ストーリーセリングが、マーケティングの切り札である理由


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屁理屈なし利益と熱狂を生み出す ダイレクト・ブランディング
著者:ダン・ケネディ、フォレスト・ワルデン&ジム・カベル
出版社:ダイレクト出版

本書の要約

ブランディングではストーリーを語ることが欠かせません。私たちの脳は物語に反応するように進化してきました。シンプル、本物、伝わる、関心を持てる内容であるという4つの要素を満たすことで、人はあなたのストーリーに共感し、商品やサービスを買ってくれるようになるのです。

ストーリーセリングの4つの要素

つまり、ある種の物語は、私たち皆が満たさねばならない、原始の欲求に答えるものだということだ。(ニック・ナントン& J・W・ディックス)

ダン・ケネディ、フォレスト・ワルデン&ジム・カベル屁理屈なし利益と熱狂を生み出す ダイレクト・ブランディングの書評を続けます。本書の中でニック・ナントン& J・W・ディックスの2人が、ストーリー・セリングの手法を紹介しています。彼らはセレブリティ・ブランディング・エージェンシーを主宰し、ストーリーテリングのプロフェッショナルです。(※彼らの書籍は、残念ながら翻訳されていません。)

ナントンとディックスの2人が言うように、ストーリーをマーケティングに取り入れること=「ストーリーセリング」の手法によって、モノやサービスが売れるようになります。ストーリーは、人間の脳に信じられないようなインパクトを与えてくれるのです。そのほとんどは無意識のレベルで起こり、脳の快楽中枢を刺激するため、人はもっともっと聞きたくなります。

ストーリーセリングをあなたのブランドに応用すれば、顧客や潜在顧客に大きなインパクトを与える、競争相手に優位性を発揮できます。ストーリーを作る時に、以下の4つの要素を兼ね備えれば、ストーリーセリングによって、成功を手に入れられます。

1、シンプルであること
私たちは日々多くのストーリーを聞いています。あなたのストーリーを顧客の脳に留めるためには、ストーリーをシンプルでわかりやすくすべきです。私たちのまいにちは忙しく頭中にはいろいろなことがたくさん詰まっています。自分に直接利害もないのに、面倒なことを受け入れる余地はあまりないと考えましょう。

2、本物であること
日夜、広告キャンペーンの集中砲火を浴びている現代人は、多くのセールストークを何か胡散臭さいものだと捉えがちです。もしあなたの物語が売らんがための口上に過ぎないと思われたら、あるいは真実味がないと思われたら、誰もまじめに取り合ってくれません。物語が本物だと検証されたものしか評価されません。

3、伝わること
あなたが語りたいストーリーをターゲットである顧客や潜在顧客に聞いてもらわなければなりません。そのためには、あなたが、物語を伝える確かな方法を見つける必要があります。ブログやソーシャルメディアを活用し、まずはストーリーを語り始めましょう。諦めずに続けるうちに、あなたのストーリーに興味を持つ人が現れ、世の中にあなたの物語が伝わっていきます。

4、関心を持てる内容であること
人々が聞きたがるものでなければ、ストーリーは伝播しません。あまりに物語を売る人が多いために、現代人は心の平穏を守るために、最大限ノイズをシャットアウトします。顧客や潜在顧客があなたのストーリーを聞きたくなる理由、それも強力な理由を用意しなければならないのです。

あのサブウエイもストリーセリングで成功できた?

ストーリーセリングは、あなたのメッセージを伝え、忘れ難いものにし、結果的に最高の利益をもたらす強力なツールなのだ。

本書には、サブウェイ(SUBWAY)の成功ストーリーが紹介されています。このストーリーには前述の4つの要素がしっかりと取り入れられています。ジャレド・フォーグルという男が主人公のダイエット物語によって、サブウエイは成功を手に入れます。ジャレドは、何カ月にもわたって、毎日同じサブウェイのサンドイッチを食べ続けた結果、なんと110キロも体重を落としたのです。

彼が最初にコマーシャルに登場したのは、2000年1月1日のことでした。次に彼の身に起こったことは、あのオプラ・ウィンフリーの番組に出演することでした。大人気のトーク番組に出たことで、このキャンペーンは大成功します。このストーリーをマーケティングディレクターは、すぐに全国展開させました。

それから10年の問にサブウェイの売り上げは倍増し、(マクドナルド・バーガーキング、ウェンディーズに次ぐ)ファーストフード界第4位の地位から、ウェンディーズを抜いて、第3位にのし上がりました。主人公のジャレドもちょっとしたセレブになったのです。それだけではなく、サブウェイがジャレドを広告から外そうとするたびに、サブウェイの売り上げが急落しました。ジャレドのストーリーがサブウエイのストーリーになり、何十億ドルもの収益を生み出したのです。

ジャレドのキャンペーンの成功は、ストーリーセリングが効果的な手法であることを物語っています。無味乾燥な事実ではなく、実在している血の通った人間、人々と気持ちが通じ合えるような人間を、上手に宣伝に使うことができれば、その「人間味」ゆえに、広告を受け取った人たちからの反響はとても大きいものになるのです。

ストーリーそして、その人柄と、人の心をつかんで離さない圧倒的な物語を結合させることができれば、成功が近づきます。ジャレドは、サブウェイで食事をすることの効用を目に見える形で実演し、本物の物語を語ってみせたのです。彼は栄養学的な情報提供ではとうてい成し得ないことを、身をもって可視化しました。

ジャレドはその後、太ってしまいますが、サブウエイは新たなストーリーを用意しました。ジャレドの体重増を肯定的にとらえ、今度は彼がニューヨークシティマラソン挑戦のためにトレーニングをして、減量するという新しい広告キャンペーンを始めました。かつてのサンドイッチ・スターとともに、全く新しいストーリーセリングの筋書きを作り始めたのです。このマラソンも完走し、遂にはジャレドはセレブの仲間入りをしました。

しかし、このストーリーには落とし穴があったのです。彼は未成年者と性的関係を持った罪と児童ポルノ所持の罪で、約16年間の実刑判決を受けてしまいました。サブウェイは彼と2015年に関係を絶ちましたが、今もこのネガティブストーリーとの戦いに苦しんでいるそうです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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