脱優等生のススメ
冨田勝
早川書房
本書の要約
イノベーターは問題解決力や創造性を持ち合わせており、自分自身で考え、行動する能力があります。 個々の社員が自分の役割と責任を理解し、自主的に動くことで、全体の組織の成果が向上します。新しいプロジェクトに参加したイノベーターは、指示に従って作業をするだけでなく、自分のアイデアや提案を積極的に出し、問題が発生した際も自らの頭で考え、解決策を見つけ出して行動します。
イノベーターは脱優等生から生まれる??
もしあなたが勉強嫌いで、「優等生」には向かないタイプだとしたら、まったく別の道があります。それは「脱優等生」を目指すことです。そのことがもしかしたらあなたの人生を輝かせるかもしれません。 「優等生」は、先生に言われたことをそつなくこなし、全科目のテストで良い点数をかせぐので成績優秀です。一方、「脱優等生」とは、常識にとらわれず、好きなことに全集中するので、成績優秀とは限りません。(冨田勝)
生成AIの登場で、結果を出せる人の定義が変わりつつあります。日本の学校教育では、共通テストに向けた5教科7科目の学習が強調され、生徒たちは与えられた問題を効率よく解決する技術を身につけます。
しかし、この数年のAI(人工知能)の進化に伴い、その学び方が意味のないものになりつつあります。「問題解決型」の優等生がAIに取って代わられつつあるという現実を直視する必要があります。点数を取ることを目的にする優等生をやめ、思考する力を養ったほうがよさそうです。
この急激に変化する世界で、私たちは自分の人生をどのように築いていくべきなのでしょうか? 現代社会では、AIによる労働の代替が進む一方で、創造性や柔軟性といった人間独自の特性がより重視されるようになっています。
今までのように自分の得意科目を極めることもある程度必要ですが、それと同時にAIにはできない「人間らしい」能力を養うことが求められています。 たとえば、創造性を磨くためには、新たな挑戦を恐れずに多様な経験を積むことが重要です。
これにより、自身の視野が広がり、新しい視点やアイデアが生まれることでしょう。また、柔軟な思考を育むためには、多くの情報を吸収し、違う視点や意見に対して理解を深め、それらを自分の考えに反映させられるようになります。 これからの時代は、AIに取って代わられないスキルを身につけることが自己成長のため、そして生き抜くための鍵となるでしょう。
過去の歴史を遡るとわかりますが、イノベーターは脱優等生であることが多いと慶應義塾大学名誉教授の冨田勝氏は指摘します。松下幸之助や本田宗一郎もエジソンも脱優等生で好きなことに時間を使っていました。
自分のやりたいことは何だろう。「自分らしい人生」とは何だろう。こう自らに問いかけてみることがとても大切です。これは子どもたちに限らず、どんなライフステージにいる人にも当てはまると思います。
AIにできることはAIに任せ、自分の人生について真剣に考え、何にリソースを使うかを決めたほうがよさそうです。
人は誰でも嫌いなことや苦手なことがあります。しかし、日本人には我慢することが美徳とされる風潮があります。そのため、嫌いなことでも我慢してやり続けることが求められることがあります。
嫌いなことを我慢してやることで私たちは疲弊し、エネルギーやモチベーションを失います。逆に、自分の好きなことを徹底的にやる人のほうが、今後は結果を出せると著者は言います。好きなことを追求し、それに没頭することで、自分自身の人生がより充実したものになるというのが本書のメッセージになります。
イノベーターを増やすこと日本を元気にする!
ものすごく良いものを生み出す第一歩は、人と違うことをすることです。人がやらないことや前例のないことは、失敗するかもしれないので「勝負」することになります。勝負は勝つこともあるし負けることもある。でも勝負をしなければ確実に負ける。そして積極的に新しい勝負をしかける「イノベーター」が圧倒的に不足しているため、平成に入ってからずっとジリジリ負けている。それがいまの日本の現状だと思います。
現在の日本では積極的に新しい勝負をしかける「イノベーター」が不足しているのが現状です。イノベーターとは、新しいアイデアや手法を生み出し、社会に革新をもたらす人々のことです。彼らは既存の枠にとらわれず、常に新しいチャレンジをし続けます。前例がないときには、まずやってみるというマインドセットを持つことがイノベーターには求められます。
悲しいことに平成時代に入ってからも、日本はジリジリと負け続けています。イノベーター人材の不足が日本の成長を阻害する要因のひとつになっています。イノベーションが活発に行われない限り、日本は他国に追い越されるばかりでなく、経済や技術の発展も停滞してしまいます。
日本が再び成長し繁栄するためには、イノベーターを育成し、彼らが積極的に新しい勝負をしかける環境を整えることが必要です。教育や企業の支援など、様々な方策が考えられますが、まずは個々人が自らの意欲を持ち、チャレンジする姿勢を持つことが重要です。 失敗することを恐れず、新しいアイデアや手法に挑戦し続けることで、私たちはものすごく良いものを生み出すことができるのです。
優等生は、言われたことはしっかりやり通し、その内容も完璧だったりして、周囲からの信頼も厚いです。しかし多くの優等生は、減点されることを好みません。失敗するのがイヤなので、新しいこと、人と違うことはせずに、現状の中でできることをやります。
