅がもたらされる。ヒトは協力によってこれほどまでに繁栄した。しかし、協力をよりよく利用する道を見つけなければ、つまり、私たちが直面している世界規模の問題にまで協力の範囲を広げなければ、私たちは自分自身の成功の犠牲者となるおそれがある。

人間が自然との戦いを克服する一方で、他の人間との関係が複雑化し、脅威にもなりました。 人間は社会的な能力を進化させることで、自身の生存と安全を確保しようとしたのです。自分自身の社会的な支援ネットワークの構築や整理、他者との関係の監視、脅威の検知と回避の能力が重要となりました。脅威の検知システムが正常に機能すれば、自分自身に危険は及ばないのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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