ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか(ピアーズ・スティール)の書評

ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか
ピアーズ・スティール
CCCメディアハウス

本書の要約

先延ばしとモチベーション研究の第一人者のピアーズ・スティールは、期待×価値÷衝動性÷遅れという成功の方程式を明らかにします。この「先延ばしの方程式」から導いた成功の螺旋階段、脳内コントラスティング法などの「13の行動プラン」を実践することで、先延ばし癖を克服できるようになります。

先延ばしの方程式とはなにか?

現代社会の生活環境が原因で、先延ばし癖が深刻な流行病になっているのだ。驚くかもしれないが、いま手短に触れた発見はすべて、私が考案した一つの簡単な数式から導き出せる。私はその数式を「先延ばし方程式」と名づけた。(ピアーズ・スティール)

多くの人は先延ばし癖で悩んでいます。さまざまな調査によると、95%くらいの人は、ものごとを先延ばしするときがあると自分で認めています。およそ4人に1人は、先延ばしが慢性化して自分の特徴の一つになっていると答えているのです。しかし、先延ばしを常態化させると自分のパフォーマンスを落としてしまいますし、失敗を繰り返すことで他者からの信頼も失ってしまいます。

先延ばしとモチベーション研究の第一人者のピアーズ・スティールは、この解決策を本書で明らかにしています。「先延ばしの方程式」から導いた「13の行動プラン」で、ぐずぐず癖をスピーディに克服できるようになります。

先延ばしする人間は主に3タイプに分類されると言います。
①どうせ失敗すると決めつけるタイプ
②課題が退屈でたまらないタイプ
③目の前の誘惑に勝てないタイプ

期待、価値、時間──は、先延ばしを生み出す3つの基本的な構成要素だ。課題を成し遂げた場合にご褒美を得られる確実性(=期待)とご褒美の大きさ(=価値)が小さければ、その人が熱を入れて課題に取り組む確率は小さくなる。ご褒美が手に入る時期が遅く、しかもその人が時期の遅れに対する忍耐心が弱いと(=衝動性)、やはりモチベーションが減退する。このように、それぞれの要素を個々に考えるだけでも有意義だが、複数の要素の関係を検討すればもっと有益な知識を得られる。

ここから著者は期待、価値、時間と遅れ、衝動性という要素の関係を考えることで、以下の先延ばしの方程式を導き出したのです。

先延ばしの方程式=期待×価値÷衝動性÷遅れ

仕事で得られる喜びはこの数十年変わっていないにも関わらず、誘惑は年々増えています。私たちはゲームやスマホ、フェイスブック、ネットフリックスという誘惑に負けることで、先延ばしを選択してしまうのです。

先延ばし癖によって、成績を下げたり、就活での失敗がもたらされます。先延ばし癖は資産運用にも悪影響を及ぼします。運用プランを作っても、貯蓄や投資を先延ばしすることで、資産が貯らず、悲惨な老後を迎えてしまうのです。アルコールや喫煙などの衝動性を優先し、健康診断を先延ばしにすると疾病のリスクが高まります。

先延ばし人間は、そうでない人たちより貧しく、不健康なだけでなく、不幸せに感じている。その一因は、先延ばし行為に付随するストレスと後ろめたさにある。ものごとを先延ばししていると、その罪悪感により、課題を実際におこなうときに味わう苦労以上に大きな苦しみを背負い込む。ようやく課題に取りかかったとき、ほっとする場合も多い。

楽観的に仕事を見積もると、最後の最後で時間が足りなくなり、痛い目に遭います。仕事のスケジュール管理では、マイナス思考の悲観主義と能天気な楽観主義の適度なバランスを取るようにすべきです。適度な楽観主義が困難な課題に粘り強く取り組む背中を押してくれます。

失敗を克服するための5つの方法

①どうせ失敗するを克服するための5つの方法
・成功の螺旋階段

興味のあることがらを選び、自分の現在の能力を少しでも高めるよう努力してみよう。その分野で成果を上げて自信が深まれば、ほかの分野でも難しい課題に取り組めるようになる。

まずは、自分の興味のあることがらで、能力を少しでも高める努力を始めます。手強いけれど達成可能な目標を設定し、順々にこなしていくことで、自信が生まれます。 ある分野で成果を上げ、自信を深めれば、他の分野でも難しい課題に取り組めるようになります。

