AWSがアマゾンの半分の利益を稼ぎだす理由


アマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くす

著者:ブライアン・デュメイン
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

長期的な視野に立つアマゾンは、新しいチャレンジを続けることで大成功を手に入れます。当然、その中には大失敗もありましたが、この姿勢を保ち続けることで成長を続けます。アマゾンは5年後、10年後、さらには15年後にある明るい未来の中に自らを位置付け、投資家もそれを評価するようになりました。

新たな挑戦をやめない企業文化を生み出したベゾスの力

アマゾン・ドツトコムに関して言えば、何十億ドルもの失敗をしてきました。文字どおり、何十億ドルも無駄にしたのです。(ジェフ・ベゾス)

先日、ジェフ・ベゾスと後継のCEOであるアンディ・ジャシーの話を紹介しましたが、今日はそれがなぜ実現できたかについて、もう少し書いてみます。

ジェフ・ベゾスは長期的な視野を持って、アマゾンを経営してきました。それは自分だけでなく、社員にも求められていたのです。社員たちに長期的な視野を持たせることで、時間の使い方、計画の立て方、エネルギーの注ぎ方が変わり、隅々まで見渡す力を持てるようになります。

ベゾスの長期戦略は、アマゾンに大きな配当をもたらしました。この20年間、ベゾスはアマゾンのキャッシュフローを株主に還元するのではなく、その大部分を事業の拡大、研究開発への投資、優秀な人材の採用に充ててきました。

当初、ウォール街は4半期ごとにベゾスを批判し、アマゾンの株価はジェットコースターのように上下しました。アマゾンが上場した頃は、確かにベゾスへの批判が噴出していました。ベゾスはそれらを無視し、世界で最もスマートな会社をつくるという自身の戦いに集中しました。

ベゾスの長期的な視野を示す最良の例は、2003年にスタートしたAWSへのチャレンジです。「インターネット用のmalloc(Cプログラムのキーメモリ割り当て機能)を作ろう」と自ら宣言し、ベゾスは動き始めます。ベゾスはクラウドがなかった時代に、AWSの商品設計を自ら行い、チームを鼓舞します。

アマゾンはインターネットの覇者になることを目指し、クラウド事業に乗り出していったのです。このタイミングでクラウド事業に賭けるのは、先見の明のある決断で、勇気が必要だったはずです。当然、多くのメンバーがこの事業への参入に反対意見を持ちました。当時、ベゾスのシャドーを務めていた次期CEOのアンディ・ジャシー(AWSの責任者)は、次のように述べています。(次期CEOのアンディ・ジャシーの関連記事

彼らはみな、『車輪の再発明』をしていました……あるプロジェクト内で開発されたものは、そのプロジェクトを越えて使われることはなかったのです。(アンディ・ジャシー)

ジャシーのアプローチは既存の開発陣とは異なるものでした。エンジニアが新機能の設計を簡単かつ迅速に行えるようにするために、オンデマンドで利用できるコンピューティング・パワーをクラウド上に用意することにしたのです。

そのためには、アマゾンが自社内で大規模なコンピュータサービスを構築しなければなりませんでした。2003年当時はまだ、「ドットコム・バブル」崩壊の影響が残っていました。オンライン小売事業で赤字を垂れ流しているアマゾンが、新たにコンピュータサービス会社を開始することは、相当のリスクがありました。

ベゾスはクラウドサービスの構築にゴーサインを出しました。そして、この挑戦は大成功を収め、アマゾンは最終的に、同じソフトウエアツールを他の企業にも提供するようになりました。今日、AWSはアマゾンで最も収益性の高いビジネスであり、ネットフリックス、エアビーアンドビー、CIAなどの、数千もの顧客を持つサービスとなってます。

ベゾスの長期的な賭けが成功をもたらす理由

2019年半ば、投資調査会社のコーウェンは、AWSだけで5000億ドル〔約53兆円〕以上の価値があり、これはアマゾンの株式時価総額の半分以上に相当すると推定している。

2020年の第4Qの決算で、AWSは28%の収益成長を遂げました。AWSの売上高は、前年同期の99億5000万億ドル(約1兆450億円)から2020年第4四半期には127億4000万ドル(約1兆3381億円)に拡大しました。AWSの営業利益も同様に増大し、2019年第4四半期の26億ドル(約2731億円)から直近の四半期には35億6000万ドル(約3739億円)になっています。

結果、アマゾンの4Qの売上高は1256億ドル(約13兆1900億円)となり、初めて1000億ドル(10兆円)の大台を突破しました。純利益は2倍強の72億2200万ドルでした。売上高、1株当たり純利益ともにアナリスト予測(売上高は1197億ドル、1株当たり純利益は7ドル23セント)を大きく上回ったのです。今回の4Qの決算を見てもわかるようにアマゾンの利益の半分をAWSが稼ぎ出しています。

ベゾスはAWSやアマゾン・プライム、キンドルなどの成功例を含め、大規模で長期的な賭けをするよう部下たちに奨励している。しかし、この高リスクなアプローチは、ファイアーフォンやペッツ・ドットコムのような大失敗も数多く生み出してきた。

企業が常にイノベーションを続けていれば、成功した賭けがもたらす利益は、失敗による損失を補って余りあります。長期的なチャレンジをいくつもしていれば、大失敗をして何十億も失ってもリカバリーできることをベゾスは証明しました。

ベゾスのように成功したCEOは単に長期的に行動したいから、長期的に行動しているのではありません。長期的に行動することで得られるものこそが、彼らにとって重要なのです。長期的な視野に立つ企業は、競合企業を飛び越して、5年後、10年後、さらには15年後にある明るい未来の中に、自らを位置付けています。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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