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ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」
著者:アルバート=ラズロ・バラバシ
出版社:光文社
本書の要約
アイデアを形に転換する能力(Qファクター)とアイデアの未知の値rを掛け合わせることで、成功の可能性がわかります。Qとrの両方の値が高いならば、あきらめずにやり続けることで成功できるようになります。才能とアイデアに不屈の精神とネットワークの力が加われば、成功できることを本書は教えてくれました。
ミドル世代以降でも成功できる理由
どんな成功物語の根底にも「成功の法則」があり、一見ランダムに思える現象を、その法則が見えない方法で動かしていることを知った。こうして自分が何を知っているのかを知ったあなたは、成功に向き合える素晴らしい機会を手に入れた。ただひたすらパフォーマンスを強化しようと呼びかける、自己啓発のレトリックに惑わされることなく、目的とニーズに合った戦略を使って未来にアプローチできるのだ。運動の法則を活用すれば、エンジニアがより優れた航空機をつくり出せるように、「成功の法則」を活用すれば、あなたもよりよい成果を生み出せるのである。(アルバート=ラズロ・バラバシ)
理論物理学者のアルバート=ラズロ・バラバシのザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」を再読しています。 著者と研究者チームは、数年の月日を費やして、人間の功績にまつわる膨大な量のデータを集め、人が成功する仕組みを分析し、以下の5つの成功原則を明らかにしました。
1、パフォーマンスが成功を促す。パフォーマンスが測定できない時には、ネットワークが成功を促す。
2、パフォーマンスには上限があるが、成功には上限がない。
3、過去の成功 x 適応度 = 将来の成功
4、チームの成功にはバランスと多様性が不可欠だ。しかし、功績を認められるのはひとりだけ。 誰の功績かを決めるのはパフォーマンスではない。社会がどう評価するかだ。
5、不屈の精神があれば、成功はいつでもやってくる。
今日はこの中から、不屈の精神と成功の関係について学びたいと思います。特に後半でご紹介するS=Qrという方程式を覚えておくとよいでしょう。
分析化学者のジョン・フェンは50歳でイェール大学の教授になった遅咲きの研究者です。
最初の論文は32歳。
35歳の時に初めてプリンストン大学から声がかかる。
50歳でイェール大学に移る。
67歳の時には、イェール大学を非常勤となって、研究室も実験助手も取り上げられる。
70歳の時に定年退職。
勤勉で熱心な態度にもかかわらず、フェンの論文が大きな影響を与えることはありませんでした。彼は決してあきめることなく地道に研究を続け、67歳の時に「エレクトロスプレーイオン化法」と名づけた新技術の論文を発表しました。これは液滴を高速ビームに変えることで、巨大分子やタンパク質の質量を即座に、正確に測定できる技術でした。細胞の分子成分に爆発的な関心が集まり、フェンの技術はたちまち世界中の研究室にとって、なくてはならないツールになったのです。
イェール大学の名誉教授として嫌々時間を潰したあと、公立研究大学のヴァージニア・コモンウェルス大学に移りました。この大学はフェンを快く迎え入れ、誰にも邪魔されず に研究に打ち込む環境をつくってくれました。
フェンはここで、革命的な功績を残しました。初期のアイデアを改良して、研究者がリボソームやウィルスの質量を、以前には考えられなかったほど正確に測定できる安全な方法を編み出しました。フェンの晩年の研究によって、人間の細胞の働きにまつわる理解を大きく変えたのです。67歳の論文発表から18年後の2002年に、85歳になったジョン・フェンはついにノーベル化学賞を受賞したのです。
「成功の第五の法則」は、粘り強く努力し続ける人の有利に働くことで、フェンがまさにこれを証明しました。彼に師事した化学者のキャロル・ロビンソンは、93歳でこの世を去ったフェンを偲んで、彼は決して情熱を失わなかったと書いています。
若い時には失敗を繰り返したにもかかわらず、人生の後半で成功した人はたくさんいます。
■俳優のアラン・リックマンが初めて映画に出演したのは42歳の時。
■レイ・クロックがマクドナルドのフランチャイズ権を獲得して、最初の店を開いたのは53歳の時。
■ネルソン・マンデラは年の獄中生活の末に釈放後、67歳の時に南アフリカ共和国の大統領に就任。
