E.フラー・トリーの神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源の書評

人間はみな、神々を必要としている。(ホメロス)

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脳の進化が神を創造した?

「神(宗教)はいつ、なぜ、どのようにして生まれたのか?」という問いに対し、精神医学の世界的権威のE.フラー・トリーが答えを出してくれました。神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源を読むことで、私たちは脳と神の進化について、同時に学べます。脳は進化の過程で、自己的記憶を身につけ、やがて神を創造したのです。

私たちに神々や儀礼的な宗教をもたらしたホモ・サピエンスの進化の旅は、まさに驚くべきものだったのです。

私たちの脳は、ただ進化しただけでなく、私たちが脳の進化プロセスを理解し、進化プロセスについて書き、その進化が人生に与える意味合いについて考えることができるように進化したのだ。(E.フラー・トリー)

ホミニンは初期ホモ・サピエンスとして、およそ10万年前以降、自分自身の考えについてじっくり考える内省能力を発達させました。こうしてホミニンは、他者が何を考えているのかについて考えることができるようになったのです。ホミニンは自分が他者からどう思われているかについて考えたり、そのような考えに対する自分の反応について考える能力を身につけました。

およそ4万年前以降に一般に自伝的記憶と言われる能力を現代ホモ・サピエンスは手にしました。自伝的記憶とは、自分を過去だけでなく将来にも投影する能力で、この能力によって、将来を予測して将来の計画をよりうまく立てました。

ホミニンの歴史で初めて、ホモ・サピエンスは、死は自分という存在の終わりなのだということがよくわかるようになったのです。そして初めて、死に代わるものを思い描けるようになり、亡くなった祖先たちがまだ生きているかもしれない場所についても想像できるようになりました。

この自伝的記憶などの認知能力によって、およそ1万2000年前に始まる農業革命が起こりました。これにより、初めて人びとが集まって町や村に住みつくようになり、人口が劇的に増えたのです。多くの人が一つの場所で暮らすことによって、亡くなった人が生きた人びとのそばに葬られる状況が生じました。その成り行きとして祖先崇拝が重要になり、人口が増えるにつれて、祖先たちに序列ができたのです。

そして、おそらく1万年前から7000年前までのある時点で、重要な祖先たちが目に見えない一線を越え、概念的に神々と見なされるようになりました。文書記録が初めて残されるようになった6500年前には、神々はおびただしい数にのぼっていました。

当初、神々の責務は、生や死に関わる神聖な事柄に絞られていた。だが、政治指導者たちがほどなく神々の利用価値に気づき、人を裁いたり戦争を仕掛けたりといった世俗の務めを神々にどんどん割り振るようになった。

2500年前には、おもな宗教や文明が組織されるに従い、宗教と政治が持ちつ持たれつの関係になっていきました。神々には進化上の起源があるという説が正しい限り、およそ4万年前より早くには、神の概念はホミニンの頭に芽生えていなかっただろうし、およそ1万年前より早くには、おそらく神々の姿はホミニンの心にくっきりと浮かんでいなかったはずです。

 

農業による定住が祖先崇拝をもたらした!

現代ホモ・サピエンスは自伝的記憶を手に入れたことによって、この認知能力がなかったとおぼしきネアンデルタール人やほかの古代型ホモ・サピエンスの残存種に勝る進化上の大きな強みを得ただろう。自伝的記憶のおかげで、ヒトは将来の行動を計画する上で、さまざまな過去の出来事を柔軟に検討できるようになった。

自伝的記憶を得ることで、人は狩を計画できるようになり、他の動物とは異なる存在になりました。狩猟採集社会が当たり前になることで、祖先崇拝信仰を生み出しました。亡くなった祖先が生きている者たちの力になってくれるかもしれないという信念が、自分たちの祖先を崇める理由になっています。

スリランカの先住民ヴエッダ族は、「近い親族はみな、死ぬと霊魂になり、遺された者たちの繁栄を見守る」と考えていました。多くの狩猟採集民族の間で祖先崇拝が当たり前のように行われていたのです。キングス・カレッジ・ロンドンの比較宗教学教授ジェフリー・パリンダーは、次のように述べています。

