アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール (ブライアン・クリスチャン, トム・グリフィス)の書評

monitor showing Java programming

アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール
ブライアン・クリスチャン, トム・グリフィス
早川書房

本書の要約

物事を判断する際に、有効なアルゴリズムがあれば、推測を行ない、より単純な解決策を優先できます。その際、エラーのコストと遅延のコストのトレードオフを行なうことで、よい結果を得られます。このトレードオフこそが最も合理的な行動だということを忘れないようにしましょう。

何かを選ぶ際には、見てから跳べルールを活用しよう!

ほとんどの人は自信をもって答えることができない。しかし、安心してよい。答えはあるのだ。37パーセント。 (ブライアン・クリスチャン, トム・グリフィス)

物事を選択する際に、アルゴリズムのルールを活用すると最適解が見つけられるようになります。例えば、最良の物件に入居できる可能性を最大にしたければ、部屋探しに充てる時間の37パーセントまでは結論を出さずに、ひたすら物件を見て回るようにします。37パーセント以降は、それまでに見たどの物件よりもよい部屋に出会ったらすぐに契約するようにしましょう。

人材を選ぶ際の最適解は、「見てから跳べ(Look before you leap)」というルールを実践することです。「見る」(選択肢を探ってデータを集める)作業にかける時間をあらかじめ決めておき、そのあいだはどんなによさそうな応募者が現れても決して採用しないことです。所定の時間が過ぎたら、「跳ぶ」段階に入ります。これ以降は、「見る」段階で会った最高の応募者よりすぐれた人材が現れたら、ただちに採用するのです。

この最適戦略に従うと、最良の応募者を採用できる確率も37パーセントとなると言います。また、応募書を増やしても成功確率は37パーセントから動かないことも明らかになっています。応募者が100万人になっても、成功率は37パーセントのままなのです。つまり、応募者が多ければ多くなるほど、最適アルゴリズムを知っていることの価値が高くなるのです。

このアルゴリズムを使っても最高の人材を見つけられないかもしれませんが、最適な人材は見つかります。膨大な選択肢を前にしたときには、その数がどれほど多くても、最適停止が最良の防御策となるのです。

私たちの日常生活や仕事に関わる問題には、最適アルゴリズムが存在します。オフィスの整理をどうすべきか(そしてそもそも整理すべきか)で悩んでいらなら、ソート理論が使えますし、クロゼットの収納方法が知りたければ、キャッシュ理論が役に立ちます。時間管理を上手に使いたければ、スケジューリング理論を活用しましょう。(理論の詳細は本書をご覧ください)

時間軸によって人の選択が変わる理由

晩年とは、何十年もかけて集めてきた情報を活用する機会である。おそらくそう考えることで得られる最も深遠な洞察は、人生は時間とともによくなるはずだということだ。探索者は情報と引き換えに楽しみを手放す。

探索とは情報を集めることであり、活用とは既知のよい結果を得るために手元の情報を使うことですが、私たちは両者を上手に使い分ける必要があります。

バーバラ・フレドリクソンは被験者に対し、30分を一緒に過ごすとしたら、身近な家族、最近読んだ本の著者、関心を共有していると思われる新しい知り合いのうち誰がよいか尋ねました。

高齢の被験者は家族を選び、若い被験者は本の著者に会うことや新しい知り合いとの仲を深めることにも同程度の熱意を示しました。さらに自分が国内の遠くへ引っ越すところだとしたらどうかと質問すると大きな変化が見られ、若い被験者も家族を選んだのです。

次に医学の飛躍的な進歩によって寿命が20年延びたならどうかと尋ねると、高齢の被験者の選ぶ答えは若い被験者と同様のものとなりました。

残り時間に対する意識というのは、まさに探索と活用のジレンマです。若者も高齢者もそれぞれの残り時間に対して探索と活用を行なっていますが、残された時間に何を優先するかによって、探索と活用の配分が変わります。

探索と活用のトレードオフから学ぶとしたら、祖父がよいレストランを教えてくれたら、それを信じるべきです。その情報は何十年にもわたる探索の末に得た貴重な情報だからです。

探索のみを行なっていては、好きなものに時間を使えなくなりますし、逆に活用ばかりだと新しいものに出会えなくなります。その際、時間軸を考えながら、本当にやりたいことに時間を使った方が幸せになれます。探索と活用のバランスをとることが幸せの秘訣なのかもしれません。

難しい問題を扱う場合には、最短の時間で最も合理的な答えを出せる方法こそ最良のアルゴリズムであり、この場合にはすべての要素をじっくり検討したりすべての計算を完遂したりすることは決してない。現実の生活は、そんなことでは片づけられないくらい複雑なのだ。

本書には多くのアルゴリズムが紹介されていますが、本書を読めば読むほど、完璧な答えなどなく、多くの場合には最適解を求めることが重要であることがわかります。また、選択肢を増やすことが話しを複雑にしてしまうので、一定ラインのゴールを決め、判断するようにしましょう。

物事を判断する際に、有効なアルゴリズムがあれば、推測を行ない、より単純な解決策を優先できます。その際、エラーのコストと遅延のコストのトレードオフを行なうことで、よい結果を得られます。このトレードオフこそが最も合理的な行動だということを忘れないようにしましょう。


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