ハンス・ロスリングのファクトフルネスの書評

 「西洋諸国」と「その他の国々」、「先進国」と「途上国」、「豊かな国」と「貧しい国」のあいだにあった分断はもはや存在しない。だから、ありもしない分断を強調するのはやめるべきだ。(ハンス・ロスリング)

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世界の正しい見方を身につけよう!

今日はハンス・ロスリングFACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣を取り上げます。著者のハンスはスウェーデンの公衆衛生学者の教授でTedでも人気を博しています。彼のデータを活用した、多様な視点を身につけることで、私たちは世の中の素晴らしさを実感できるようになります。

多くの人はファクトを無視し、自分の過去の記憶やイメージに流され、現実を見失っています。一般の人たちだけでなく、ダボス会議にでるような学者や経営者もこの失敗をおかしています。 著者はファクトフルネスとは、ネガティブなニュースに気づくことだと述べています。巷にはネガティブなニュースが満ち溢れていて、私たちの判断を誤らせています! このファクトフルネスの視点を取り入れるためには、本書の10の習慣を身につける必要があります。

悲惨な映像をニュースで見ることで、乳幼児死亡率や平均寿命などの実態を悪く捉えがちです。数十年前の常識を鵜呑みにして、人類の進歩を否定します。 「変わったの所得、観光客の数、民主化の度合い、教育・医療・電気へのアクセスなどでも、世界が分断されていたのは過去の話で、いまはもうそんなことはない。いまや、世界のほとんどの人は中間にいる」とハンスは指摘します、 

ハンスは極度の貧困者のレベル1から、先進国で暮らす豊かな人たちのレベル4まで、世界中の人々を4段階に分けますが、多くの人たちが実際よりもレベル1の人数を多く見積もります。(1日あたり1ドルの収入の人がレベル1、4ドルがレベル2、16ドルがレベル3、32以上がレベル4になります。)

人類の歴史が始まった頃、誰もがレベル1にいました。最初の10万年間以上は、誰もレベル2に進めませんでした。ほとんどの子供は、自分が子供を産める年齢まで生き延びられなかったのです。 そしていまから200年ほど前までは、世界の85%がレベル1、すなわち極度の貧困の中に暮らしていました。現在、世界の大部分は真ん中のレベル、つまりレベル2とレベル3に暮らしています。これは1950年代の西ヨーロッパや北アメリカと同程度の生活水準で、先進国の人たちが思っている以上に多くの人たちが豊かさを実感しています。

大半の人は低所得でも高所得でもなく、中所得の国に暮らしている。世界が分断されていると考える人には想像できないだろうが、これが事実だ。低所得国と高所得国のあいだには分断があると思われているが、実際に分断はなく、代わりに中所得国がある。そこには、人類の75%が暮らしている。中所得の国と高所得の国を合わせると、人類の91%になる。

しかし、この認識を持たずに、多くの人たちがレベル1の貧困者がたくさんいると誤解しています。ハンスはドラマチックな本能のせいで、人は何事も2つのグループに分けて考えたがると述べています。良いか悪いか、正義か悪か、自国か他国かの二項対立で物事を捉えたがるのです。

 

10の思い込みの習慣を修正し、世の中を正しく見よう!

世界を2つに分けるのは、シンプルだし直感的かもしれない。しかも双方が対立していればなおドラマチックだ。わたしたちはいつも気づかないうちに、世界を2つに分けている。ジャーナリストは人間の分断本能に訴えたがる。だから話を組み立てる際、対立する2人、2つの考え方、2つのグループを強調する。「世界には極度の貧困層もいれば、億万長者もいる」という話は伝わりやすく、「世界の大半は、少しずつだが良い暮らしをし始めている」という。

実際には分断がないのに人は分断があると思い込んだり、違いがないのに違いがあると思い込んだり、対立がないのに対立があると思い込んでしまうのです。ニュースを見たり、政治団体のサイトを読んだりすると、2つのグループが対立している話や、「格差が拡大している」という話を目にしますが、それを信じると自分を歪めてしまい、正しい答えを導けません。

分断本能を抑えるための3つの注意すべきポイントをハンスは紹介しています。
■平均の比較
■極端な数字の比較
■上からの景色
平均値な極端な数字の比較をやめ、過去のデータ対比や分布図などのビジュアルデータを活用することで、思い込みを防げます。 レベル4で暮らすは人の視点で、下のレベルの人を見るのはやめましょう!「下界」に住む人にとって、レベル1とレベル2、レベル2とレベル3の違いは非常に大きいのです。

1日1ドルの極度の貧困にいる人たちは、1日16ドルどころか、1日に4ドルも稼げるようになれば、どれほど良い暮らしができるかを知っているます。靴すら履けない人たちは、自転車があればどれだけ良い暮らしができるかを理解しています。いままでより何倍も速く、そして楽に市場にたどり着けるようになることで、彼らは豊かになっていけるのです。やがて生活レベルがあがると移動手段が豊富になり、交通事故や公害で苦しむようにもなります。日本人が過去に歩んできたことを多くのレベル2、3の国の人たちが体験すつのです。

