創造力を民主化する たった1つのフレームワークと3つの思考法(永井翔吾)の書評


創造力を民主化する たった1つのフレームワークと3つの思考法
永井翔吾
BOW&PARTNERS

本書の要約

「課題」と「解決方法」に分解し、そのフレームワークの上で、「統合思考」、「アナロジー思考」、「転換思考」の「3つの思考法」を自由自在に組み合わせていくことで、発想が無限に広がっていきます。統合思考とアナロジー思考でアイデアを生み出し、それを転換させることで創造性は飛躍的にアップします。

創造力を発揮するためのシンプルな方法とは?

創造力とは、一部の才能のある人に授けられたギフト(天賦の才能)ではなく、みな一人一人に備わっているものなのです。(永井翔吾)

クレイトン・クリステンセンは、「こと創造性に関する限り、生まれよりも育ちなのだ・・・イノベーションに必要な能力のほぼ3分の2が学習を通じて取得できる」と述べています。

創造力を伸ばすことは難しいと考えられがちですが、実はアイデアを生み出す方法はいくつもあり、学ぶことが可能です。著者は創造性を発揮するためには、「1つのフレームワーク」と「3つの思考法」を使い倒せばよいことに気づきます。

全ての物事には、その物事が解決しようとしている「課題」や目指している「目的」、そして、その課題を解消したり、目的を達成したりするための「解決方法」があるのです。

■課題→「Who(どんな人が)」「Where(どんなところで)「When(どんなことをしているとき)」の3つのWの組み合わせで作られるシーンにおいて発現

■解決方法→「What(何を使って)」「How(どのように〉」の組み合わせによって決まる。

「課題」と「解決方法」に分解し、そのフレームワークの上で、「統合思考」、「アナロジー思考」、「転換思考」の「3つの思考法」を自由自在に組み合わせていくことで、発想が無限に広がっていきます。

アイデアを生み出すためには、要素と要素を組みわせることが欠かせません。創造力を鍛えるためには、色々なものをつなぐことを意識すればよいのです。5W1Hを使って、課題と解決方法の新しい組み合わせを見つけるようにしましょう。

3つの思考法を組み合わせよう!

①統合思考→トレードオフの課題をはじめ、さまざまな課題を同時に解決しようとする考え方です。課題を本源的な欲求のレベルまで、構造的に考えることで、幅広い解決法が導けます。

個別の課題を細かく分解するのではなく、周辺の課題まで包括することがポイントになります。Who、Where、Whenの抽象度を高めていくことで、ニーズの抽象度も高まり、より大きな課題を定義でき、ビジネスの可能性を広げてくれます。思考を上位の目標に向けることで、新たな解決策が見つかるようになるのです。

課題はWho、Where、Whenの組み合わせで生まれます。この3つの抽象度を上げ、登場人物を置き換えたり、軸をずらすことで、新たな課題を定義でき、そこから解決策を発見できるようになります。

トレードオフの課題を解決することでイノベーションが起き、そして、そこからさらに、トレードオフのニーズを取り込み、次なるイノベーションが起きる。この連鎖がイノベーションの歴史であると言えるのです。私は、このイノベーションの連鎖の歴史を勝手に「イノベーション・スパイラル」と呼んでいます。

トレードオフからイノベーションを起こすこともできます。 ソニーのウォークマンは、「移動したい」と「音楽を聴きたい」というトレードオフのニーズを解決しました。その結果、「移動しながら音楽を聴く」という体験はスタンダードになりました。

しかし、ウォークマンでは聴ける音楽の数には限界がありました。アップルはiPodでその課題を解決しました。「移動しながら音楽を聴きたい」「その際、より多くの曲を聴きたい」というトレードオフのニーズを満たすことで、アップルは多くの顧客の支持を得たのです。

トレードオフの課題やニーズを見つけるためには、以下の3つのステップを実践しましょう。

1、現状、抱えている課題やニーズを可視化します。大小さまざまに可視化する。

2、可視化した課題やニーズの中から、統合すべき課題やニーズを選択する

課題やニーズを解決したときにインパクトが出るように、
a 課題やニーズの重要性
b 課題やニーズのトレードオフ関係の強さの二つの基準で、統合する課題やニーズを判断する。

解決しようとしている課題やニーズが重要であればあるほど、大きな価値を生み出すことができます。そして、トレードオフ関係が強ければ強いほど統合することが困難であり、新しい価値を生み出せるようになります。

3、うまく組み合わせが作れない場合、以下の2つの視点で考える。
a 選択した課題やニーズの真逆の状況を考えた上で、その状況の構成要素を考える。
「安く食事をしたい」というニーズがあるとします。このニーズの真逆の状況は、「費用が高い食事」です。そこで、「費用が高い食事」を構成する要素を具体的に考えてみます。「美味しい料理」や「高級なレストランの内装」などが思い浮かびます。ここから「安く食事をしたい」というニーズと「美味しい料理が食べたい」というトレードオフの関係の組み合わせを見つけることができます。

b 選択した課題やニーズを実現する際に、その真逆の要素を考える 何が制約(ボトルネック)になるのかを考えて、その真逆の要素を考える。

コロナ禍の中、プロの美味しい料理を食べに行くことができなくなりました。制約の真逆の自宅でも食べるというニーズを満たすことで、シェフの派遣サービスが一気に拡大したのです。

②アナロジー思考→類似する他の物事と結びつけて新しい発想をしたり当該物事の理解を深めようとしたりする考え方です。

このアナロジー思考を使うことにより、他の人では思いつかないような物事の繋がりや共通点を見つけて、新しい発想を生み出せるようになります。

③転換思考→先入観や思い込み、常識を捨てて、新しい枠組みで物事を捉える考え方です。もう少し噛み砕くと、常識を真逆にひっくり返したり、ずらしたりして物事を捉える考え方です。

転換思考は思考を一気に真逆に振る大胆な思考法です。最初は、すぐにいい発想に至らなくても気にせずに、このように思考の幅を広げていくことで、常に大胆な発想をしていきましょう。

シーンを構成する3つのW(Who、Where、When)を転換することで、課題も転換し、発想が広がることで、思ってもみなかった解決策が生まれるようになります。課題だけでなく、解決策のWhatとHowを転換することで、解決策は広がります。

ブレストを通じて生まれたアイデアを深掘りする際に、この転換のメソッドを使うことで、アイデアの質と量が変わります。Who、Where、When、What、Howを転換することで、常識破りのアイデアが生まれるようになります。

統合思考とアナロジー思考でアイデアを生み出し、アウトプットを積極的に行うこと、それを転換思考を使って、変化させることで、創造性は飛躍的にアップします。本書には、私が広告会社で学んだアイデアの作り方が、わかりやすく説明されています。著者が紹介しているケーススタディとその解説も面白く、多くの学びを得られます。



この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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