未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること (河合雅司)の書評

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未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること
河合雅司
講談社

本書の要約

人口減少社会では、マーケットが縮小しても成長するビジネスモデルへと転換することが必要になります。経営者は過去の成功体験と決別し、発想を転換しなければ、やがて経営が行き詰まります。著者は未来のトリセツの10のステップ」を提言し、人口減少社会の日本の経営者がやるべきことを明らかにしています。

人口減少社会に経営者は戦略的に縮むことを考えるべき。

人口減少がビジネスに与える影響で即座に思いつくことといえば、マーケットの縮小や人手不足だ。日本は国内需要依存型の企業が多いだけに、とりわけマーケットの縮小は死活問題である。(河合雅司)

コロナ禍で出生率の低下が酷いことになっています。人口減少が急速に急速に進む日本で、ビジネスモデルの転換が経営者の急務になっています。本書は今後、各業種・職種や公共サービスに何が起こるのかを予測したもので、未来からバックキャスティングすることで、今何をすべきかが見えてきます。

人口減少が続くだけでなく、給与もアップされず、非正規の社員が増える中で、日本人の購買意欲はなかなか高間ありません。高齢化が進む中で、消費する実人数が減り、消費量も落ち込む「ダブルの縮小」に日本は見舞われています。

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計によれば子供(15歳未満)や勤労世代(20~64歳)などは減るのに、65歳以上の高齢者数だけは2042年まで増え続けることが明らかになっています。高齢化率(総人口に占める高齢者の割合)は2022年9月15日現在で29.1%に達していますが、2050年代には38%程度にまで上昇します。また、東京大阪の都市圏でも3割が高齢者になると予測されています。子供を除いた消費者の4割が高齢者になるという厳しい現実を経営者は認識しなければなりません。

人口減少が続く日本ではさまざまな課題が顕在化しています。
・日本の製造業の1割を高齢者が支えている
・金融業界のIT人材の不足
・エリア人口の劇的な減少によるマーケットの縮小、地方紙・ローカルTV、ローカルスーパーの衰退
・ドライバー不足の物流機能の低下
・農業人口の高齢化・温暖化による既存農業の見直し 
・建設業界の人材不足による老朽物件、設備の修理が難しくなる

マーケットの縮小が進んでいるにも関わらず、経営者のマインドは以前のままで、変質を続けている「現実」から逃避しているのが実態です。成長前提の事業計画を作成し、間違っている経営判断を行なっている経営者があまりに多いと著者は指摘します。このまま拡大路線を続け、マーケットの変化を見過ごすと失敗するリスクが高まります。  

著者は以下の2つの解決策を実践すべきだと言います。
①各企業が成長分野を定め、集中的に投資や人材投入を行う。👉戦略的に縮む。 
②「売上高」から、「利益高」へと経営目標をシフトさせる。

マーケットが縮小して売上高が減ったとしても利益高さえ伸ばせたならば企業は発展する。そうした企業を1つでも増やすことが日本経済の成長につながり、国民生活をこれまで以上に豊かにする。

著者は「戦略的に縮む」ための「未来のトリセツの10のステップ」を明かにしています。経営者はこのステップを参考にしながら、自分と社員の意識と行動を早急に変えるべきです。

「戦略的に縮む」ための「未来のトリセツの10のステップ」

これからマーケットが大幅に縮小していく。人口が増え、若者が多かった時代の成功体験にすがっていてもうまくいくはずがない。

いま日本企業に求められているのは、
①国内マーケットの変化に合わせてビジネスモデルを変えること
②海外マーケットに本格的に進出するための準備を整えること

人口減少社会では、マーケットが縮小しても成長するビジネスモデルへと転換することが必要になります。経営者は過去の成功体験と決別し、発想を転換しなければ、やがて経営が行き詰まります。それを避けるための「未来のトリセツ」を著者は提言しています。

「未来のトリセツの10のステップ」
1、量的拡大モデルと決別する

人口減少に備え、拡大路線の過大な投資をやめ、今後の人口変化に応じて、転用や撤退をできるよう準備を怠らない。

2、残す事業とやめる事業を選別する
残すと決めた事業に人材と資本を集中し、企業としての競争力を高める

3、製品・サービスの付加価値を高める
「薄利多売」から「厚利少売」へのシフト。顧客から支持される商品・サービスを作り上げ、利益率の高い商品として、維持、提供し続ける。テスラやアップルのビジネスモデルを参考にする。

4、無形資産投資でブランドカを高める
ブランド力を磨く、人材技術、ノウハウ、特許、商標などの知的財産権、データ、顧客ネットワーク、バリューチェンなどの無形資産を重視し、知的資産経営を行う。

5、 1人あたりの労働生産性を向上させる
業務改善を行い、会議や無駄な作業などの「ブルシットジョブ」を減らす。人手が足りない中で本当に重要な仕事に集中する。

6、 全従業員のスキルアップを図る

「必要となる人材」の確保に関しては中途採用で即戦力をスカウトすることもあるだろうが、これは計画通りにいくかどうかは分からない。それよりも、多くの企業は既存従業員のスキルアップで対応することになると見られる。「戦略的に縮む」過程において不要部門をリストラしたことで生じた余剰人材を、「残す」と決めた部門にシフトし、戦力として活用すべくリスキリングすることが喫緊の課題となる。

必要な人材が獲得できた後も、KPIを用いて課題ごとに現状評価を行い、経営戦略を実現するために組織の改変を定期的に行うようにする。

7、年功序列の人事制度をやめる
日本特有の年功序列を見直し、成果や能力をきちんと評価する。

8、若者を分散させないようにする
イノベーションを起こすために若者を活用する。

9、 「多極分散」ではなく「多極集中」で商圏を維持する
10万人商圏を生活圏とし、中核的な企業や行政機関を中心として雇用を維持しながら、海外マーケットと直接結びつくことで経済的な自立を目指す。

10、輸出相手国の将来人口を把握する
インドやアフリカなどの人口激増エリアへのアプローチを強化する。

人口減少で国内マーケットがシュリンクする中で、経営者にはマインドセットと行動の変化が求められています。過去の成功体験を捨て、著者が提案する「未来のトリセツの10のステップ」を取り入れましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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