HOLACRACY(ホラクラシー)――人と組織の創造性がめぐりだすチームデザイン
ブライアン・J・ロバートソン
英治出版
本書の要約
ホラクラシーが生み出すのはリーダーが溢れる組織です。ホラクラシーの手法では、上下関係や役割分担を極力排除し、メンバー全員が自律的かつ主体的に組織運営に参加することが求められます。その結果、組織内にはリーダー候補となる人材が次々と現れ、多様なアイデアや視点が集まり、進化する組織をつくれます。
ホラクラシー型の組織が求められている理由
組織は、それが属する世界の中で対応すべき事柄について、どうやって認識するのだろう?──私たち1人ひとりが持つ、周りの現実を感知する能力を利用しているのだ。人というのは十人十色で、才能、経歴、ロール、専門分野など実にさまざまだから、当然、感じる物事も人それぞれである。人の数だけモノの見方があるわけだ。 (ブライアン・J・ロバートソン)
著者のブライアン・J・ロバートソンは、組織が抱える問題に直面する際、現状と改善すべき状態との間にあるギャップに注目します。このギャップを「テンション」と呼びますが、必ずしもネガティブなものではありません。
テンションには、「改善の必要がある問題」と「活用できる機会」の2種類があります。人間には、この2種類のテンションを認識し、有意義に活用する能力があります。パーパスを設定し、組織のメンバー1人ひとりの力を引き出すことで、結果を出せるようになります。
ホラクラシーは、ブライアン・J・ロバートソンとトム・トミソンが2007年に開発した、役職階層型の組織に取って代わる革新的な組織デザインの手法です。 この手法は、伝統的な組織のように、権限を経営層や管理職に集中するのではなく、組織全体に分散させ、組織のエボリューショナリーパーパスに従いながら、誰もが持ち場において能動的に活動することができる、という特徴を持っています。 ホラクラシーを導入することで、組織はより敏捷性と柔軟性を高め、より大きな成果を上げることができるようになります。
ホラクラシーは、組織を運営するための新しいソーシャルテクノロジーです。従来型の組織のルールとは異なり、一連の中核的なルールに則っています。ホラクラシーには次のような要素があります。
・憲章:組織の目的、目標、ルールを定めた文書。
・ロール:組織内の役割とその権限を定めた文書。
・意思決定プロセス:組織内の意思決定方法を定めた文書。
・ミーティングプロセス:組織内のコミュニケーション方法を定めた文書。
・テンション:「今の現実」と「将来のポテンシャル」の間にある違和感を感じたときに、いつでも声をあげられる。
ホラクラシーは、従来型の組織のルールとは異なり、より柔軟で効率的な組織運営を可能にします。また、ホラクラシーは、従業員のモチベーションと創造性を高め、組織の成長につながると考えられています。 ホラクラシーは、まだ新しい組織運営の形態であり、すべての組織に適しているわけではないと著者は指摘します。
しかし、ホラクラシーは、従来型の組織のルールに限界を感じている組織にとって、新しい選択肢となる可能性があります。「進化し続ける有機体」をつくることで、組織は生まれ変われます。著者は進化し続ける有機体とは、「感知・適応・学習・集積の能力」を持った組織であると定義します。
ホラクラシーそれ自体が、実践から生まれたものだ。「組織がそのパーパスを実現できるように創造性を解き放つ」ということをシンプルに追求し、試行錯誤し、進化するために適応し、今も続く実験などの経験を通じて生まれたのだ。
組織のすべての部分が実質的な責任を持ち、自律的に物事を対応して成果を上げることができれば、それまでのリーダーたちは、より大きなクリエイティブな課題に集中することができます。それは、「この組織のパーパスを、この世界で実現するにはどうしたらよいか?」という問いです。
すべての組織には、この世界で他の誰よりも発揮し続けることができるような、ポテンシャルやクリエイティブな能力があります。それは、組織が活用できるあらゆるものによって実現できることです。歴史、従業員、リソース、創業者、ブランド、資本、つながりなどなどすべてです。