・鼓舞される物語・仲間 多くの成功物語に触れて、モチベーションをかき立てよう。

前向きな考え方の人たちと接することも効果的だ。自分が成功できると信じていて、さらに、あなたが成功できると信じてくれる人たちとつき合おう。そういう人たちに囲まれて過ごせば、あなたも自分が成功できると信じられるようになるだろう。

成功者に囲まれる時間を増やします。共感できる要素のある成功者の伝記や映画を探し、それを真似してみましょう。

・脳内コントラスティング法

プロスポーツ選手は、目標を達成するために「ビジュアル化(視覚化)」のテクニックを活用することが多い。寝る前に、自分が完璧なゴルフのスウィングをする場面なり、フィギュアスケートのトリプルアクセルを決めてきれいに着氷する場面なりを具体的に思い浮かべる。理想的なプレーを頭の中で詳細に再現すると、脳のミラーニューロンという神経細胞が活性化されて、プレーを実際に成功させた場合と同じくらいくっきりと、そのプレーが脳に刻み込まれる。ビジュアル化は、「脳内コントラスティング(対比)法」という手法の一環として実践すれば、先延ばしを克服する役にも立つ。

実現したい理想の状態を具体的に思い浮かべた後、そのギャップを埋めていきます。あるべき姿をイメージすることで、アクションを起こせるようになります。 

・失敗を計算に入れる
最初から成功する人はいないので、失敗することを計算に入れ、行動しましょう。 自己変革を成功させるためには、楽観主義と現実主義のバランスを取る必要があります。

・先延ばし癖を自覚する
ちょっとやそっとの対策では、この悪癖から逃れられない人もいます。自分の無力さを認め、一度でも意思がくじけると自己コントロールが全て崩れると考えるようにします。完全に節制を貫くのです。

課題が退屈を克服するための5つの方法と誘惑に勝てないを克服する3つの方法

②課題が退屈を克服するための5つの方法。
・ゲーム感覚と目的意識
課題の難易度を高めて、退屈を感じなくします。ゲーム感覚で課題に挑むのは、そのための有効な方法です。ゲームのルールは、自らの想像力と常識の範囲内で自由に決めてよいのです。

・エネルギー戦略
倦怠感や疲労感が先延ばしの理由になります。精神的なエネルギーが無尽蔵ではないと考え、戦略的にエネルギーを配分します。朝や午前中の生産性の高い時間帯に難しい課題に取り組むようにします。

・生産的な先延ばし
最重要課題に比べ楽しく感じる副次的課題を探し、先に取り組みます。この取引によって最重要課題に取り組みやすくします。

・ご褒美効果

成功を収めている人たちは、この点で好循環をつくり出せている。成功すれば楽しいことが待っていると思うので、課題に取り組むのが楽しくなり、課題が楽しくなる結果、ますます成功の確率が高まる。実に素晴らしいメカニズムだ。

ゴールに向かって多少なりとも前進したのであれば、それを自分で評価し、ご褒美を与えましょう。それを繰り返せば、ご褒美が楽しみになって、目の前の作業を楽しく感じるようになります。

・情熱を燃やせる仕事
情熱を燃やせる仕事をリストアップし、転職も視野に入れ、自分の人生をワクワクなものに変えましょう。

③誘惑に勝てないを克服する
・プレコミットメント戦略

強力な誘惑が待っていると事前にわかっていれば、オデュッセウスのように、誘惑をはねのけるための対策をあらかじめ講じられます。カギを握るのは、「プレコミットメント(事前の自己拘束)」という考え方です。 事前にセイレーンについて警告されていたので、オデュッセウスは自分の体をマストに縛りつけることで誘惑に対抗しました。

・注意コントロール戦略
誘惑の対象を連想させるキューのイメージを悪くさせます。 デスクを整理整頓し、誘惑を排除することで、タスクに集中できます。

・ゴールを設定する
長期的なゴールを細分化し、簡単にゴールに到達できるようにします。ヘミングウェイは1日5時間執筆するか、500語以上書くかのいずれかを達成することを目標にしていました。調子がよく、早々と目標を達した日は、自分にご褒美を与えていたと言います。

本書の13の行動プランを実践することで、先延ばし癖を克服できそうです。衝動に負けないことを考え対策を練る、楽観主義と悲観主義のバランスをとることで、目の前の重要なタスクにすぐに取り組めるようになります。



この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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