捨てる幸せ―――シンプルに、ラクに生きる「禅の教え」(藤原東演)の書評

捨てる幸せ―――シンプルに、ラクに生きる「禅の教え」
藤原東演
あさ出版

本書の要約

心のなかの余計なものを手放すことで、幸せになれます。欲に支配される人生を見つめ直し、心身を安らかに保つことを目指しましょう。自分が本当に必要としているものを求め、それを生きる活力にするのです。必要以上な欲を捨てることが、幸せな人生を始める一歩になります。

安心(あんじん)が幸せになるために必要な理由

人の心には、 ●「いつも足りない」という〝渇する〟気持ち ●「損得」「勝ち負け」「善悪」といった〝2つの考えのどちらかに偏る〟考え方 ●こだわって〝心を固くする〟頑なさ ●自分の思いを〝手放さず執着する〟心という4つが必ずあるもの。これを少しでも軽くするのが、「捨てる」こと。(藤原東演)

臨済宗妙心寺派宝泰寺住職の藤原東演氏は心のなかの余計なものを手放すことで、幸せになれると言います。仏教では“心が何ものにも乱されずに、安らかである状態”=安心(あんじん)を幸せだと説きます。「幸せ」を「安心」ととらえなおしてみると、欲求を満たすだけでは幸せになれないことがわかります。

平穏無事な心のあり方は、欲にまみれ、欲を追い求めていては得られません。 適度に求めることが理想で、あまり求めすぎないことで、心を安らかな状態に保てます。

曹洞宗の開祖・道元は、「安心」を「安身立命」と言ったそうです。 「我が身を安らかに保ち、与えられた命をまっとうすることが大切だ」と道元は考えていました。

欲は人間に必要不可欠な、生きる原動力です。 しかしそれも行きすぎては無用な競争を生み、自分も他人も傷つけることにつながります。心身を満たし、人生を幸せにするためであったはずの欲が、心身を損なわせ、人生を不幸なものに変えてしまいかねません。 欲を捨てることが、幸せにつながることも多々あるのです。

欲に支配される人生を見つめ直し、心身を安らかに保つことを目指しましょう。自分が本当に必要としているものを求め、それを生きる活力にするのです。必要以上な欲を捨てることが、幸せな人生を始める一歩になります。

先日、リバースバケットリストについて書きましたが、まさに人生後半戦では成功依存症を脱却し、心を安らかに保つために感謝の心を養うべきだと思えるようになりました。

感謝の気持ちが幸せを運んでくる理由

「ただ生きているだけでありがたい」とはよく言いますが、本当にそこまで思える人は、そうはいないでしょう。いつも不足を感じてしまいますし、生きていればさまざまな欲求があって当然ですし、欲求そのものは、人が活力ある人生を送るために必要なものです。ただ、ちょっと油断すると、とめどない欲求に飲まれて自分を見失う危険がある世の中です。

欲求は活力のある人生に欠かせないものですが、欲求に支配されすぎると自分の人生を見失ってしまいます。成功体験に依存するのをやめ、ときには、ただ生きていることのありがたはみに思いを馳せてみましょう。

中国の禅書『碧巌録』に「独坐大雄峰」という禅語があります。百丈懐海(中国の唐代の禅僧)に、ある僧が「如何なるか是れ奇特の事(禅とは、いったいどのようにありがたいものなのか、禅を通じてどのような霊験があるのか、そもそも真の幸せとは何か)」と尋ねたら、百丈はたったひとこと「独坐大雄峰(一人、この大雄峰に座すこと)」と答えた、と言います。

今、自分のいる場所で一人座っていることがもっともありがたく、幸せなことだと百丈懐海は考えたのです。今ここに自分が存在していることに感謝する時間を持つことで、幸せな気持ちになれます。

あなたに今、無いものに求める努力をする前に、やっていただきたいことがあります。まず自分にある物を数えましょう。そしてあることに感謝し、活かしましょう。今、あるものを感謝せず、活かそうと努力しない人は、心が貧しくなってしまうからです。

福を受け取った時にも感謝の気持ちを持つべきです。自分一人で福を受け尽くすのではなく、少しでも他者にお分けする心を持つことで、周りの人との関係をよくできます。福を独り占めにすることで、孤独になる人が多いと著者は言います。年齢を重ねた時に、孤立しないように積極的に貢献しましょう。

「福」という字を分解するとシメスヘンに一、口、田になります。一は自分という一人の人間。口は食べる口と心の口の両方を表しています。田は心身の田のことと考えます。このうように考えると福を得るためには、心の栄養が必要なことがわかります。

心には「コツコツ続ける」 「じーっと耐える」「新しいものにトライする」「立ち上がる勇気」、「謙虚になる」「人を思いやる気持ち」「人の喜びも悲しみも共にあるく」……そういう「心の能力」は本来、誰でも平等にあるし、いくらでも耕すことができます。

心の資源に感謝し、生かすことができる人こそ「福」のある人なのです。心をよい状態に保つことで、他者に貢献できるようになり、私たちは幸せになれるのです。他者やモノへの感謝の気持ちを忘れないことが、幸せになるための秘訣です。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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