ホラクラシーにエボリューショナル・パーパスが必要な理由
ホラクラシーの真の狙いは、組織がそのパーパスをよりよく実現できるようにすることにある。この点を含め、多くの点においてホラクラシーは、「人民の、人民による、人民のための」ガバナンスではなく、「組織の、人々を通じた、パーパスのための」ガバナンスなのだ。
ホラクラシーでは、組織の目的やビジョンを達成するための活動を「エボリューショナル・パーパス(Evolutionary Purpose・進化する目的)」に基づいて進めます。エボリューショナル・パーパスは、組織全体の進化と成長を促進するための大局的な目的を指します。
エボリューショナリー・パーパスは、ホラクラシーにおける概念であり、組織の存在目的を従来の固定的なものではなく、環境の変化に応じて進化させる必要性を指します。
従来の組織では、存在目的は一度設定された後、長期間にわたって変わることは少なかったですが、現代のビジネス環境は急速に変化しています。したがって、組織が生き残り、成長するためには、柔軟性と適応性が求められます。
エボリューショナリー・パーパスのアプローチでは、組織は自らの目的を進化させ、環境に適応することで、持続的な価値を提供できるようになります。 ホラクラシーでは、エボリューショナリー・パーパスを組織全体の目的として設定し、個々の役割やチームはそれに基づいて自律的に行動します。
組織内のメンバーは、エボリューショナリー・パーパスに対して敏感になり、状況に応じて目的を再評価し、必要に応じて調整します。これにより、組織は変化する環境に適応し、持続的な成果を生み出すことができるのです。
それぞれの部署やチームは、この目的に向かって自律的に行動し、組織全体との連携を図ります。 ホラクラシーでは、組織内の役割や権限、意思決定のプロセスが明確に定義されています。組織は、「役割(Role)」と呼ばれる柔軟な職務単位に基づいて構築され、各役割は明確な権限と責任を持ちます。
また、意思決定は個々の役割に委譲され、適切なフィードバックや調整が行われます。 ホラクラシーは、組織内の意思決定プロセスを迅速かつ柔軟にすることで、イノベーションや効率性の向上を図ることを目指しています。このモデルでは、組織のメンバーはより主体的になり、自己組織化と創造的な取り組みを促進します。
ホラクラシーが生み出すのはリーダーが溢れる組織なのです。ホラクラシーの手法では、上下関係や役割分担を極力排除し、メンバー全員が自律的かつ主体的に組織運営に参加することが求められます。その結果、組織内にはリーダー候補となる人材が次々と現れ、多様なアイデアや視点が集まります。
このように、従来のヒエラルキー型組織のように、リーダーや権力者の一方的な意思決定で組織が動くことはなく、全てのメンバーが組織目標達成に向けた役割を果たすことができるのです。また、ホラクラシーは、急速な環境変化に対応できるという利点もあります。
従来の組織運営では、情報の伝達が複雑になりがちで、メンバーの意思決定も時間がかかることが多いため、遅れをとってしまうことがあります。しかし、ホラクラシーでは、全てのメンバーが裁量を持って行動するため、スピーディーな判断を下すことができるのです。そのため、急速に変化するビジネスの世界において、ホラクラシーは注目を集めているのです。
ホラクラシーは、企業文化の変革を促し、一部の人たちに依存する文化から、ロールと実践に物事を任せる文化へと移行することができます。これにより、組織内において協調性や創造力をもった新たなリーダーシップが生まれやすくなり、組織の持続的な発展が期待できます。
ホラクラシーは、従来型の組織とは異なる、より柔軟で効率的な組織運営を可能にする組織運営の形態です。ホラクラシーを導入することで、従業員のモチベーションと創造性を高め、組織の持続的な発展につながると考えられます。
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