アリンダム・バッタチャヤのBCG「最強(グレート)」を超える戦略 不確実な時代を勝ち抜く9原則の書評


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BCG「最強(グレート)」を超える戦略 不確実な時代を勝ち抜く9原則
著者:アリンダム・バッタチャヤ,ニコラス・ラング,ジム・ヘマリング
出版社:日経BP

本書要約

BCGでは長期的に繁栄し、予期せぬ課題やショックにも打たれ強くなり、社会的、環境的ニーズにより良く対応する戦略をつくるために、新しいプレイブックを採用しています。企業は同社の3つの領域の9つの戦略を実践することで、よりグレートな存在に成長できるのです。

なぜ、企業はグレートを超えなければならないのか?

企業は成長戦略、オペレーション・モデル、組織構造の観点で、20世紀の「グレート」の定義を超えて、新しい21世紀の優位性の形を構築する必要がある。 (アリンダム・バッタチャヤ,ニコラス・ラング,ジム・ヘマリング)

現代のようなVUCAな時代には、変化に適応し続ける必要があります。環境が激変する中、企業はさまざまな課題を乗り越えなければ、長期的に持続できません。私たちはさまざまなステークホルダーを満足させなければならないのです。顧客や社員から支持されるだけでなく、投資家からも評価されるためには、TSR(株主総利回り)を意識する必要があります。

企業はレジリエンスを養い、全ステークホルダーにインパクトも与える形で、成長やオペレーション、組織について再考しなければ、今後、生き残れなくなっていくはずです。

BCGでは長期的に繁栄し、予期せぬ課題やショックにも打たれ強くなり、社会的、環境的ニーズにより良く対応する戦略をつくるために新しいプレイブックを採用しています。企業は以下の3つの領域の9つの戦略を実践することで、よりグレートな存在に成長できるのです。

①グレートを超えて成長する
・コア事業での社会的インパクト
・デジタルソリューションによる顧客体験(CX)の刷新
・脱平均のグローバル戦略

②グレートを超えて活動する
・バリューウェブ構築
・グローバルデリバリーモデルの多様化
・グローバルなデータ・アーキテクチャと分析能力の獲得

③グレートを超えて組織をつくる
・プラットフォーム型組織への進化
・デジタル人財の獲得・育成
・変革の常態化 

グレートな企業はというと私たちはGAFAをすぐに思い浮かべますが、歴史のある企業や新興国にもグレートな企業は存在します。農業のジョンディアは、新しいデータ集約型商品・サービスを開拓し、それを提供できるように社内をつくり変えています。

ペプシコやマスターカードなどの業界リーダーも時代にフィットした新しいパーパスを定義し、成功戦略を採用しています。ペプシコはサステナブルで社会的責任を果たす経営により繁栄できるように構造改革を行い、マスターカードは金融サービス業界に破壊的変化をもたらす機敏なフィンテック企業と競争できる態勢を整えています。

インドのソフトウエア・サービス企業のタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)は変化を先取りし、顧客にとって全面的な戦略パートナーになるために、広範にわたる一連の変革に着手してきました。

TCSは積極的に社会に貢献するという大きな決意とともに、現在進めているさまざまな変革の取り組みによって、卓越した価値を株主に提供し続けています。2009年から2020年にかけて、同社の時価総額は10倍以上に急増し、同社の時価総額はグローバルITサービス企業の中でも最大クラスになっています。

グレートを超える企業の9つの戦略

BCGはグレートを超える企業の9つの戦略を明らかにしています。
①社会的インパクトを中核事業とは異なる領域の活動と見なすのではなく、社会的インパクトを及ぼすことで長期的かつ持続的なTSRを実現するために、中核事業を再構想します。善い行いをコア戦略やオペレーションに思慮深く統合できる企業は、すべてのステークホルダーにプラスの影響を与えながら、持続的に高い株主利益をもたらします。

②物理的製品・サービスだけでなく、魅力的なデジタル・ソリューションと体験を提供します。今日の最先端企業は、顧客にとっての成果と体験を完全に掌握しています。デジタルテクノロジーを活用して、満たされていないニーズを充足するためにユーザーの利用ライフサイクルに深く入り込み、物理的製品・サービスに新しいソリューションを結びつけるか、物理的製品・サービスを完全に置き換えようとしています。

③すべての地域で一斉にではなく、選択的に(つまり、利益を出しながら市場シェアを獲得できる地域で)現地の環境に適したやり方で成長します。最先端企業は、アセットライト(資産保有を最小限にすること)、デジタル、EC中心のビジネスモデルを用いて、新市場に参入し急拡大しています。

