人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法(アーサー・C・ブルックス)の書評

人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法
アーサー・C・ブルックス
SBクリエイティブ

本書の要約

人生後半戦に働き方、自分の能力の使い方を変えることで私たちは幸せになれます。WHATではなく、WHYを問い、他者への貢献のために時間を使うようにしましょう。成功という世俗的な欲求ではなく、精神的な満足を追い求めることがあなたに幸せを運んできてくれます。

ストライバーの呪いを免れる方法

仕事で成功した人が一般的に、というよりもほぼ例外なく抱えている、密かな苦悩の種です。私はそれを「ストライバーの呪い」と呼ぶようになりました。実は、必死の働きによりある分野で卓越した人たちは最終的に、不可避なキャリアの落ち込みに怯え、成功すればするほど満足できなくなっていき、人間関係の希薄さに悩むことになるのです。 (アーサー・C・ブルックス)

成功者は自分の時間を犠牲にして必死に働くことで、仕事も人生もうまくいくと考えますが、この働き方ではやがて、「ストライバーの呪い」に陥り、不幸な時間を過ごすことになります。人生の途中で今までの働き方を変えなければ、幸せにはなれないと言うのです。 

幸福について研究する社会科学者のアーサー・C・ブルックスは「ストライバーの呪い」から免れる方法を明らかにしています。今までの働き方を変えなければ、幸せは手に入らいないと考え、人生後半を迎えるタイミングで、新しい働き方を身につけるべきです。働き方、自分の脳力の使い方を変えることで、私たちは幸福度をアップできます。

心理学者のレイモンド・キャッテルは知能を流動性知能と結晶性知能の2つに分類しています。
■流動性知能・・・抽象的な問題を解決する脱文脈化された能力。
■結晶性知能・・・人が生きるなかで文化的適応と学習によって獲得した知識。  

流動性知能は30代半ば頃まで上昇し、40代、50代にかけて低下します。一方、結晶性知能は成人中期から後期を通して上昇していきます。40代か50代に発生する能力の落ち込みが来た際に、高齢者に有利な第2の波に乗り換えればよいのです。

あなたが流動性知能の落ち込みを今まさに経験しているなら──私と同年代ならそうでしょう──あなたはまだお役御免ではありません。流動性知能曲線から結晶性知能曲線へと飛び移る時が来たということです。時に抗う人は新しい曲線に乗らずに、古い曲線を曲げ戻そうとしているのです。しかし曲げ戻すことはまず不可能です。

50代、60代、70代に大きな幸福感と満足感を抱いている人たちは、例外なく、第2の曲線に飛び移った人だと著者は指摘します。

人生後半は知恵で他者に奉仕する!

私たちはダーウインを成功者として評価していますが、ダーウィンの人生後半戦は不幸であったといいます。壁に当たったとき、ダーウィンは意気消沈し、第2の曲線(結晶性知能)の波に乗ることができず、充実した人生を送れずに失意のまま亡くなりました。

作曲家のバッハは流動性知能曲線が後半に差しかかると、思い切って結晶性知能曲線に飛び移り、けっして後ろを振り返らなっかたと言います。偉大な作曲家という名誉にとらわれるのをやめ、後輩への指導に舵を切ることに成功します。バッハは生き方を変えることで、多くの人々に愛され、尊敬され(かつてほど有名でなくとも)、満足して、誰から見ても幸せな時間を過ごせたのです。

人生の後半は、知恵で他者に奉仕しましょう。あなたが最も重要だと思うことを分かち合いながら歳を重ねるのです。何かに秀でているということは、それだけで素晴らしいことなのだから、それ以上の見返りは不要です。そう思って生きていけば、歳を経るほど最高に秀でた存在になれるのです。

偶然ですが、私はこの第2の波に乗ることができました。50歳の時に広告会社をやめ、社外取締役やアドバイザーとして働くようになりました。過去の知識と経験(結晶性知能)を使いながら、他者にアドバイスをすることで幸せな時間を過ごしています。昨年からは大学で講義を行い若者のサポートも行っていますが、これも私の人生に良い影響を与えてくれています。

第2曲線に乗り換えるためには、マインドセットを変える必要があります。仕事と成功への依存心、世俗的な見返りへの執着、落ち込みに対する恐怖心をなくすことです。

人生後半で幸せな時間を過ごしたければ、以下の3つのことを意識すべきです。
①人間関係を深めること(他者とのつながりを強化し、知恵で貢献する)
②精神性を探究すること(今ここに集中する、他者の幸福を祈る、感謝の瞑想を行う)
③弱みを受け入れること(弱さを通じて他者とつながる、謙虚になり、心身ともにくつろいだ状態になる)

人生後半戦に働き方、自分の能力の使い方を変えることで私たちは幸せになれます。成功依存症にとらわれるのをやめ、今までの労働パターンを抜け出すことを考えるべきです。WHATではなく、WHYを問い、他者への貢献のために時間を使うようにしましょう。成功という世俗的な欲求ではなく、精神的な満足を追い求めることがあなたに幸せを運んできてくれます。


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