マーク・W・シェイファーのヒューマン・マーケティング戦略の書評


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ヒューマン・マーケティング戦略(Marketing Rebellion: The Most Human Company Wins
著者:マーク・W・シェイファー
出版社:ダイレクト出版

本書の要約

消費者の帰属意識をくすぐり、強固なブランドコミュニティを築くことができれば、顧客のロイヤリティが高まり、マーケティングのコストがかからなくなります。デジタルマーケティングだけでなく、ヒューマン・マーケティング戦略を実行し、顧客基盤を固めましょう。

ヒューマン・マーケティング戦略を取り入れよう!

人間同士のつながりは代替不可能だということは、みんなわかっている。それでも「ボタンを押すだけ」でマーケティングができるという神話は根強く、顧客とのやりとりから人間を排除しようとする動きは衰える気配がない。技術が人間を怠惰で無気力にしているのだ。(マーク・W・シェイファー)

デジタル・マーケティングが日々進化し、顧客に過剰なメッセージを送るようになりました。企業側がマーケティング・メッセージの81%は適切で有用だと考えているにもかかわらず、84%の消費者は役に立たないと考えています。最新のテクノロジーを活用したデジタル・マーケティングはスパム扱いされているのです。

企業と消費者の間には大きな壁があり、それを乗り越える施策が求められています。ヒューマン・マーケティング戦略(Marketing Rebellion: The Most Human Company Winsの著者のマーク・W・シェイファーは、マーケティングは非常に人間的なものであると指摘し、デジタルマーケティングばかりに頼るのはリスクが高くなっていると指摘します。顧客を忘れ、テクノロジーに頼るのは本末転倒です。

この10年のテクノロジーの進化は消費者と企業の関係を激変させました。特にソーシャルメディアの爆発的な普及で、消費者がマーケティングの主導権を握り、企業に反乱を起こすようになりました。消費者は力を持ち始めましたが、その一方で彼らはネットに時間を費やすことで、孤独を感じるようになりました。

その孤独を感じている消費者に場を用意し、帰属意識を持ってもらうことで、成功する企業が増えています。自らステッカーを貼りたがる人との絆を生み出すこと(ヒューマン・マーケティング戦略)で、企業は結果を出せるようになるのです。

帰属意識を持つようになった顧客は、逆境でも見放さず、高い金額を支払い、プロの広告代理店が制作したどんな広告よりも巧みにストーリーを広めてくれる。それはマーケティングにおいて大きな武器になる。

しかし、心から帰属意識を持ってもらえるようなブランドを育てるのは簡単ではありません。では、企業はどうすればよいのでしょうか?

帰属意識を持たせるための8つのポイント

1、ブランドのコミュニティは、ビジネス戦略である

コミュニティを築くことは、単に商品を売るためのマーケティング戦略はない。顧客の感情的なニーズを大切にするビジネス戦略なのだ。

コミュニティを築く努力をマーケティング部門だけに任せるのではなく、企業全体で行うべきです。ハーレー・ダビッドソンは1980年代、ブランドコミュニティ戦略を取り入れました。マーケティング計画を変更するのではなく、組織のあらゆる面をー文化から経営の進め方、さらには組織設計にいたるまで刷新し、コミュニティの戦略であるライダーの「仲間意識」の実現に取り組みました。

2、ブランドのコミュニティは、会社ではなく顧客のために存在する

経営側は忘れがちだが、消費者は生身の人間で、さまざまなニーズや興味、責任を持っている。コミュニティを形成するブランドが顧客にロイヤリティを抱かせるのは、売買契約を結ぶからではなく、顧客のニーズに応えるからだ。

コンサルタントのフェイス・ポップコーンはコミュニティづくりには、様々な体験が欠かせないと言います。居心地のよい場所から出て、いつもは避けている文化を探求することで、顧客の実態が見えてきます。地下のバーやクラブ、風変わりなカフェに行き、そこで人々が何を食べ、何を話しているかを観察しましょう。自分たちのプロダクトやサービスが彼らのどんなニーズに答えられるかを考えましょう。

