山本康正氏の世界を変える5つのテクノロジー ――SDGs、ESGの最前線の書評


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世界を変える5つのテクノロジー ――SDGs、ESGの最前線
山本康正
祥伝社

本書の要約

世の中の課題を解決するためには、最先端のテクノロジーが欠かせなくなっています。GAFAが業界の壁を破壊する中で、テクノロジーに投資をしない企業に未来はありません。自社のパーパスを再定義し、社会課題をテクノロジーを活用し、解決することで、顧客やパートナーから支持されるようになります。

世界を変える5つのテクノロジー

SNSの普及によって個人の声が企業に届く時代になりました。社会課題に対する企業の姿勢に反対する市民が声をあげ、そこからグローバルな不買運動が起きることも今では珍しくありません。(山本康正)

海外の企業は社会課題に対応するのが当たり前になってきています。投資家や生活者が、環境に優しくない会社を許さなくなり、ESGに対する企業姿勢が問われるようになってきました。

ブラックロックは2020年に投資の方針を大きく転換し、気候変動を投資決定の中心に置くようになりました。同社は「サステナビリティ宣言」を発表し、運用スタイルを変えています。運用資産から5億ドルを超える石油関連株を放出したほか、気候変動に対する取り組み基準を遵守していない244社に通知を行ないました。

ブラックロックの「サステナビリティ宣言」は、世界の株式市場に大きな影響をもたらし、ESGに無関心な企業は投資先として評価されなくなっているのです。環境に配慮しない企業は投資不適格となり、資金調達が難しくなりつつあります。アメリカではESG投資が拡大する中、投資先を環境視点で評価するようになっています。

投資家だけでなく、企業もESG視点で取引先の峻別を行なっています。アップルやマイクロソフトは、サステナビリティに関する取り組みを自社だけなく、サプライチェーン全体にまで広げています。サステナビリティへの配慮に欠けた企業は、顧客のサプライチェーンから外される可能性が高まっているのです。

SNSでの情報発信が当たり前になる中、市民は企業姿勢に疑問を抱けば、グローバルな不買運動を提起します。これを避けたければ、経営者は環境に優しい経営をするしかないのです。

そんな中、社会課題の解決を目的とするビジネスやテクノロジーが脚光を浴びています。著者は以下の5つのテクノロジーのトレンドを本書で紹介しています。
①食料不足×フードテック
ビヨンドミートやインポッシブル・フードなどの代替肉のフードテック
Oishii Farm(オイシイファーム)などの植物工事などのアグリテック

②教育格差×エドテック
「Khan Academy(カーンアカデミー)」や「Coursera(コーセラ)」、「スタディサプリ」などのオンライン学習支援サービス

③医療・介護×ヘルステック
Amazonやアップル、Microsoftが医療分野に進出しています。グーグルの関連会社であるディープマインド社は、タンパク質の立体構造(機能を知るために必須)を明らかにし、創薬の手法を改良しています。

④気候変動×クリーンテック
テスラのソーラー事業により、太陽光というクリーンな電力を家庭内で貯め、夜間はもちろん、災害などの非常時でも使うことができるようになっています。

⑤大量廃棄×リサイクル
リサイクルやリユースが当たり前になり、資源の再利用が進みます。

アップルが実践するESG経営

将来的にすべての製品をリサイクル材だけを使って生産する。(ティム・クック)

2020年7月、アップルは2030年までに自社オフィスだけでなく、世界中の製造サプライチェーンの100パーセントカーボンニュートラル達成を約束すると発表しました。

同社は今年、世界中の製造パートナー110社以上が、アップル製品の製造に用いる電力を100パーセント、再生可能エネルギーに切り替えていくという新たな目標を発表しました。アップルはパートナーにもSX(サスティナブル・トランスフォーメーション)を求めています。今後、日本企業もSXの波に乗り遅れるとGAFAなどとの取引ができなくなる可能性が高まっています。

それだけでなく、アップルは、ゴールドマン・サックスと国際環境保護団体のコンサーベーション・インターナショナルと共同でパートナー各社と2億ドル規模のファンドを設立し、年間100万トンの二酸化炭素削減を目標とする森林プロジェクトに直接投資する「Restore Fund(再生基金)」もスタートさせています。  

iPhoneやMacなどのプロダクトには、希少な天然資源であるレアメタルが原材料として使われています。これらの鉱物の採掘・精錬する過程で発生する温室効果化ガスの排出を抑えるために、自社製品に使われる鉱物資源を完全リサイクルすることで、顧客の支持を得ようとしているのです。 

また、役員のボーナスを社会的・環境的な価値、つまりESGに対するパフォーマンスに基づいて最大10パーセント増減させることを発表しています。役員報酬を決定する際に、ESG指標を考慮するグローバル企業は2018年以降、増加していると言います。

ESGを経営の中心に位置づけて、パーパス(存在意義)経営を実践していくことが、経営者に求められています。経営者は社会課題を自分ごと化すると同時に、テクノロジー投資を躊躇ってはいけないのです。

経営者は以下の3つのことを理解し、実践すべきだと著者は指摘します。
①時代と社会の動きをしっかり掴んでいること。
②今の時代の最先端にはどんなテクノロジーが可能性を秘めていて、自た分たちは何に長けているかを客観的に認識すること。
③社内をしっかりと説得すること。

今のままでは先がないという自己否定を出発点に、「では我々はどう変わっていくべきか」を真剣に模索することが、ESGやSDGsを組織に根付かせるための一番の近道になります。

世の中の課題を解決するためには、最先端のテクノロジーが欠かせなくなっています。GAFAが業界の壁を破壊する中で、テクノロジーに投資をしない企業に未来はありません。自社のパーパスを再定義し、社会課題をテクノロジーを活用し、解決することで、顧客やパートナーから支持されるようになります。

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