逆境を生き抜くための教養 (出口治明)の書評

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逆境を生き抜くための教養
出口治明
幻冬舎

本書の要約

偶然や運は、歴史の進行において重要な役割を果たしているということを認識しなければなりません。私たちは自らの意思で全てを完全に支配することができると思い込んでいることが、時には誤解を招くこともあります。計画では予測不可能な要素が介在することもあるため、偶然や運に対して謙虚な姿勢を持ち、それを最大限に活用する能力を身につけることで、逆境を乗り越えられるようになります。

逆境に陥った際に歴史が役立つ理由

何かに挫折したからからといって、落ち込む必要はない。結果的に「面白い」と思える人生になればいいわけですし、人生は必ずそうなると僕は思うのです。(出口治明)

著者の出口治明氏は、脳出血で倒れ、失語症・右半身まひという後遺症を抱えました。しかし、懸命なリハビリを経て、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長職に復帰しました。

72歳で直面した人生最大の逆境を乗り越える支えとなったのは、それまでに読んできた1万冊以上の本から得た「知の力」「教養」だったと言います。本から得た知識や教養が、彼を支え、困難を乗り越える力を与えてくれたのです。

逆境を経験している時こそ、歴史の学びが価値を発揮します。歴史を理解することで、困難は永遠ではなく、過ぎ去るものであることが理解でき、未来へ向けての勇気を得ることができます。 歴史は、私たちが過去から学び、未来を切り開くための貴重な教材です。歴史を学ぶことで、私たちは、困難を乗り越えてきた人々の知恵と経験を学ぶことができます。

また、歴史を学ぶことで、私たちは、世界の仕組みや人間の行動の原理を理解することができます。これらの知識は、私たちが困難な状況に直面したときに、冷静な判断を下し、適切な行動をとるために役立ちます。

困難な状況では、数字、事実(ファクト)、論理が不可欠です。数字や事実に基づいて現状を分析することで、問題の根本原因を理解することができます。また、論理的に思考することで、解決策を導き出すことができます。力や知恵よりも、運と適応性が重要です。

困難な状況では、思い通りに物事が進まないことも多いです。そんな時こそ、運と適応性を頼りに、柔軟に対応していくことが重要です。その際、不条理はまず受け入れ、その上で前進すべきです。不条理な現実を受け入れることは、簡単なことではありません。しかし、不条理を受け入れ、逆境に陥った自分の現状をあきらめることで、前進するためのエネルギーを得たり、新たなアイデアが浮かんでくるのです。

運や偶然を受け入れ、それを味方にすべき理由

成功するかどうかは、「運」に大きく左右さしかも、行動の結果は、あとの時代にならないとわからないことがほとんどです。

私たちは「進歩」という言葉を、明確な目標に向かって計画的に行動することと結びつけがちです。しかし、歴史を振り返ってみると、進歩は必ずしも目的意識や計画によって生まれたものではないことがわかります。人間は理性的な存在として、運や偶然をあまり認めたがりません。

しかし、実際には運や偶然が歴史の進行において重要な役割を果たしているのです。私たちは自分の意志で全てをコントロールできるという認識は時として間違っており、運や偶然によって計画では対応しきれない要素が生じることもあります。運や偶然を受け入れ、それを最大限に活かす能力こそが、歴史の進歩に繋がる重要な要素であり、私たちはそれを認識し、学びを得るべきです。

人類の歴史は「進歩」ではなく「進化」を経てきました。進歩とは、目的志向の動きであるのに対して、進化とは価値判断から独立した、状況に適応するための変化です。生物の進化と同様に、歴史の流れの中で偶然の環境変化に適応できた者が生き残るのです。

クライブ・フィンレイソンは、「生き残るために必要なのは『適切なときに適切な場所にいる』こと」と指摘しています。

遭遇する逆境は、次なる順境への準備期間と捉えることが有益です。逆境にあっても自分にできることを見つけ、状況が好転するのを待つ。運命は私たちの手の届かないところにありますが、自分がどう適応するかという点では、私たちは何かを行うことができます。

逆境が偶然に訪れたとき、私たちは力を尽くしてそれを変えることはできません。「なぜこんなことになったのだろう」「どうすれば元の生活に戻れるだろう」と思うことは自然ですが、それは結局のところ無駄な努力に終わります。逆境そのものは「どうにもならない」と受け入れ、それから進むための最善の適応策を見つけ出すことが肝要です。逆境は、私たちを成長させてくれるものと捉え、変化に適応するのです。

逆境に直面したとき、私たちは次の3つのことを心がけるべきです。
・現実を受け入れる。
逆境は、私たちがコントロールできないものです。現実を受け入れ、それを受け入れられない自分自身を受け入れましょう。

・自分にできることを見つける。
逆境の中には、私たちにできることがたくさんあります。自分にできることを見つけ、行動を起こしましょう。

・前を向く。
逆境は、私たちを成長させてくれます。前を向き、成長の機会と捉えましょう。

プランド・ハップスタンス(計画的偶発性)理論は、スタンフォード大学の社会心理学者のJ.D.クランボルツ博士によって提唱された理論です。この理論を知ること、実践することで、私は逆境を乗り越えることができました。

人生は予測不可能であり、将来を完全に制御することはできません。しかし、自己の行動と反応には制御の余地があり、自らが望む方向に向かって積極的な行動をとることで、可能性や機会を創出することができます。 人生は絶えず変化し、ひとつの道にとらわれることは適切ではありません。将来を予測するよりも、可能なチャンスを積極的に追求し、オープンなマインドを持ち続けることが重要です。

一つの職業に固執しすぎると、視野が狭くなってしまいます。偶発的な出来事から生まれるものをキャリアに活かすことは可能ですが、それはコントロールを失うことではありません。むしろ、有益な偶発的な出来事を創出し、生じるチャンスを活用する能力を身につけるのです。

人生には偶発性がつきものであり、その偶発性に頼ることを恥じる必要はありません。実際に、偶発的な出来事は私たちには想像もできなかったチャンスをもたらしてくれるのです。

私たちが予見できない出来事や問題、困難が生じたときでも、それらは全て予測不能な偶然性の一部であり、それらを受け入れて適応することで、新たな道筋を見つけ出すことが可能となります。運や偶然を味方にするマインドセットを身につけ、逆境を乗り越えましょう。


 

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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