この数十年で貧困者(レベル1)は激減し、多くの人たちが食べるのに困らなくなり、外食や旅行を楽しめるようになっています。 「世界はどんどん悪くなっている」と考えてしまうのは、「ネガティブ本能」も影響しています。人は誰しも、物事のポジティブな面より、ネガティブな面に注目しやすいものです。

世界についての暗い話はニュースになりやすいが、明るい話はニュースになりにくいとハンスは指摘します。メディアも商売なので、視聴率のためにあえて暗いニュースを流します。世の中には良いニュースがたくさんあるのに、この報道に騙されてしまいます。悲惨なニュースの方が関心フィルターを通りやすく、メディアはこのルールを利用するために、実態以上に嫌なニュースが溢れてしまうのです。

本当の意味で明るい話とは、数えきれないほどの「小さな進歩」が世界中で起きているということだ。そんな「小さな進歩」の繰り返しが世界を変え、数々の奇跡を起こしてきた。

こういった進歩は細切れだから、なかなかニュースでは、取り上げられませんが、世の中の良いことにフォーカスすれば、悪いニュースに流されなくなります。 「世界はどんどん悪くなっている」という勘違いを打ち破るには、現在と過去を比べてみればよいのです。過去の悲劇について学べば、世界は昔よりもオープンになったことや必要な人に援助が届きやすくなったことにも気づけます。災難があっても、世界中の人たちが支援の手を差し伸べてくれます。

ネガティブ本能を刺激する要因は3つあります。
(1)あやふやな過去の記憶
(2)ジャーナリストや活動家による偏った報道
(3)状況がまだまだ悪いときに、「以前に比べたら良くなっている」と言いづらい空気だ。

1990年以降、アメリカの犯罪発生率は減り続けています。実際、1990年には1450万件の犯罪が起きましたが、2016年には950万件に減っています。しかし、どれだけ犯罪件数が減ろうと、ショッキングな事件は毎年のように起こり、メディアはそれを大々的に報道します。その結果、1990年以降のほとんどの年において、「犯罪は増えていると思うか、減っていると思うか?」という質問に対し、「増えている」と答える人が大半を占めています。多くの人が「世界はどんどん悪くなっている」と錯覚するのもこういった姿勢が影響を及ぼしています。

「世界はどんどん悪くなっている」と考えれば不安になり、希望も失いがちになる。でも、それは思い込みにすぎない。

ハンスは可能主義者という彼の造語を紹介しています。 「可能主義者」とは、根拠のない希望を持たず、根拠のない不安を持たず、いかなる時も「ドラマチックすぎる世界の見方」を持たない人のことを言います。可能主義者のわたしは、「人類のこれまでの進歩を見れば、さらなる進歩は可能なはずだ」と考えます。現状をきちんと把握し、生産的で役に立つ世界の見方をもとに彼らはアクションを起こしています。

逆に「なにひとつとして世界は良くなっていない」と考える人は、次第に「何をやっても無駄だ」と考えるようになり、世界を良くする施策に対しても否定的になってしまいます。 良い変化のほうが悪い変化より多かったとしても、良い変化はあなたの耳には入ってきません。

統計を見れば、良い変化がそこらじゅうにあることに気づけます。「悪いニュースのほうが広まりやすい」と心得ておけば、毎日ニュースを見るたびに絶望しないです見ますし、可能主義者になれます。 恐怖も人の判断を誤らせます。多くの人が恐れているものは多々ありますが、次の全死亡数からのデータを見ると怖れる必要がないことがわかります。
自然災害は0.1%
飛行機事故 0.001%
殺人 0.7%
放射線被曝0%
テロ 0.05% どれも年間死亡者の1%にすら届かないにもかかわらず、メディアは大々的に取り上げています。もちろん、死亡率を減らすための努力は必要ですが、し、恐怖本能が人々の判断力を鈍らせていることを忘れないようにしましょう。本当に危険なことを察知し、大切な人を守るためには、恐怖本能を抑えて、死亡者数を見極めることです。行動する前に落ち着くように深呼吸をして、恐怖心が正しいかを見極めるようにすべきです。 本書にはこれ以外に人口問題をテーマにした直線本能などの10の思い込みの習慣が紹介されています。(分析本能、ネガティブ本能、直線本能、恐怖本能、過大視本能、パターン化本能、宿題本能、単純化本能、犯人探し本能、焦り本能)

ハンスの的確なアドバイスを読めば、自分の思い込みを修正でき、世の中を正しく評価できるようになります。データを元に世界がよりよくなっていると言う視点を持つことで、世の中を正しく見れるようになります。 この視点を持つことで、自分の行動もポジティブなものに変えられます。息子のハンス・オスリングの「おわりに」で衝撃的な事実が明らかになります。この事実を知ることで、よりこの本への評価が高まりました。著者たちの世の中をよりよくしたいという熱い思いを感じるとともに、忘れられない一冊になりました。

まとめ

人は思い込みや本能によって、正しく世界の出来事を捉えられなくなっています。過去の常識や恣意的な報道によって、事実を間違えて捉えています。世界の変化に気づけずにいるとビジネスのチャンスを見失います。分析本能、ネガティブ本能など10の思い込みの習慣を修正し、世の中を正しく見る癖をつけましょう!

 

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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