スキルペディア 360度の視点で能力を哲学する絵事典
村山昇
ディスカヴァー・トゥエンティワン
本書の要約
世の中の課題を発見し、それを解決するためには、自らビジョンを示し、組織を導く必要があります。やらされ仕事から抜け出すためには、何で人々に貢献できるかを徹底的に思考することが求められます。自分のスキルを磨き、それを掛け合わせることで、周りの人から感謝されるようになります。
価値創造回路を広げよう!
価値創造回路に広がりを持ち、諸能力を一点に向かって統合的に使える人が優れたアウトプットを出せる人です。(村山昇)
人を樹木にたとえると、 “自分の表現”という花を咲かせ、“豊かな成果”に結実させるには、 “太く堅い幹”や“広く深い根”が必要だと著者の村山昇氏は指摘します。私たちが企業やノウハウ本から学ぶ実務スキルの多くは“枝や葉”でしかありません。
本当に人から信頼され、仕事で感謝されるようになるためには、”幹や根”の部分を育てる必要があります。自分ならではの能力を高めるためには、ケーススタディを学ぶだけでは難しく、様々な能力を鍛え、それを組み合わせなければなりません。自らのパーパスやビジョンを明らかにし、そのために学び続けることで、”幹や根”をしっかりしたものにできます。
著者は「自分らしく強い仕事をする44の能力」を本書で紹介しています。その中から私が刺激を受けた能力を紹介しながら、自分を成長させる方法について考えてみたいと思います。
良い記事が生み出したければ、下流過程の「書く」能力に長けているだけでは不十分で、よく「しり」、よく「読み」、よく「考え」、よく「組み合わせる」ことが欠かせません。そしていったん書いては、また、「読む」に戻ったり、「問う」に戻ったりしながら、ようやく、よく「書ける」ようになります。
「しる」ことには段階があります。浅いところの「知る」は、データ・情報の断片を持つか持たないかという「have」的なレベルです。そこから一段深い「識る」は、人間を合理的な方向に動かす作用があります。すなわち「do」的な影響を及ぼすものです。(省略)最も深い「智る」レベルになると、そこは「be」的なレベルになります。内奥から湧いてくる英知(叡智)はその人をあるべき方向へと導きます。
有名な野中郁次郎/竹内弘高の「SECIモデル」を身につけ、活用することで知識創造を実践できるようになります。
組織員1人1人が持つ暗黙知が、[共同化:Socialization]→[表出化:Externalization]を経て組織全体の形式知となり、形式知はさらに[連結化:Combination]→[内面化:lnternalization]を経て暗黙知にります。そしてまた次の循環が始まり、知識が進化・深化していき、組織はつよくなれるのです。
自分の外に目に見える形でアウトプットされたものは、他者のフィードバック(評価・反応・アイデア)を受けられるようになり、それを自分の内で練り直しが起こり、それをアウトプットすることで、知恵が深まります。
真に考える時間を持つことで、他の活動と溶け合って人間の精神のはたらき全体によい影響を与えることができます。他者との交流からも思考は影響を受けますから、つながる力も強化すべきです。変化に適応し、課題を解決するためには、様々な人のサポートが欠かせません。
自己が変われば環境が変わるし、環境が変われば自己も変わります。人間関係が硬直化していては、イノベーションは起こせません。過去の常識やネットワークにこだわるのはやめ、新たな世界に踏み出しましょう。
変化やチャレンジを恐れるのをやめ、自分がやりたいことをアウトプットすることで、他者との関係を変えられます。ビジョンを示すことで、それに共感した人から応援してもらえるようになります。
発想力を高めるために必要なこと
発想はある意味、組み合わせ(A+B)や掛け合わせ(A×B)から起こります。大胆な発想というのは、特に後者の掛け合わせによって全く新しいものが創発される場合が多い。すなわち「既知の物事×既知の物事→未知の創発」あるいは「既知の物事×未知の物事→未知の創発」といった具合です。
アイデアを生み出すためには、要素と要素を掛け合わせる必要があります。発想は常に自分が内に持っている「既知の物事」をべ一スになりますから、自分の知識や体験をより多く蓄積することが重要になります。「既知の物事」を素材としてどれだけ豊かに蓄えているかが、発想する力の差になるのです。良いアイデアのためには、経験知を増やすことが欠かせません。
発想技術・経験蓄積・心の準備状態の3要件を満たし、自分をある臨界点まで追い込むとき、すばらしいアイデアと出合う確率が高まります。
奇想天外の発想力で数々のアニメーション作品、テーマパーク事業を世に生み出したウォルト・ディズニーは、自身の内に3つの人格を備えていたといいます。1つは「夢想家」、もう1つは「実務家」、さらに「批評家」です。
彼はこれら3つの人格を内面で激しく戦わせていくことで、アイデアを次々に実現していきました。組織の中では、この3つの役割を個々のメンバーで担うことで、結果を出せるようになります。競合品との差別化が難しく、コモディティ化がますます進む昨今の製品・サービス開発において、夢想家の役割がとても大きくなっています。
自分のパーパスやビジョンを明らかにし、それを成就させるためには、思考する力と意志の力を徹底的に活用すべきです。
知識・スキルは手段であり、道具です。知識・スキルによって、ライフワークを掘り起こしていく、ほんとうの自分というものを彫刻していく、それが目的です。そして気がつけば、ちゃんと食えている。さらにはその仕事ぶりによって周囲から感謝もされる。それが人生100年時代における理想のキャリアの体現であると私は思っています。
世の中の課題を発見し、それを解決するためには、自らビジョンを示し、組織を導く必要があります。やらされ仕事から抜け出すためには、何で人々に貢献できるかを徹底的に思考することが求められます。自分のスキルを磨き、それを掛け合わせることで、周りの人から感謝されるようになります。失敗を恐れず、行動を続けるうちに、ビジョンを達成できるようになります。
著者の知識やスキルだけでなく、人の能力の根幹にある「マインド・観」を磨くことの重要性に気づけました。「在り方」にこだわり、自分という可能性を耕し続ける人が、人生をエンジョイできるのです。精神のない専門家ではなく、ビジョンを実現するために学び続ける人を目指します。
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