ラディカル・プロダクト・シンキング イノベーティブなソフトウェア・サービスを生み出す5つのステップ (ラディカ・ダット)の書評

ラディカル・プロダクト・シンキング イノベーティブなソフトウェア・サービスを生み出す5つのステップ
ラディカ・ダット
翔泳社

本書の要約

ラディカル・プロダクト・シンキングを採用することで、世の中をよくするスマートなイノベーションを起こせます。結果、良質で有益なビジョン駆動型プロダクトの開発が可能になります。逆に組織がビジョンを見失い、イテレーティブ(反復的)な活動ばかりになると正しいゴールに辿り着けなくなります。世の中を変え、顧客に支持されるプロダクトを生み出すためには、ビジョンが欠かせないのです。

ビジョン駆動によってイノベーションを起こす方法

長期的なゴールを思い描くことができなければ、短期的なニーズに目を奪われ、そこに向かって進んでしまう。(ラディカ・ダット)

イノベーションのためには プロダクトのビジョンを明確にして 戦略と優先順位を組織に浸透させなければなりませんが、多くの企業ななかなかプロダクトを生み出せずにいます。

イノベーションを起こすためには、ローカルマキシム(局所的な最適化)を抜け出し、ビジョン駆動型でビジネスを行うべきです。自社のビジョンを明確にし、それを実現するための計画を練るグローバルマキシム(全体的な最適化)戦略が求められます。

著者のラディカ・ダットは、以下の5つのアプローチでプロダクトを成功に導けるようになると述べています。
1,組織と市場にマッチしたビジョンのつくり方
2,ビジョンを効率的に達成する戦略の立て方
3,戦略を実行する優先順位のつけ方
4,施策の仮説検証の仕方
5,組織へビジョンを浸透させる方法

プロダクト開発において、ビジョンを明確にすることが欠かせません。

ラディカル・プロダクト・シンキングとは、世界にどんな変化をもたらしたいかを考えながらグローバルマキシマムを探し求める態度を指す言葉だ。したがって、あなたのつくるプロダクトはその変化をもたらすための改善可能なシステムである。 ラディカル・プロダクト・シンキングでは、プロダクトはそのプロダクトが引き起こすべき変化のビジョンによって導かれる。ラディカル・プロダクトはビジョンから生まれ、明確な理由があって存在する。この存在理由が戦略や優先順位、そして実行計画と組織の文化を決定する。

ラディカル・プロダクト・シンキングが組織にこのマインドセットを育むガイドとなります。メンバー全員がこの思考法を身につけることで、最終的には誰もがビジョン駆動型のプロダクトをつくれるようになるのです。

ラディカル・プロダクト・シンキングには3つの哲学の要素があります。
①プロダクトを世界に変化を起こすためのメカニズムとみなす。
②プロダクトづくりを始める前に、世界にもたらしたい変化を思い描く。
③ビジョンを日々の活動に結びつけることで変化を起こす。
テスラやシンガポールはこのビジョン駆動型を採用しています。彼らは世の中に変化を起こすという思考のもと、イノベーションを起こし、大きな成長を遂げたのです。

プロダクト戦略のためのRDCLのフレームワーク

世界にもたらしたいと願う変化によってインスパイアされ、その変化を起こすのに必要なメカニズムであるプロダクトについて徹底的に考えることがラディカル・プロダクト・シンキングなのである。  

まず、変化していく未来に思いをはせることに始まり、ビジョンを日々の行動に翻訳する方法から最終的なプロダクトの完成にいたるまでの過程を網羅する必要があります。

著者はラディカル・プロダクト・シンキングにおいては、ビジョンが重要で、ビジョンには以下の3つの特徴があることを明らかにしています。
・世界に実在し、あなたが解決したいと願う問題を中心にしている。
・はっきりと想像できる具体的な最終状態である。
・あなたと、あなたがインパクトを与えたいと願う人々にとって有意義である。