④顧客が強く求めるソリューション、成果、体験をつくり出し提供できる新しいダイナミックなバリューウェブで、従来のバリューチェーンを補完します。

⑤複数地域のハイテク工場や物流センターに投資を行い、低コストのキャパシティと組み合 わせて、商品をカスタマイズして素早く届けられるようにします。

⑥グローバルなデータ・アーキテクチャと分析能力を構築します。最先端企業は、グローバルデータを、将来の業績や消費者行動を予測するだけでなく、勝てるバリュープロポジションを推進するための大事な動力源と見なしています。

⑦従来のマトリクス型組織モデルから脱却し、プラットフォームの組織能力で支えられた顧客起点のアジャイル・チームを導入します。

⑧デジタルに精通した意欲の高い人材を獲得し、再訓練し、動機づけ、権限と力を与えます。

⑨従来の1回限りの変革プロジェクトではなく、常時継続のトランスフォーメーションを進めます。

また、サスティナブルが企業にとってますます重要な経済指標になっています。

従業員や投資家も企業により多くを求めている。トップ人材は、変化を起こしたいという情熱を分かち合える企業に魅力を感じている。ある調査では、若手の従業員や学生の92%が環境に配慮する企業で働きたいと志望していた。投資家も同じく、企業によりサステナブルな戦略を立てるよう声高に要求している。ある調査によると、投資家の80%は資本を振り向ける先を選択するときに、価値観に基づいて意思決定するという。

サステナブルなビジネス戦略を追求する企業は、競合より大きなリターンを得ています。近年では、多くの大手投資会社のCEOがサステナビリティを考慮した投資戦略をとる意向を表明しています。

ブラックロックのCEOのラリー・フィンの言葉を読むと、サステナブルに注力しない企業は生き残れなくなることがわかります。

ステークホルダーに対応せず、サステナビリティのリスクに対処しない企業や国は時間とともに市場からますます疑いの目を向けられるようになり、その結果、資本コストが高くなるだろう。対照的に、透明性を高め、ステークホルダーへの対応力を示す企業や国には、より質が高くより忍耐強い資本をはじめとして、 より効果的に投資が集まるだろう。ラリー・フィン

現代の企業はよりグレートになるために、善い行いをしてTSI(トータル・ソサイエタル・インパクト)を最大化しなければなりません。

BCGの調査によると、社会的責任を果たしている先進企業は、並外れた成長と株主価値も実現しながら、社会的インパクトを最大化するために、次の3つの道筋を単独もしくは、組み合わせて活用していることが明らかになりました。
①商品やサービスへのアクセスの拡大
②社会的ニーズ主導型イノベーションの推進
③経済的機会の創出を目的とする現地政府との協働

グレートを超える企業は、変革の「ヘッド(頭)、ハート(心)、ハンド(手)」と私たちが名付けた常時継続のトランスフォーメーションモデルを採用している。このモデルでは、企業は3つの異なる課題に取り組む必要がある。①自社にとって望ましい未来とそこにたどり着く方法を思い描く(ヘッド)。②継続中の変革の取り組みの背後にいる従業員を動機づけ、力を与える(ハート)。③敏捷性を持って実行しイノベーションを起こす組織能力を構築する (ハンド)。最先端企業は常時継続のトランスフォーメーションに卓越するために、この3要素のすべてに徹底的に対応している(過去にそうしてきた企業はかなり少ない)。

■ハート、ヘッド、ハンドという3つの課題
①ハート
企業は常時継続のトランスフォーメーションを成功させるためには、パーパス、カルチャー、共感、リーダーシップを意識しなければなりません。現代の企業は「ハート」をトランスフォーメーションの重心に据える必要があるのです。

②ヘッド
リーダーは、長期的な目標を設定し、理想の姿に到達するために、優先事項と重要事項を明確にし、それを言語化しなければなりません。(ヘッド)

③ハンド
常時継続のトランスフォーメーションを実行し続けるには、アジャイルを強化することが欠かせません。リーダーは新たな組織能力を育成し、強力なガバナンスモデルを適用し、イノベーションを起こす組織を築かなければならないのです。

BCGが定義した9つの戦略を実践することで、企業はよりグレートな存在になれます。顧客、社員、パートナーを満足させる存在になることで、企業は長期的な成長を実現できるようになります。リーダーはその際、ハート、ヘッド、ハンドの常時継続のための3つ課題を意識すべきです。SX(サスティナブル・トランスフォーメーション)が偉大な企業になるためのキーワードになってきました。

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