3、賢明な企業は、コミュニティが成長するための衝突を受け入れる
多くの企業は衝突を避けたがりますが、コミュニティというものは本来政治的なもので、当然衝突が起こります。PlayStationの愛好者はXboxを否定しますし、AppleユーザーはMicrosoftを嫌います。フォードのトラックのオーナーはシボレーのオーナーとそりが合いません。コミュニティは、自らを定義づけるための境界線を消すのではなく、強調することによって強くなるのです。

4、コミュニティはステータスをくれる
あるグループに加わることで、顧客は強いステータスを感じます。そのステータスがグループ内の活動やリーダーシップによって高められることがあることを忘れないようにしましょう。コミュニティによるステータスの提供によって、支援者が生まれます。参加者ひとりひとりが意義のある役割を担うことができる強固なコミュニティは、文化的な基盤となっていくのです。特に貢献度の高い人たちに意図的・持続的にステータスを提供することによって、他の参加者も積極的に貢献してくれるようになります。

5、ファンを作って主導権を渡す
ウェブでのつながりは、実はそれほど結束が強くありません。ウェブ上のつながりは可能性を広げ、思いがけない人やアイデアと出会わせてくれますが、リアルの人間関係の方がより効果的です。

ファンは消費者よりはるかに重要です。ファンはシェアし、討論し、タトゥーを入れます。熱心に宣伝し、ファンを増やし、コミュニティを作ってくれます。文化が多極化しているなかで、とても力を持つ存在です。マーケティングの主導権をファンに渡すときが来たのだと思います。(モリー・バッティン)

企業がファンに主導権を渡すひとつの方法が、ファンイベントの開催です。消費者が参加できるイベントや人間の印象がブランドを築くと考え、ネットだけでなく、リアルでのコミュニケーションを行いましょう。たとえ、売り上げのほとんどがネット経由であったとしても、イベントを開催すべきです。

6、コミュニティには企業側のコントロールはきかない
ブランドのコミュニティは企業の財産ではありませんから、コントロールできると思うのはやめましょう。コミュニティの主導権は消費者にあると考え、企業はサポートに徹するのです。賢明なブランド担当者は、コミュニティに共同創設者として参加し、コミュニティが成長しやすい環境を整え、活動を促進します。

7、ごまかしはコミュニティをだめにする

もし参加者に、このコミュニティは自分たちをコントロールしようとしているのではないかと思われてしまったら、そこで終わりだ。忘れてはいけない。企業側がコントロールする時代は終わったのだ!どこかの段階で、参加者は、企業側が利益のためにイベントを催していることに気づくだろう。だが、真のコミュニティが主催者に協力するのは、強制されたからではない。

顧客と企業の関係は完全に逆転しています。ファンの意志を重視し、サポートに徹しましょう。

8、使命感がムーブメントを起こす
自らを文化的ムーブメントの重要な一員と位置づけるブランドは、消費者と感情的なつながりを育てます。ルルレモンは「これがヨガだ」というキャンペーンを行って、ヨガの意味を再定義しました。今やヨガはマットから飛び出し、日常生活に溶け込んだと宣言することで、ルルレモンはファンを取り込んで行きました。アーティストやミュージシャン、起業家といったインフルエンサーたちが、ヨガの考え方を日常生活に取り入れている様子を紹介することで、ヨガのムーブメントを起こすことで、ファンを増やしているのです。

消費者の帰属意識をくすぐり、強固なブランドコミュニティを築くことができれば、顧客のロイヤリティが高まり、マーケティングのコストがかからなくなります。帰属意識を育てれば、ファンが増加し、ビジネスが拡大していくのです。デジタルマーケティングだけでなく、ヒューマン・マーケティング戦略を実行し、顧客基盤を固めましょう。

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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