リーダーに問題を鮮明に表現するビジョンがあれば、チームのメンバーはその問題を直感的に理解し、それを解く明確な目的を持ち、自分の価値を提供できるようになります。

プロダクト戦略はビジョンを実行可能な計画に変える方法になります。 包括的なプロダクト戦略をつくるためには、次の4つのフレーム(RDCL) で考えましょう。

1 R=リアル・ペイン・ポイント(真の問題点)   
どんな問題があるから、人々はあなたのプロダクトを利用するのでしょうか?ペイン・ポイントは実在が検証されて初めて〝リアル〟な課題になります。価値立証=価値評価+存在確認になります。
2 D=デザイン   
あなたのプロダクトのどんな機能がその問題を解決するのでしょうか?デザインとは、インターフェース(プロダクトがどう使われるべきか)とアイデンティティ(プロダクトがどうされるべきか)について考えることを意味します。

3 C=ケイパビリティ(能力)   
ソリューションが提供できる価値の約束を果たすのに、どれほどのケイパビリティや基盤が必要になるでしょうか? ケイパビリティには有形なもの(データ、知的財産、契約、人など)も、無形なもの(スキル、パートナーシップ、信頼など)もあります。

4 L=ロジスティクス   
ソリューションをどうやってユーザーに届ければよいでしょうか? 価格をどう設定して、どう顧客をサポートすればよいでしょうか?ロジスティクスは後回しにされがちな戦略要素です。プロダクトの開発計画の時点で、収益モデルとコストモデル、トレーニング、サポート計画なども考慮する必要があります。

戦略を実行するためには、優先順位をつける必要があります。

日々の意思決定の際、無意識のうちに長期的な目標と短期的なニーズのバランスを保とうとしているはずだ。現実の生活を無視して長期ビジョンだけを追い求めていては、目標に向かって進む道のりを生き残れないだろう。逆にはっきりとした長期目標がなければ、利益やビジネスにかかわる短期目標ばかりに目を向けてしまう。

ビジョン駆動型プロダクトの開発には、生き残りに必要な活動とビジョンへの前進の両方が欠かせません。 ビジョン駆動型プロダクトを開発するには、優れたビジョンのもつ駆動力と、その力を優先順位に変える性能が必要になるのです。

ラディカル・プロダクト・シンキングの優先順位づけと意思決定を行うことで、チーム全体がリーダーのビジョンを受け入れ、それを実現するプロダクトの開発に集中できるようになります。優れたビジョンを共有し、実現のための優先順位を明確にするようにしましょう。

プロダクトを開発する中で、実行と測定をプロセスの中に取り込みましょう。日々の行動と成果の評価にビジョンが反映されているか、ビジョンと戦略の繋がりを保てているか把握することで、ビジョン駆動型アプローチを維持できるようになります。

ラディカル・プロダクト・シンキングの考え方では、文化もプロダクトとみなすことができます。メンバーのやる気を最大限に引き出し、高パフォーマンスのチームづくりを促す環境をつくるためのメカニズムが動き始めます。

明確なビジョンと包括的な戦略に従い、はっきりとした論理的根拠にもとういて優先順位を決めて実行すれば、メンバーは「有意義な仕事」領域に費やす時間を最大限に増やすことができるようになります。企業文化が良好であれば、ビジョンの達成スピードが早まります。

優れた組織文化には心理的安全性が備わっています。
・過ちを責めない・・・過ちを犯すことを罰せず、ミスからの学習を促すことで、人はメンバーは成長します。
・まっすぐ話し合う・・・個人を尊重し、腹を割って話し合うことで、チームワークが強化できます。
・密な付き合い・・・対人関係のリスクを冒すことへの恐れを減らすために、交流する機会を増やせば、お互いのよさを理解でき、ビジョン達成のための協働が起こります。

ラディカル・プロダクト・シンキングを採用することで、世の中をよくするスマートなイノベーションを起こせます。結果、良質で有益なビジョン駆動型プロダクトの開発が可能になります。逆に組織がビジョンを見失い、イテレーティブ(反復的)な活動ばかりになると正しいゴールに辿り着けなくなります。世の中を変え、顧客に支持されるプロダクトを生み出すためには、ビジョンが欠かせないのです。


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