アフリカの人びとの思想において、祖先たちの霊魂がとても大きな役割を果たしているのは間違いない。アフリカの多くの部族では、神の崇拝だと本当に言えるものは見当たらず、神々の地位は祖先たちに占められている。

本書で紹介されている「平行進化」によって、世界中の様々な国で、脳の進化がほぼ同時に起こっていたことが明らかになったのです。 平行進化とは、隔たれた地にも関わらず、似たような進化を辿ることを示しています。 農耕や天文学と同様に神がつくられ、脳と同じように進化していたのです。

農業の平行進化は、中国の二つの場所で別々に起こりました。中国では2万年前に陶器づくりが行われ、この陶器が調理に使われたのです。米は長江流域でおよそ8900年前には栽培化され、アワは黄河の氾濫原でおよそ8500年前には栽培化されていました。中国では、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタの家畜化も早い時期に起こっていたのです。

パプアニューギニアの高地でも同じ頃農業が発達しました。ここでは1万年前に農業が始まり、夕ロイモ、タコノキ、バナナ、ヤムイモ、サトウキビが育てられていたことがわかっています。ペルー、メソアメリカ、サハラ以南のアフリカでも農業が行われていました。

この農業の定住化が、祖先崇拝をもたらしたのです。

1万2000年前から7000年前に起きた狩猟採集から農耕への段階的な移行は、生者と死者の関係に重大な変化をもたらした。移動しながらの生活スタイルでは、誰かが死んだら、たまたま死んだ場所で葬るか始末せざるを得ない。なぜなら、遺体を連れて回るのは、どう見ても非現実的だからだ。それに引き換え、定住型の生活スタイルでは、死者を生者の近くに葬ることができる。すると、先行する世代の祖先たちの遺体がたまっていく。この時期に、亡くなった祖先たちが生者にとって、それまでよりはるかに重要になったようだ。一面では、死者を地元に葬ることで、自分の祖先たちを思い出しやすくなる。

カリーナ・クラウチャーは「死者を生者の近くにとどめておくことは、故人との精神的な絆を保ちたいという願いを反映しているのかもしれないし、服喪の過程を乗り切る助けになったかもしれない」と指摘します。亡くなった家族を生者の近くに葬ることで、土地の所有権や親族の義務に対する思いを強くしたのです。

そして、この祖先信仰の発達と脳の進化によって、多くの地域で神々が生まれました。およそ7000年前には、外側前頭前野や白質連絡路がホモ・サピエンスで十分に発達しており、そのおかげで現代の私たちに結びつく認知プロセスや行動が開花しました。神々の到来は、儀礼的な宗教が発展して、一人間の心を奪うことになる時代の幕を開けたのです。

やがて祖先たちの一部がだんだんと神々に祀り上げられ、それが文書に残されることで、今の宗教の原型が生まれました。6500年前のメソポタピア人の神殿に文字が記録されたことで、私たちは宗教の歴史を紐解けるようになったのです。

メソポタミアで神々が生まれたその後の2500年間で、エジプトや中国でも神の存在が確認されています。おそらく、パキスタンや南東ヨーロッパ、ペルーでも現れたと考えられ、ことによると西ヨーロッパにも存在したかもしれません。中国やペルーでは、神々がほかの地域に関係なく現れたのはほぼ間違いないので、これは平行進化をほのめかしていると著者は指摘します。

この後、地球上の各地で人口増加が起こり、神々や宗教は統治と一体化し、体系化されていきました。
こうして、2800年前から2200年前に現代に通じる宗教が生まれました。儒教、ヒンドゥー教、仏教、ゾロアスター教、そしてユダヤ教はすべてこの時代に始まり、その後、ユダヤ教からキリスト教とイスラム教が生まれました。これらの宗教は合わせると、現在生きている人びとの60パーセントに精神的な支えを与えています。

まとめ

ヒトの脳は、ただ進化しただけでなく、私たちが脳の進化プロセスを理解し、進化プロセスについて書き、その進化が人生に与える意味合いについて考えることができるように進化しました。脳が発達し、農業による定住が起こると祖先信仰が始まり、やがては統治のために、強力な神々の存在が求められるようになったのです。現代宗教の原型は2800年前から2200年前の間に生まれ、現代人の60%がこれらの宗教を信じています。

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