効果的なチームづくりのために必要なたった2つのこと。


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ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」
著者:アルバート=ラズロ・バラバシ
出版社:光文社

 

本書の要約

効果的なチームづくりのためにはバランスと多様性、リーダーシップが欠かせません。組織で重要なことは、メンバーが互いに信頼関係を築き、みなが平等に貢献できる機会をメンバーに与えることなのです。卓越したリーダーが必要な理由がここにあります。

多様な才能が集まることで、ヒット作品が生み出される!

理論物理学者のアルバート=ラズロ・バラバシザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」を再読しています。 著者と研究者チームは、数年の月日を費やして、人間の功績にまつわる膨大な量のデータを集め、人が成功する仕組みを分析し、以下の5つの成功原則を明らかにしました。

1、パフォーマンスが成功を促す。パフォーマンスが測定できない時には、ネットワークが成功を促す。
2、パフォーマンスには上限があるが、成功には上限がない。
3、過去の成功 x 適応度 = 将来の成功
4、チームの成功にはバランスと多様性が不可欠だ。しかし、功績を認められるのはひとりだけ。 誰の功績かを決めるのはパフォーマンスではない。社会がどう評価するかだ。
5、不屈の精神があれば、成功はいつでもやってくる。

今日はこの中から、バランスと多様性とリーダーの役割について考えてみたいと思います。バラージ・ヴェデレシュは、ジャズのコラボレーションと成功の関係について研究を行いました。ヴェデレシュはジャズの歴史を調べ、1890年代から2010年までに行なわれた、10万回を超えるレコーディング・セッションを分析しました。彼は「アルバムの再販回数」を成功の測定基準に、アルバムづくりに参加した共同制作者の多様性と、成功との直接的な関係を発見しました。

今では音楽においては、共同作業が当たり前になり、一つの楽曲に様々な才能を持った人たちが加わっています。ヴェデレシュは、音楽によく似た力学をビデオゲームの開発でも確認しています。画期的な製品を生み出すために、彼らはチームメンバーを頻繁に入れ替えていたのです。音楽やビデオゲームの世界では、約束ごととイノベーションとのバランスを保つことで、ヒット作を生み出していました。

慣れ親しんだ要素がなければ、ユーザーはゲームでうまく遊べません。しかし、目新しさがなければ、ファンはすぐに飽きてしまい、やがて離れていきます。適度な新しさでユーザーを喜ばし、大ヒットを生み出すために、ゲーム業界では多様なスキルをもった幅広い分野の人材を集めているのです。

チームがうまくいくためには、メンバーの何人かがすでに一緒に働いた経験が必要です。それによって、共通の体験や緊密な関係と多様性の両方を実現します。古いメンバーと新人、信頼できる仲間と初めて参加する顔見知りを混在させ、強いチームを作ることでヒット作が作られるのです。

著者の仲間のブライアン・ウジーも引用回数の多い論文はひとりの天才ではなく、チームによって書かれていることを明らかにしました。著者もプロジェクトを進めるために、10人から20人もの研究者をいつも招くそうです。学生、ボスドク、教授、みながシームレスに協力することで、はじめてプロジェクトを成功に導きます。

しかし、チームの多様性だけでは結果を残せません。そこに強い絆があることで成果を得られます。リーダーには、多様な才能を掛け合わせ、メンバーがお互いに信頼できるような環境づくりが求められます。リーダーシップがない組織はいくら多様性があっても、ゴールに辿り着くことはできないのです。

効果的なチームづくりのために必要なたった2つのこと

ジェイムズ・バグローはギットハブというソフトウェア開発のプラットフォームでフォロワー数を使ってチームの成功を分析しました。学会の論文の引用回数と同様に、フォロワー数はそのプロジェクトに対するコミユニティの反応を表すとバグローは考えたのです。

■フォロワー数の多いプロジェクト→「成功」
■フォロワー数の少ないプロジェクト→「失敗」

調査結果を見るとごく一部のプロジェクトが上限のない知名度を獲得し、それ以外のプロジェクトはほとんど無名も同然だったのです。これは著者が成功事例にあげた2つ目のルール「パフォーマンスには上限があるが、成功には上限がない」という考えにフィットします。

ギットハブにおいて、ソフトウェアをチームで開発することには明らかな利点がありました。 チームのプロジェクトは、ひとりのプロジェクトよりもずっと成功し、チームの規模が大きければ大きいほどフォロワー数も多かったからです。ギットハブでは、チームの各メンバーがプロジェクトに対して行なった貢献度も追跡しているため、バグローはチームの誰が作業の大半をこなしているのかも把握できました。

そのデータを分析した時に、メンバーの貢献度がひどく偏っていることがわかったのです。多くの場合、プログラミングの大部分をひとりが担っていました。チームが大きければ大きいほど、1人の力に依存していたのです。メンバーの数が増えれば増えるほど、1人のリーダーの貢献度も高かったのです。

そのような偏りは、ギットハブだけの現象ではありません。ウィキペディアの記事は、1ページに ついて数十人、時には数百人の編集者が書いています。ギットハブと同じように、ウィキペディアでも各編集者の書き込みを追跡しているため、どの編集者がどの程度、書き込んだかがわかる仕掛けになっています。

ウィキペディアでは、ほとんどの編集者が、一部の語句を書き換えたり新しい情報を追加したりして、ほんの少し手を加えるだけであるのに対して、ひと握りの編集者がひとりで記事を書き、編集するなど大部分の作業を担当していました。

バグローがギットハブで学んださらに重要な発見は、リーダーの貢献度がチームの成功に重大な影響を及ぼすことでした。大きな成功を収めるプロジェクトには、プログラミングの目的に関係なく、「リーダーがこなす作業が多ければ多いほど、プロジェクトは成功していた」という共通点があったのです。バグローの研究が示すように、チームの成功に欠かせないのは、リーダーであり大部分の仕事をこなす人です。

実は、リーダーの数は多過ぎても結果が出ないことがわかっています。リーダーが多いほど失敗が起こりがちです。強者のエゴがぶつかることで、チームワークが乱れ結果を出せなくなるのです。

著者は効果的なチームづくりのためには2つの要素が欠かせないと指摘します。
1、バランスと多様性
2、リーダシップ

現代のようにチームがますます大きく、距離的に広がりのあるものになった時代に、チームサイエンスは、最大の成果をあげるための的確な助言を与えてくれる。すなわち「リーダーを信頼して、そのまわりに専門的で多様な支援体制を築く」ことだ。ビジョナリーのリーダーがいなくとも、チームは仕事をこなせるかもしれない。だが、画期的なイノベーションを生み出し、プロジェクトが永遠の名声を残すことは難しい。 だが、リーダーの存在だけでは充分ではない。あるいはプロジェクトに多様な考えや経験や視点を持ち込む、適切な協力者の組み合わせだけでも充分ではない。その両方が必要なのだ。

集団的知性はチームプレイヤーの上に成り立ちます。彼らはビジョナリーとともに働き、意見を戦わせ、相手の考えに耳を傾け、多様な視点を提起します。

チームを集めてうまく運営することは、プロジェクトの成否を分ける難しい科学なのです。言い換えれば、チームを成功に導くためには”ベストプレイヤー”がいても充分ではありません。意外なことに、オールスターチームではプロジェクトはすぐに頓挫します。組織で重要なことは、メンバーが互いに信頼関係を築き、みなが平等に貢献できる機会をメンバーに与えることなのです。卓越したリーダーが必要な理由がここにあります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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