■料理研究家のジュリア・チャイルドは、50歳で初めて自分のテレビ番組を持った。
S=Qrという成功法則
新しいプロジェクトは常にアイデアとともに始まる。どんな創造的分野であろうと、それは変わらない。まずはアイデアがひらめく。そして、その優れた思いつきを世に送り出す方法について頭を絞る。だが、そのアイデアの重要性や斬新さは、いつも前もってわかるわけではない。そこで、そのアイデアを、「ランダム・アイデア」の頭文字を取って「r」と呼ぼう。rはその価値を表す数字である。
アイデアをつくるだけでは、結果を出せません。それをかたちにして、役立つ製品を生み出す能力がなければ、意味はありません。「アイデアを形に転換する能力」は、優れたアイデアと同じくらい重要であり、その能力は人それぞれ異なります。著者はその能力を「Qファクター」と名付けました。
人はそれぞれ「ランダムなアイデア」rを持ち、それぞれのスキルを使って、アイデアから「成功」すなわち「S」を生み出します。Sは世界に与える影響力の大きさを表します。
ふたつの要素アイデアの未知の値rとその人のQファクターが一緒に働いて、プロジェクトの最終的な成功Sを生み出せるようになります。アイデアの値rと自己の能力のQを掛け合わせることで、成功の可能性がわかるようになるのです。
S=Qr というシンプルな方程式を活用すれば、成功するかどうかが見えてきます。アイデアが素晴らしく、rの値が大きいにもかかわらず、個人のQファクターが低い場合には、社会に及ぼす影響は小さなものになります。Qファクターが低ければ、いくらアイデアが面白くても結果につながりません。
アイデアは素晴らしいが、アイデアをかたちにする能力はお粗末であると成功は遠ざかります。アップルが発売した、世界初の個人用携帯情報端末ニュートンは、アイデアは面白かったのですが、手書き認識機能がお粗末だったため、販売実績は振るわず、スティーブ・ジョブズも撤退に追い込まれました。
個人のQファクターが高いにもかかわらず、二流品や欠陥品を生み出すこともあります。アップルリサ、NeXT、G4キューブ、モバイルミーなど、天才と言われるスティーブ・ジョブズでもアイデアで墓穴を掘っています。どれほどQファクターが高くても、rの値が低ければ、製品の評価は低くなってしまいます。
成功はrもQファクターも高い時に起こることを証明したのがiPhoneでした。スティーブ・ジョブズも数々の失敗を重ねながら、iPhoneという鉱脈を手に入れたのです。
rもQファクターも高く、相乗効果が期待できる時には、人生最高の画期的な製品が生まれやすい。まさしくiPhoneがそうだろう。非凡なアイデアと、アイデアをかたちにする素晴らしい能力とが組み合わさって誕生したiPhoneは、ジョブズの名声を刻む傑作となった。
著者は、キャリアを積めば、Qファクターは増大すると考えていましたが、著者の研究の結果、科学者のQファクターには時間を経てもまったく変化しないことがわかったのです。今やっている仕事と自分のQファクターがマッチしないことがわかったら、自分の才能が活かせる場所を探しましょう。もし、その仕事にこだわると貴重な時間を無駄にしてしまいます。一方、Qファクターが輝くような職業や分野を選んだ場合には、あきらめさえしなければ、成功できると言うことです。
著者は成功を掴む人は、プロジェクトに何度も挑戦していると言います。彼らは宝くじをたくさん買い(運を高めること)、失敗を気にせず、チャレンジを続けていたのです。
Qファクターは色裾せない。常に変わらないため、本当に成功する人は、新しいrを何度でも選んで、適応度の高い成果を絶えず生み出す。高いQファクターに、ジョン・フェンのような不屈の精神が合わされば、「成功の第五の法則」が原動力となって、生涯にわたる成功が掴める。
シェイクスピアやイーロン・マスクやエジソン、キュリー夫人やアインシュタインは、ひとつの作品やひとつの発見で名前を知られているわけではありません。彼らが 高く聳え立つのは、非凡なQファクターのおかげであり、自分の運を何度でも積極的に試そうとしたからです。
Qファクターをうまく利用するためには、協力が欠かせません。ネットワークを活かして、プロジェクトに参加してもらうことで、プロジェクトは続けられ、Qファクターの力を活用できるようになります。「成功は集団的な現象」であると考え、質の高い仕事や才能ある人と組むようにしましょう。
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