金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ (我妻佳祐)の書評

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金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ
我妻佳祐
幻冬舎

金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけの要約

我妻佳祐氏は、インデックスファンドと共済保険を柱とするシンプルな投資戦略を提案しています。投資を経済への積極的参加形態と捉え、企業や事業への資金提供を通じて成長と発展を支援する行為だと指摘します。これは単なる個人の利益追求ではなく、社会全体の経済発展に寄与する重要な活動になるのです。

投資初心者がやるべきった一つのこと

初心者は「つみたて投資枠のインデックス投資信託」の一択。(我妻佳祐)

元キャリア官僚でマネックスライフセトルメント代表取締役社長の我妻佳祐氏の資産運用に対する見解は、従来の枠組みを大きく揺さぶるものであり、特に金融教育や投資に関するアドバイスについて新たな視点を提供しています。

著者の提案は、表面的な知識や流行に頼る投資に警鐘を鳴らし、真に安定した資産形成に向けたシンプルな方法を提案しています。

まず、我妻氏が強調するのは、雑多な情報や生半可な知識に基づいた投資の危険性です。多くの投資家が、金融商品の知識や投資戦略を持たずに投資を行っています。著者は、これがリスクを理解していない一般的な投資家の典型的な落とし穴になっていると指摘します。

金融庁での経験を持つ著者は、内部者として金融界の現実を熟知しており、そこで得た洞察は、単なる投資アドバイスを超えた深い見識を提供します。

インデックス投資信託の運用成績も、10年、20年という長いスパンで見れば上がっていくことが期待されます。

我妻氏が提案する投資戦略は、シンプルさを重視し、インデックスファンドと共済保険という2つの柱に基づいています。 まず、インデックスファンドについて見てみましょう。これは、特定の企業の株式に集中して投資するのではなく、市場全体の動きに連動するように設計された投資信託です。

市場全体が上昇すれば利益が得られ、下落しても損失を最小限に抑えられます。著者は、素人投資家にとって、このインデックスファンドを定期的に積み立てて購入していく方法が最適だと主張しています。

我妻氏は、保険に関しては、一般の保険会社ではなく、共済保険を選ぶことを勧めています。通常の保険会社は、株主への配当や利益追求のプレッシャーがあるため、契約者から可能な限り収益を得ようとする傾向があります。一方、共済保険は組合員同士の助け合いを目的としており、過度な利益追求の必要がありません。そのため、保障内容がシンプルで分かりやすく、比較的低コストで必要な保障を得られる可能性が高いのです。

このように、インデックスファンドと共済保険を組み合わせた戦略は、投資と保険の世界をシンプルに捉えています。複雑な金融商品や難解な保険契約を避け、誰もが理解しやすい方法で資産形成と生活保障を実現しようというアプローチです。

この戦略は、金融の専門知識がなくても実践でき、かつリスクを適切に管理できる点が大きな特徴です。我妻氏の提案は、多くの人々が安心して取り組める資産形成の道筋を示しているといえるでしょう。

また、彼の主張は、金融リテラシーを高める重要性を強調するだけでなく、複雑すぎる投資商品や戦略に対しての警戒心を促します。金融教育の中で、よく使われる「卵をひとつのカゴに盛るな」という格言が象徴するように、特定の国や市場に過度に依存することはリスクを増大させる可能性があるのです。

投資で労働以外で経済参加する!

歴史を振り返れば、大航海時代には世界でもっとも力のある国であったポルトガルが今では経済的には大国とはいえなくなっていたり、有史以来東アジアの覇者であった中華文明が産業革命に乗り遅れて日本の後塵を拝するようになったり(最近は国全体で見れば中国のほうが日本よりも経済的に大きな国ですが、1人あたりのGDPではまだまだ日本のほうが上です)と、ある国が世界的な経済成長に乗り遅れて国際的な存在感を失っていくことはよくあることで、日本もその事例のひとつだったということなのではないでしょうか。

過去の日本のバブル崩壊を例に挙げると、国内投資に集中した人々は大きな損失を被りましたが、投資を多国籍に分散した投資家は比較的損失を軽減することができました。 現在、多くの日本の投資家がアメリカのS&P500など、特定の市場に投資を集中させている状況もまた、我妻氏はリスクが潜む可能性があると警告しています。

我妻氏が本書で紹介する「布団かぶって寝てろ」という投資哲学は、リスク分散と長期的視野の重要性を端的に表現しています。市場の短期的な変動に一喜一憂せず、冷静に長期的な投資戦略を継続することが、個人の資産形成だけでなく、社会全体の経済的安定にも寄与するという考え方です。私もこの考え方が身につき、投資したことを忘れることで、悩みが減り本業に集中できるようになりました。

この哲学は、複雑化する金融商品の中で、シンプルさと安定性の価値を再評価する動きとも言えます。金融リテラシーの向上と共に、多くの人々が実践可能な健全な投資手法を提供することで、社会全体の経済的な安定と発展を支える新たな方向性を示しています。

金融は私たち一人一人の生活と密接に結びついており、その影響力は計り知れないものがあります。単なる個人的な富の増大手段としてではなく、社会全体の発展に寄与する重要な経済活動として捉えることで、金融システムの新たな可能性が見えてきます。

投資は、経済活動への参加として、労働と同様に重要な役割を果たしています。この考え方は、経済への理解を深め、投資の社会的意義を再評価するきっかけとなります。労働を通じて、私たちは収入を得るだけでなく、社会の生産活動に参加していますが、投資もまた経済への積極的な参加の一形態です。

投資家は、企業や事業に資金を提供することで、その成長と発展を支援します。これは単なる利益追求ではなく、社会全体の経済発展に寄与する行為です。たとえば、新興企業への投資は、イノベーションを促進し、新たな雇用を創出する可能性を持っています。

インデックスファンドは確かに最強な投資法ですが、私は個別株にも投資を行っています。アメリカ株の個別株やインデックスファンドへの積立投資を行う一方で、イノベーションを促進するため、非上場企業へのベンチャー投資にも取り組んでいます。これにより、新たな事業の成長や経済の活性化に貢献できると考えています。

また、既存企業への投資は事業拡大や研究開発を後押しし、経済の持続的な成長を支える役割を果たします。投資は、労働とは異なる形で経済に関与する機会を提供し、さまざまな分野や地域の経済動向に基づいて資金を配分することで、よりバランスの取れた経済発展に貢献することが可能です。

投資を通じた経済参加は、個人の金融リテラシーを高め、経済の仕組みへの理解を深める効果もあります。市場の動向や企業の業績を分析することで、経済全体の流れを俯瞰的に見る視点が養われます。この知識と経験は、より良い経済的判断を行う能力を育み、個人の金融健全性だけでなく、社会全体の経済的安定にも寄与します。 また、投資は経済の民主化にも貢献します。株式市場を通じて、一般の個人が大企業の所有者の一部となることができます。

これにより、経済の富がより広く分配される可能性が高まり、社会の経済的公平性の向上にもつながります。 このように、投資を労働と並ぶ経済参加の形態として捉えることで、その社会的意義がより明確になります。それは単なる個人の資産形成手段ではなく、社会全体の経済発展に寄与する重要な活動なのです。

この認識を持つことで、投資に対するアプローチも変わってくるでしょう。短期的な利益追求ではなく、長期的な視点での持続可能な投資戦略が重要視されるようになり、結果として、より安定した健全な経済の実現に貢献することができるのです。 

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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