松村太郎氏のAnker 爆発的成長を続ける 新時代のメーカーの書評


Anker 爆発的成長を続ける 新時代のメーカー

著者:松村太郎
出版社:マイナビ出版

本書の要約

「Empowering Smart Lives」と言うミッションを掲げ、顧客の生活をスマートにするプロダクトを提供するAnkerは、短期間で多くのファンを獲得することに成功します。顧客と徹底的に対話し、そこからイノベーションを起こすことが彼らの強みとなり、Ankerのビジネス領域が広がっているのです。

爆発的な成長を遂げるAnkerの強みは何か?

製品に強烈なこだわりや個性などを持たせ、他社とは絶対的な差別化を行うことで、特にブランドと直接コミュニケーションを図ろうとするデジタル世代の熱狂的なファンを抱えることに成功している。製品そのものの良さはもちろんのことだが、そうした共感を呼ぶストーリーを付随させることで消費者の「自分のブランド」感を高め、収益性を上げていく。(松村太郎)

モバイルバッテリーと言うコモディティ商品の市場で、顧客から圧倒的に支持されるのがAnekerです。新興のハードウエアメーカーにもかかわらず、彼らは短期間でこのニッチな市場を攻略し、その後、様々なプロダクトをリリースすることで、ブランドとしての存在感を高めています。

彼らは顧客の生活をスマートにすることをミッションに、デジタルライフを有益にするプロダクトを生み出すことに成功しています。しかし、驚くことに創業者のスティーブン・ヤンやドンピン ・ジャオは、ものづくりやEコマースの経験がありませんでした。ヤンは2011年のスタート時から、D2Cに注目し、顧客とダイレクトに対話し、顧客体験を高めることで成功を手に入れます。

Ankerは他のメーカーとは異なり、実際に製品を使う顧客を第一に考え、真っ正面から向き合うことで、ファンを獲得していったのです。顧客が抱える問題を解決するため、また顧客体験を少しでも向上させるために、研究開発に投資を行い、一つずつ障壁を乗り越えてきました。その結果、Ankerグループは設立からわずか7年で、グループ全体の売り上げを約860億円に伸ばしたのです。

彼らはスマートをキーワードに、製品そのものの良さだけでなく、共感を呼ぶストーリーを消費者に語りかけます。そして、人々がスマートに生きるための技術的イノベーションによって、顧客体験そのものに変化をもたらし、熱狂的なファンを増やしていったのです。当初はスマートに充電するがAnkerの世界観でしたが、スマートに音楽を楽しむやスマートにエンターテイメントを体験すると言うふうに、顧客との関係を広げています。

彼らは、創業時からブランド哲学や経営戦略を明確にしながら、顧客に寄り添ったイノベーションを起こすことで、顧客とのつながりを強化していったのです。開発を中国・深圳で行うのも、「Empowering Smart Lives」と言う彼らのミッションを実現するための最適な場所が深圳だったからです。

顧客のディスロイヤルティをなくせ!

Ankerのプレジデントを務めるドンピン・ジャオは、同社の成長の理由を2つの幸運なマクロ的環境があったからだと分析しています。
1、スマートフォン市場の拡大によって、モバイルアクセサリ需要が急成長したことが彼らの追い風になりました。彼らが狙ったモバイルアクセサリというカテゴリは、「コモディティ商品」だったため、競合が不在でした。
2、アマゾンを販売の主戦場にし、ここでの1番を維持することが同社の狙いでした。アマゾンに販売を1本化することで、経営資源の無駄遣いを防ぎ、効率を最大化することができたのです。

CEOのスティーブン・ヤンは起業のアイデアを考える時から、販売する場所を世界最大のECサイトのアマゾンと決め、ここでの信頼性獲得を当初の目標にしました。高性能でリーゾナブルな製品をリリースし、モバイルバッテリーで1位の座を維持することで、Ankerは成長の第一歩を歩み始めます。

アマゾンだけに販売チャネルを絞り、徹底的に顧客と向き合いながら製品を作り続けた結果、Ankerグループは顧客の信頼を獲得し、米国でも日本でも「アマゾン以外」の小売店での販路が拓けていったのです。それと同時に顧客体験を高めること、スマートライフのためのイノベーションを起こすことで、Ankerは熱狂的なファンを獲得していきます。

Ankerは顧客の不満や怒り、否定的な意見を意味する「ディスロイヤルティ」をなくすことを徹底しています。特に、品質がブランドの重要な要素を占める日本市場では、これを重視し、カスタマーサポートに注力しています。顧客の課題をカスタマーサポートが発見することが、製品の改善やイノベーションの起点になるだけでなく、Ankerの「神サポート」によって、不満を抱えていた顧客が熱狂的なファンに生まれ変わるのです。

Ankerグループのものづくりは、製品や体験の改善に重点を置く。エンジニアリングやテクノロジーも重要だが、カスタマーサポートも等しく重要に考えられている。カスタマーサポートは、顧客の問題を解決するだけでなく、製品の改善や開発のためのヒントが高い純度で含まれているからだ。

顧客のフィードバック→プロダクトの改善→アマゾンの評価が上がる→売り上げが上がると言う公式によって、Ankerは飛躍的に成長しているのです。

Ankerはわずか10年で、モバイルチャージングカンパニーから、ライフエンパワーメントカンパニーへシフトし、巨大な企業に成長していたのです。顧客に寄り添い、顧客の課題を発見し、それを解決するプロダクトを作り続けることで、今後もAnkerの成長は続きそうです。明確なビジョンやミッションを作り、顧客体験を高めるためのイノベーションを起こし続けることが、成功の秘訣であることを本書から学べました。

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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