優等生ばかりの組織では、新しいことにチャレンジすることに躊躇したり、承認プロセスに時間がかかったりする傾向があります。その結果、世の中の変化に追いつくことができず、競争力を失ってしまう可能性があります。
私たちは、評価や出世、給与といった目に見える成果だけに囚われず、仕事の本質的な意義を見つめ直す必要があります。ビジネスを通じて、世の中や顧客を幸せにするためにはどうすればいいのか、そのために何をすべきなのかを考えなければなりません。
また、新しいことに積極的にチャレンジし、柔軟に変化に対応することも必要です。組織全体が変化に対応できる文化を作り上げることで、競争力を維持し続けることができるでしょう。
他者の視線や批判を気にすることをやめ、まず一人ひとりが自分の頭で考えるべきです。上司から指示されたことだけを実行するのではなく、自分で何をやるべきかを考え、その目的や存在する問題を理解することが、イノベーターへの道のりの始まりとなります。
「優等生」から「脱優等生」へと移行することで、企業の文化そのものが変わり始めます。優等生型の働き方は、単に指示に従うことに重きを置いていますが、それでは主体性や創造性は育ちません。
一方で、イノベーターは問題解決力や創造性を持ち合わせており、自分自身で考え、行動する能力があります。 個々の社員が自分の役割と責任を理解し、自主的に動くことで、全体の組織の成果が向上します。新しいプロジェクトに参加したイノベーターは、指示に従って作業をするだけでなく、自分のアイデアや提案を積極的に出し、問題が発生した際も自らの頭で考え、解決策を見つけ出して行動します。
イノベーターになるための最初の一歩は、自己啓発や情報収集から始まります。自分のスキルや知識を広げ、深めることで、新たな視点やアイデアを生み出すことができます。さらに、他人とのコミュニケーションも重要で、異なる意見や経験から学ぶことが、新たな発見や成長につながります。
今までやったことのないことにチャレンジするためには、自分で考え、主体的に動く必要があります。主体的に動く人間とは、自己の意志や目標に基づいて行動する人のことです。もがきながら、苦しみながら行動することは、他人や状況に流されることなく、自己の信念や価値観に忠実に生きることを意味します。
優等生という立場を捨て、本当にやりたいことにチャレンジすることが、AI時代の日本人には求められています。AIの発展により、機械が単純な作業をこなすことができるようになってきました。そのため、単なる知識やスキルの持ち主ではなく、独自のアイディアや創造力を持つ人材が重要視されるようになっています。
「好き」をつなげていけば、その先には自分が納得できる未来が開けるかもしれません。
私たちは自分自身の生き方を切り開く主体者であり、好きなことを見つけ、それに取り組むことで自身の人生はより豊かなものになります。この自発的な行動は、自己の成長を促し、自分だけでなく他者への価値提供にもつながります。
自分が心からやりたいと思うことにエネルギーを注ぐことで、その情熱は溢れ出し、自己成長と自己実現への道を開くのです。 また、好きなことへの探究心は新たな好きを生み出し、その連鎖によって得られた知識や体験は、他者が抱える問題、すなわち顧客のペインを理解し解決するための武器となります。
私たちが得意とする分野や関心のある事柄に熱心に取り組むことで、より深い理解やスキルが培われ、それが他者への価値提供へと繋がります。そして、それはまさにイノベーションの種を生む行動となるのです。
私たちは自身がどこに情熱を向け、どの部分に時間を投資するかという選択から、未解決の問題や社会の課題を見つけ出すことができます。そしてその課題を解決する行動を起こすことで、私たちは新たな価値を創出し、世界を少しずつ変えていくことができるのです。
この本にはその好例として、著者の父である冨田勲氏の逸話が紹介されています。彼はすでに名を成した作曲家であったにもかかわらず、一旦自身の活動を停止し、シンセサイザーに没頭する道を選びました。その結果、新たな音楽の領域を切り開くことに成功し、多くのミュージシャンに影響を与え続けています。
本書にはこのような様々な興味深い人物たちのエピソードが満載ですが、特にこの冨田氏の物語は、新たな挑戦を通じて価値を創造し、世界に影響を与えることの可能性を強烈に示しています。著者の経歴や考え方もぶっとんでいて、とても共感を覚えました。
「脱優等生」を果たすことは、他人の評価に囚われず、自分らしい人生を生きることを意味します。イノベーションは、そのような行動から生まれます。自分のやりたいことに情熱を注ぎながら、社会のニーズに応えることができるのです。
「脱優等生」を果たすことは容易ではありませんが、自己認識を深め、自己成長に努め、他人との信頼関係を築くことで、自分らしい人生を生きることができます。他人の評価に囚われず、自分の内なる声に従って進むことで、充実した人生を築くことができるようになります。その結果、世の中に貢献できるようになり、イノベーションを起こせるようになるのです。
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