牛窪恵氏の若者たちのニューノーマル Z世代、コロナ禍を生きるの書評


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若者たちのニューノーマル Z世代、コロナ禍を生きる (日経プレミアシリーズ)
著者:牛窪恵
出版社:日経BP

本書の要約

人口減少する中で、今後このZ世代が影響力を持つことは間違いありません。今回のコロナ禍の中でも、Z世代と言われる若者がこの変化に最も適応しています。経営者やマーケターはZ世代が上の世代と異なる特性を持つことを理解し、マーケティング戦略を考えるようにすべきです。

なぜ、Z世代は起業するのか?

約7人に1人の高校生・大学生らが、起業願望を持っている。(牛窪恵)

「おひとりさま」「草食系男子」などを世に広めた、世代・トレンド評論家の牛窪恵氏が、ビジネスパーソンにはわかりづらいZ世代の実態を本書でレポートしています。最近、Z世代という言葉が、メディアやSNSで目につくようになりました。なぜ、今Z世代がこれほど注目を集めているのでしょうか?

先日もこのブログで原田曜平氏のZ世代~若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?~を紹介しましたが、その鍵は、以下の3つの理由に集約されます。(原田曜平氏の記事はこちらから。
①消費者ターゲットしてのZ世代
②人材としてのZ世代
③ソーシャルメディアなどPRの起点
20代前半のZ世代の思考と行動を理解することが、経営者やマーケターに求められています。

本書はカフカの「変身」の主人公のように、49歳のビジネスパーソンが自分の子供(21歳)に入れ替わり、Z世代との交流を通じて、彼らのライフスタイルを伝える小説がベースになっています。そこに著者がマーケティング視点で解説を加え、 Z世代の生態を明らかにしています。

世の中が大きく変化する中、働くことの意味合いも我々世代とZ世代では大きく異なります。従来の学び方・働き方が賞味期限切になる中、学生の起業も加速しています。私はスタートアップやベンチャー支援という仕事柄、Z世代との会話が比較的多くなっていますが、彼らは起業を特別なものだとは考えていません。最近では高校生で起業することも珍しくなくなりました。

実際、2018年のスタートアップ専門メディア「スタートアップタイムズ」による調査結果を見るとZ世代の起業意欲の高さがわかります。500人の15〜26歳に対して「いつかは「起業」をしてみたいと思う」かをたずねてみると回答者の13.6%が「起業してみたい」と答えたそうです。ほぼ7人に1人に起業願望があったのです。

Z世代が生まれたのは、リクルート(当時)が起業雑誌『アントレ』を創刊した97年前後。彼らが口を揃えるのは、「いまある仕事(会社)に、やりたいもの(行きたい企業)が見当たらなかった」や「自分がこの先、サラリーマン(OL)になったとして、その先に何があるんだろう」といった疑問や悩みです。適当な「既存の枠」が見当たらないからこそ、Z世代は「自分で創ろう!」と考える。そんな彼らを、SNSやクラウドファンディングといった現代のシステムが、金銭的、精神的にも支援していると言えそうです。

様々な体験を通じて、未来を良くしようと考え、自分のスキルアップのために努力を重ねています。それは自分だけでなく、世の中全体を良くしようという気持ちに基づいています。クラウドファンディングで資金調達ができ、 SNSで仲間や情報が募れる時代には、起業するという選択肢が大袈裟なもので無くなっています。若者が起業することに不安を抱かないように大人世代は、彼らをサポートする必要があります。

Z世代の特性を理解すべき理由

本書には現代の若者や消費者全般を捉える際に有効な、マーケティング&経営分析のフレームワークが紹介されています。STP、PEST、SWOT分析やイノベーション曲線、カスタマージャーニーなどがわかりやすく書かれているので、Z世代のライフスタイルを知りながら、マーケティングの知識も同時に得られます。

Z世代は、1つの「村社会」にガッチリ所属することを好みません。彼らは複数のゆるい「群れ社会」にちょこちょこ顔を出しています。私の大学生の娘もツイッターアカウントを使い分け、いくつものコミュニティに属して、それぞれの役割を楽しんでいます。多様な仲間と付き合うことで、自分の世界を広げています。

自分の世界を広げてくれるツールである車への感覚もミレニアル世代とは異なります。

彼らはコロナ前から、「クルマがあれば、世界が広がる」「絶対に生活が変わる」と言い切っていた世代です。さらにコロナ禍で、「クルマは他人と接触せずに、消費や音楽を楽しめる空間」として、再び関心をもつ若者が増えてきた実感があります。

Z世代は車への期待値を高めています。若い世代はKINTOなどをうまく使いこなし、車を自分の部屋と位置付けています。こういう事実を知るとゆとり世代とZ世代が別物であることがわかります。車=危険、お金がかかる、か環境を汚す存在だと考える若者は減っているようです。

また、Z世代では、検索のグーグル離れが進んでいると言います。 2019年のジャストシステムの調査では、インスタの優位性が明らかになっています。

スマホで流行のファッション情報を調べる際の割合(17~69歳の全平均)
■「インスタ」に頼る→29%
■「グーグル」に頼る(検索する)→(28%)

10・20代女子ではインスタによる情報入手が顕著で、「グーグル」が10代で9%、20代で7%しかいないのに対し、「インスタ」では10・20代ともに44%と、なんと5倍も多かったのです。男子でも、10代は「インスタ」派が「グーグル」派を3倍近く上回りました。  

インスタが17年のハッシュタグのフォロー機能を追加したことが、インスタ検索が伸びている理由です。「#渋谷ファッション」や「#春のコーデ」「#表参道ネイル」などハッシュタグをフォローしておけば、わざわざグーグルで「表参道 ネイル」などと打ち込む必要はなくなったのです。私の娘もカフェを検索するときは、インスタを活用し、私などより早くよい店を見つけます。

また、お気に入りのインスタグラマーや友人らをフォローすることでも、自分の感性に近い情報が得られます。彼女ら(彼ら)もアパレルやブランドのハッシュタグ付きで情報を呟くことが多く、「どのショップやサイトで売っているか」も分かります。

ただ、似た者同士からの情報に偏ると特定の意見や思想が増幅する「エコーチェンバー現象」を起こしやすくなります。自分の価値観に近い狭い世界にいる居心地は良くなりますが、「みんながこう言ってる」と思い込む確率も高くなります。

Z世代の特性をいくつか紹介してきましたが、今後、Z世代をマーケットを牽引するなら、彼らを意識したマーケティングを行う必要があります。

ニューノーマルの時代に変化し、生き残るためには、Z世代を見習い、彼らをお手本にした方がよいと著者は指摘します。変革のチャンスをものにするために、我々大人世代は今こそ変化し、彼らとの協業を考えるべきです。

コロナという脅威や逆境は、われわれ人間に与えられた「変革のチャンス」でしょう。いまこそ、この闘いを放棄せず、Z世代と共に、いえZ世代の生き方・働き方・ニューノーマルな価値観をお手本に、私たち大人変革を楽しめたら……と強く思うのです。

現在の延長線上のままで、変化を選択しなければ、やがて日本は世界から取り残されてしまいます。今が最後のチャンスだと捉え、Z世代とともに世の中を良くしたいと思います。森JOCの会長の女性蔑視の暴言を許容するのはやめ、よりよい社会を実現しましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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