これからのリーダーに必要なADAPTモデルとは何か?Future of Work 人と組織の論点の書評

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Future of Work 人と組織の論点
コーン・フェリー・ジャパン
日本経済新聞出版

本書の要約

企業がセルフ・ディストラクション(自滅)を回避するためには、リーダーは直面する外部からのディスラプションに単に対応するのではなく、これを所与のものとして受け入れなければなりません。ディスラプションに打ち勝つためには、リーダーは今までの自分自身の考え、価値観、行動をディスラプトする必要があります。

セルフ・ディスラプティブ・リーダーが欠かせない理由

ADAPTの基準値を満たすリーダーは世界でも15%ほどに過ぎず希少性が高い。優秀人材の採用が難しいことはいまの時代に始まったことではないが、特にADAPTリーダーを惹きつけ、持てる力を余すことなく発揮してもらうための社内の環境整備が欠かせない。(増田智史)

Future of Work 人と組織の論点書評を続けます。現代のような変化の激しい時代には、求められるリーダ像も「先見性、活性化、スピード、パートナーシップ、信頼」を特徴とする「セルフ・ディスラプティブ・リーダー」へとシフトしています。

世界最大規模の組織・人事コンサルティング会社コーン・フェリーでは、新しいリーダーシップ・モデル「ADAPT」を提案しています。外部環境を先取りしながらたゆまぬ自己革新を継続し、さらには組織の連続的な変革を牽引できるリーダーを「セルフ・ディスラプティブ・リーダー」として定義しています。

コーン・フェリーの調査によると、企業がセルフ・ディストラクション(自滅)を回避するためには、リーダーは直面する外部からのディスラプション(創造的破壊)に単に対応するのではなく、これを所与のものとして受け入れなければなりません。

ディスラプションに打ち勝つためには、リーダーは今までの自分自身の考え、価値観、行動を「ディスラプト(創造的に破壊)」する必要があります。マーケットのディスラプションは、リーダーシップのディスラプションによってのみ解決可能だとコーン・フェリーは指摘します。

20世紀に主流だったリーダー像はControl(統制的)、Consistency(画一的)、Closed(閉鎖的)の3つのCで表現できます。
■Control(統制的)・・・プロセス、リソース、行動などを厳格よコントロールする。
■Consistency(画一的)・・・どのような状況に対しても画一的で同じペースで対応する。
■Closed(閉鎖的)・・・閉じられた環境で機能するリーダー。

かつての大量生産時代に優先されたのは効率性であり、この3Cによって組織を運営できました。しかし、これらのリーダー像では、複雑になる課題を解決できなくなり、時代遅れなものになっています。クライアントが求めるものが、付加価値にシフトしている中、それを提供できる組織運営が必要になっています。

個人の自己実現を犠牲にしてまで組織の成果に貢献させることを当然と考えているような上司は、チームから支持されず、成果を出せなくなっています。

コーン・フェリーではセルフ・ディスラプティブ・リーダーの有効性を検証するために、蓄積された約15万人分のアセスメント・スコアを活用し、国レベル、企業レベル、個人レベルでパフォーマンスを比較した結果、セルフ・ディスラプティブ・リーダーに特に重要な5つの要素を特定し、それらを「ADAPT」としてまとめました。

リーダーのADAPTモデルとは何か?

■ Anticipate|先見性:文脈を読み取り、迅速に判断を下し、機会を創出する。社会的ニーズに対して企業が果たすべきことにフォーカスする。不透明な状況下にあっても集団的な取り組みに対して方向性を示し統合する。

■ Drive|活性化:目的意識(パーパス)を育むことによって人々を活気づける。自分自身や他者の心身のエネルギーをマネジメントする。人々を希望的、楽観的、内発的に動機づけるために前向きな環境を育む。

■ Accelerate|スピード:絶え間ない技術革新と望ましいビジネス成果を生み出すために、
知識・情報の流れをマネジメントする。アジャイルなプロセス、迅速なプロトタイピング、
反復的なアプローチを駆使してアイデアを実行に移し事業化する。

■ Partner|パートナーシップ:部門や組織の境界が一層曖昧になる中において連携を促し、パートナーシップを形成する。意見交換を可能にする。能力を相互に補完し合い、高いパフォーマンスを実現する。

■ Trust|信頼:組織と個人との間に相互成長に軸足を置いた新しい関係を構築する。多様な視点と価値観を統合する。個人が自身の目的意識(パーパス)を明らかにする手助けをし、最大限に貢献するよう促す。

リーダーは自らに以下の質問を行い、パーパスを明らかにすべきです。
「将来地球/人類はどのような経営環境に直面するのか?」
「そのとき自社はどのような社会的課題の解決に挑むのか?」
「その解決に向けた道筋は?」
「それらを牽引するリーダーに求められる責任・役割とは?」
「その役割・責任を担うために特に重要になる能力とは?」

ADAPTの基準値を満たすリーダーは世界でも15%ほどに過ぎず希少性が高いことがわかっています。ADAPTリーダーを惹きつけ、持てる力を余すことなく発揮してもらうための社内の環境整備が欠かせません。

リーダーを育成・定着させるためには、以下のステップが必要になります。組織内でリーダー像を明確にし、次の時代を牽引するリーダーを育てなければ、組織の成長が止まります。
■真に求められるリーダー像を再定義する。(人材要件)
■適性のある候補者を早期に見極める。(発掘)
■包括的な評価を通して抽出した優先育成ポイントを作成する。(評価)
■リーダー育成プログラムでデザインした経験を付与することで強化する。(育成)

個人としてセルフ・ディスラプティブ・リーダーを目指すためには、①目指すリーダー像の明確化、②マインドセットの点検、③新しい種類の経験への挑戦、④ガイド付き内省(コーチィング・メソッド)のプロセスを辿ることが有効だと著者は指摘します。

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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