新・観光立国論(デービッド・アトキンソン著)は、全ての観光関係者に読んでもらいたい一冊!

書評

イギリスなどの人口減少国は移民問題で成長を保っていますが
日本人は移民を積極的に受け入れようとはしません。
これでは、経済はなかなか再生しませんが
デービッド・アトキンソン新・観光立国論の中で短期移民(観光)を行えば
日本にいる人間の数が急激に増えることと同じになり
GDPをあげる効果が期待できると主張しています。
スクリーンショット 2015-07-11 22.04.51

つまり、外国人観光客という名の「短期移民」は、移民政策のようなデメリットがなく、GDPを上げる効果が期待できるということなのです。ただし、観光を産業として位置づけるのですから、観光客がお金を落とす機会をもっと用意すること、および、観光客数だけに注目するのではなく、お金をたくさん使ってくれる人々をより多く呼び込む必要があることに注意しなければなりません。

本書を読んでいて、いかに日本政府やメディア、観光関係者が
訪日観光客のマーケティングで勘違いをしていることが、よくわかりました。
本書はイギリス人アナリストのデービッド・アトキンソン
世界中の観光地と日本の戦略を比較した渾身の一冊で
全ての観光関係者の必読の書だと思います。

成功している観光立国は、「気候」「自然」「文化「食事」の4条件を満たしています。
日本はこの4条件を全て兼ね備えているにも関わらず
フランスやスペインなど他の観光大国に大きく負けているだけでなく
タイや中国の後塵を拝しているのです。

USA Todayの調査によると日本での人気スポットは以下の通りになります。 
■歴史的名所(姫路城、熊本城、日光東照宮)
■京都の寺社(清水寺、三十三間堂)
■伝統体験(旅館、お茶、相撲)
■食事自然(スキー、沖縄、富士山)
世界の観光地に求められている4条件と同じものが列挙されています。
日本も、他の観光国と同じ視点で、評価されていることがここからわかります。

一方、日本が積極的にPRしている情報は治安、電車が正確、マナー意識が高いなどですが
これらの情報は外国人観光客からは、あまり求められていないのです。
日本は海外のターゲットが欲しっている情報ではなく
不必要な情報をPRするという戦略ミスを犯しているのです。

本来は、外国人が求めている「気候」「自然」「文化「食事」の4条件を
コミュニケーションすべきですが、最近の日本は「おもてなし」をコンセプトにしています。
しかし、アトキンソンは、これは間違いだと以下のように指摘しています。

しかも、日本には「おもてなし文化」などという実態のないぼんやりとした民間信仰よりも、世界に誇れるような観光資源がたくさんあります。それらを正しく発信さえすれば、外国人観光客の増加に結びつくような「高い評価」につながるとすら考えています。だからこそ先ほども申し上げたように、まずは「世界に誇るおもてなし文化」などという先入観を捨て去ることが大切なのです。世界各国にとって、観光業はきわめて重要な産業ですので、熾烈な競争が行なわれています。中途半端な戦略ではこの競争に勝つことはできません。日本も、もっと真剣に取り組むべきなのです。

海外の富裕層が日本を選択していないことも問題です。
観光のゴールはお金を日本に落としてもらうことなのですが
日本人はヨーロッパやアメリカのアプローチでも失敗しています。
適切な情報を外国人観光客に伝えていなかったり、高級ホテルがないために
富裕層が日本をスルーしているのです。

観光で成功している国は、観光客を大事なお客様と捉え
様々な施策を実施していますが、日本はここでも出遅れています。
入国審査やロジスティックスで外国人観光客に対して
優しさが足りていないのが現状で、外国人観光客の第一印象を悪くしています。
特に、成田空港の不便さは救いようがありません。
ここに至急対策を練るべきだと言います。

個人的には、なぜ成田国際空港から新幹線を走らせないのか、不思議でしょうがありません。外国人のなかには、日本は「新幹線の国」というイメージをもっている人も少なくありません。空港から直結で新幹線に乗ることができるというのは、一部の外国人からすれば目玉になるでしょうし、あまり新幹線に関心がない層にも、スピードという恩恵を与えることができます。現在、日本は世界各国に新幹線の技術を売り込みに行っているそうですが、それよりもまずは成田-東京間に新幹線を走らせるだけで、大きな効果が期待できるのではないでしょうか。ちなみにイギリスのヒースロー空港から出ているヒースロー・エクスプレスは15分ごとに運行されており、ロンドン市内までおよそ15分で到着します。昔はタクシーか、市内まで1時間以上はかかる地下鉄しかありませんでした。フランスもシャルル・ド・ゴール空港からより早くパリ市内へ行ける方法を、国策として検討し始めています。このような「調整」はパリの人々のためではなく、外国人観光客を増やすためのものであることは言うまでもありません。

外国人観光客の視点に立って、観光地にお金を落とすマーケティング戦略を
日本人は今こそ考えるべきなのです。
東京オリンピックまでに外国人観光客を喜ばせる仕掛けを作ることが
今後の日本の成長の条件となります。
逆に、環境整備やマーケティングに手を打たなければ、大変な事態になりそうです。

日本のマスコミや観光の専門家などは、東京オリンピックへ向けて外国人観光客が増加していくと分析しています。それはそのとおりでしょう。世界中が注目する国際イベントですから、極端な話、何もしなくても外国人観光客は右肩上がりで増えていくのです。そういう意味では、日本政府が掲げている2020年に2000万人という目標も達成できるのかもしれません。ただ、問題はその後です。オリンピックを観戦するために日本にやってきた外国人観光客たちが、日本のあまりに整備されていない文化財、都市の景観、多言語対応、交通機関の不親切さを目の当たりにしたらどうでしよう。「オリンピックが開催されているからやってきたけど、もう十分だな」と思われてしまうのではないでしょうか。そして、それはクチコミでそれぞれの国へ’気に広まってしまいます。つまり、オリンピックというのは、世界中から外国人観光客が訪れるという特需が期待される一方で、厳しい目でチエックされる「審判の日」でもあるのです。実際に過去のオリンピック開催国を見ると、開催の翌年は反動で大幅に外国人観光客が落ち込んでいます。ロンドンはさまざまな工夫をしたため落ち込みませんでしたが、減少する国のほうが多いのです。だいたい翌々年には復調するようですが、そこであまりにも外国人観光客から不評を買えば、落ち込んだままという最悪の事態も考えられます。

日本の観光資源を富裕層を中心にした外国人にアピールし
彼らが長期滞在してくれる施設やリゾートを観光地に整備すれば
日本は観光立国として成功できるというのが本書の要旨です。
著者のアトキンソンの試算では
2030年に8200万人の外国人観光客が日本を訪れ
GDPも8%成長が達成できるというのです。
本書を読んでいると、この壮大な目標ですら、実現できそうな気がしてきます。

今日もお読みいただき、ありがとうございます。

   

Loading Facebook Comments ...

コメント