DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略(小野塚征志)の書評

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DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略
小野塚征志
インプレス

本書の要約

「DX戦略」とは、その目指す姿を実現するためのシナリオです。企業としての目指す姿をアイデンティティとして再定義し、新たなビジネスモデルを創造するのです。DX戦略で成功するためには、「需要性」「経済性」「先行者優位性」「競争優位性」「戦略性」の5つを充足させるようにしましょう。

DXの4つのプロセス

目先のデジタイゼーションやデジタイゼーションだけを夕一ゲットにビジネスの革新を進めると、将来使わないデジタル技術に投資を実行してしまう可能性があります。コーポレートトランスフォーメーションやインダストリアルトランスフォーメーションを成し遂げたあとの目指す姿を具体化したうえで、その実現に向けた「DX戦略」を策定する。そうすれば、より計画的かつ合理的に進化できるはずです。(小野塚征志)

DXによりビジネスモデルを発展させることが可能になり、企業は飛躍的に成長できるようになります。GAFAの成功も、DXによるビジネスモデルの創造が大きな要因になっています。しかし、本来、手段であるはずのDXを目的化すると安易にツールを導入するだけで、結果を出せなくなってしまいます。

戦略コンサルタントの著者は、正しいDXを実現するためには4つのプロセスを経る必要があると述べています。DXには以下の4つの段階があることに留意して、自社の戦略を描くようにしましょう。

①DX1.0:デジタイゼーションによるビジネスプロセスのデジタル化
デジタル技術を活用することで、ビジネスプロセスをアナログからデジタルにシフトさせます。

②DX2.0:デジタライゼーションによるビジネスモデルの変革
モノ売りからコト売りへの転換、プラットフォームの構築などを行います。収益を得るための方法や差別的優位性の源泉などを変えることで、ビジネスとしての競争力を高めることがポイントになります。

③DX3.0:コーポレートトランスフオーメーション

コーポレートトランスフォーメーションでは、誰に、どのような価値を、どうやって提供する企業を目指すのかを考えることが大切です。「DX戦略」とは、その目指す姿を実現するためのシナリオです。企業としての目指す姿をアイデンティティとして再定義することがコーポレートトランスフォーメーションの要点といえるでしょう。

DXを通じて「誰に、どのような価値を、どうやって提供する企業を目指すのか」を再考することで、企業としてのアイデンティティを進化させていきます。「DX戦略」とは、その実現に向けたシナリオを描くことになります。例えば、自動車業界では、車の製造・販売から移動サービスへと提供価値をシフトさせます。目的地まで快適かつ短時間に移動できるようにしたり、移動コストを安くすることを顧客に提供することを目指します。

④DX4.0:インダストリアルトランスフオーメーション
コーポレートトランスフォーメーションを実現した企業が社会生活や経済活動に革新をもたらします。業界全体のメ力ニズムが再構成されることで、より豊かで快適な社会/経済になることが期待されます。自社だけでなく、業界との協調を取りながら、業界全体のメカニズムを変えることで、社会にインパクトを与えます。

自動車のシェアリングや電動化が進むことで、自動車会社の役割も変わりますし、ディーラーやガソリンスタンドの関連業界にも大きな影響を及ぼします。

DX時代ならではの4つのビジネス

DX時代(DXが進んだ未来)には、モノやサービスの提供ではなく、その取引を支えることを主とするビジネスが増えると予想されます。なぜなら、コーポレートトランスフォーメーションやインダストリアルトランスフォーメーションが進むことで、企業のビジネスモデルのみならず、業界全体のメカニズムが変容するからです。結果として、モノやサービスの提供手段や方法が多様化し、それを支えるビジネスの必要性や重要性が高まるでしょう

DX時代ならではの4つのビジネス
①モノやサービスを取引する新たな”場の創造”
DXにより新たな「場」が創造されること、バーチャル化されることで、モノやサービスの取引が拡大されます。YouTubeやアマゾン、メルカリなどその場の価値が大きければ大きいほど、その対価も大きくなります。

②モノやサービスの取引における”非効率の解消”
DXによって、モノやサービスの取引における非効率を解消することで、コア業務に集中できる事業環境が生み出されます。QCD(Quallty/Cost/Delivery)を保証してくれるサービスを使えば、非効率な業務に時間を割かずにすみます。

③モノやサービスの取引に対する”需給の拡大”
デジタル化を通じて広く多くの情報がつながることで、新たな顧客開拓やサービス開発が行われるようになります。そのモノやサービスは使われているのか?いつ、誰が、何を使っているのか?をリアルタイムに把握し、モノやサービスの余剰に注目したり、購入ではなくサブスクなどのビジネスモデルを提供することで、企業は新たなマーケットを獲得できます。

④モノやサービスの取引に付随する”収益機会の拡張”
モノやサービスから得られるデータや自社の事業基盤を新たな収益源として活用します。

DXは「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」です。ビジネスモデルを革新することが目的ではなく、目指す姿を実現するために、ビジネスモデルを革新するのです。デジタル技術を活用しても、ビジネスモデルを革新しても、企業としての目指す姿の実現に結びつかないのだとすれば、経営手腕を問われることになります。DXの推進は、目的ではなく、目指す姿を実現するための手段なのです。

収益性のある「DX時代ならではのビジネス」を展開するためには、「需要性」「経済性」「先行者優位性」「競争優位性」「戦略性」の5つを充足させることが欠かせません。

「場を創造するビジネス」では、「需給の両立」「差別性」「+αの価値」
「非効率を解消するビジネス」であれば、「コストダウン効果」「利用性」「レガシーとの両立」
「需給を拡大するビジネス」であれば、「市場拡大効果」「マッチング性」「信頼性」
「収益機会を拡張するビジネス」であれば、「マーケットプレゼンス」「シナジー効果」「新規性」を考慮し、美ジスモデルを検討する必要があります。

目指す理想の姿を実現するためにも、これらの要素を考慮し、DXを推進すべきです。これらを満たしていなければ、成功する確率が低くなるので、ビジネスモデルを再考すべきです。ビジネスモデルの検証と再考を何度も繰り返すことによって、真に事業性のあるビジネスモデルが見つかると著者は指摘します。言い換えると、これらの要素をチェックし、要件を満たせれば、新規ビジネスで成功する確率が高まるのです。

モノやサービスのビジネスデザインから価値志向のビジネスデザインにシフトすることが重要です。今までのマインドセットを価値提供型に置き換え、デジタル技術を活用しながら、ユーザーのために新たな価値を創造するのです。

本書には、「場を創造する」「非効率を解消する」「需給を拡大する」「収益機会を拡張する」の4つの軸から日本およびお海外の最新事例が80ほど集められています。抽象度の高い前半部と後半の図解されたケーススタディを行き来することで、新規ビジネスの勘所を養えるようになるはずです。事例のバリュエーションが広いのも嬉しいです。


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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