マーケティングの扉 経験を知識に変える一問一答(音部大輔)の書評

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マーケティングの扉 経験を知識に変える一問一答
音部大輔
日経BP

本書の要約

「目的」は、達成しなければならない具体的な成果を指し、「リソース」は、その目標を達成するために活用できる手段やツールを示しています。この2つから戦略を明確に定義し、その構成要素を深く理解することにより、より効果的なマーケティングプランを策定でき、成功の確率を高められます。

目的と資源から、戦略を考えるようにしよう!

全てのマーケティング活動には「達成すべき目的」があり、使える「資源は有限」です。そこで、資源を有効に使うための指針が必要です。この指針が「戦略」です。 (音部大輔) 

「戦略」を「目的」と「資源」に分けることがマーケティングにおいては重要だとマーケターの音部大輔氏は、本書で何度も力説します。

戦略は、ビジネスや組織の成功に不可欠な要素とされています。例えば、企業が競争力を維持し成長するためには、適切な戦略の策定が必要です。戦略は長期的な視野を持ち、将来の目標や方向性を明確にするために活用されます。

戦略とは、「何を行うか」を決めることです。つまり、企業がどのような方向性や目標を持ち、どのようなシナリオを描いていくかを決めるものです。著者はこの言葉を「目的達成のための資源利用の指針」という風にわかりやすく定義しています。

戦略の概念は一見複雑そうに思えますが、それを「目的と資源」に分けて考えることで、この複雑性が解消されます。目的とは、達成したい目標を指し、資源とはその目標達成のために利用可能な手段やツールを意味します。 このように戦略を明確に定義し、その構成要素を理解することで、より効果的な計画立案が可能になります。さらに、正しい意思決定を導くための方向性も提供します。

手段が目的化したり、施策に迷ったときにはこの基本に立ち帰り、目的と使える資源に立ち返りましょう。リソースに目を向けることで、達成可能な最適なプランが頭に浮かぶようになるはずです。

手段の目的化とは、本来の目的を見失い、手段そのものが目的となってしまう状態を指します。ビジネスシーンにおいては、目標を達成するための手段を選択する際に、手段自体に固執してしまい、目的を見失ってしまうことがあります。

このような状況に陥った場合、基本に立ち帰り、目的と使える資源に立ち返る必要があります。目的を明確にし、目指すべき最終的なゴールを再確認することで、適切な手段を選択し、最適なプランを立てることができるはずです。Howから考えるのをやめ、実現したい目的に立ち返ることで、失敗を犯すことを防げます。

マーケターは市場の変化に適応し、日々、成長することが求められます。音部氏は成長とは「昨日できなかったことが明日できること」だと述べています。これは、以前は達成できなかったことが、現在では可能になる過程を示す強力なイメージです。

では、どのようにして昨日できなかったことを明日にはできるようにするのでしょうか?
①リソースやツールの獲得
新たなリソースや手段を手に入れることで、それまで達成できなかった目標が可能となります。これは、ビジネスや個人の成長に直接的に寄与します。

②知識の獲得
知識はリソースの一種と考えることもできます。そして、この知識とは単なる事実やデータだけではありません。それはまた、経験を通じて得られる洞察や理解をも含みます。新しい知識を獲得することで、視野が広がり、新たな戦略を練ることが可能となります。

③柔軟性やチャレンジ精神
新たな知識を学ぶだけでなく、それを実践に移すことで、真の成長が実現します。 さらに、失敗は成長過程の一部であり、失敗から学び、進化し続けることが重要です。

成長とは、一言で言えば、自己超越のプロセスです。それは昨日の自分を超え、明日の自分を創造するための旅です。新たなリソースや知識を獲得すること、柔軟性とチャレンジ精神を保つこと、そして失敗から学ぶ能力 – これら全てが、その旅の一部です。常に自己向上を追求し、新たな挑戦に向き合うことで、我々は限りなく成長し続けることができます。

マーケティングは、人間と人間関係を対象とする活動!

マーケティングというのは、人間と人間関係を対象とする活動であると考えられます。関係や社会の中での人間理解が重要です。時代を超えて読み継が れている文学作品、漫画、映画などは、普遍的で本質的な人間描写をしていることが多いと思います。マーケティングをする上で、きっと役に立つでしょう。

マーケティングにおいて顧客体験をアップすることが重要なテーマになります。人との関係の中で、購買体験のヒントがもらえます友人や家族、会社の同僚、時には同じ電車に乗り合わせた乗客などからヒントをもらえます。

多くのブランドは人と人との間に存在理由を求められます。ブランドが存在する理由は、顧客との信頼関係を築くことです。ブランドは単なる商品ではなく、その背後にある価値やメッセージを伝えるものです。顧客はブランドを通じて自己表現やアイデンティティの一部を表現したり、特定の価値観やスタイルを共有するコミュニティに参加したりします。

人間力を磨くためには、様々な知識、体験が求められます。時代や状況に合わせたマーケティング戦略を立てるためにも、人間理解が欠かせなくなっています。文学作品や映画などの人間描写から学び、顧客との関係をより良いものにするために、マーケティングの視点を広げていくことが重要です。 マーケティングを行う際、こうした作品から得られる教訓は非常に多いです。

物語の中で描かれるキャラクターたちの欲求や感情、抱える問題や目標は、顧客のそれらと重なる点が多く存在します。キャラクターがどのように解決策を模索し、選択を行うかを観察することで、我々は顧客にとって最適な提案を作り出すヒントを得ることができます。

マーケティングは決して商品やサービスの売り込みだけを意味しません。それはむしろ、顧客との長期的な関係を築き、顧客満足度や信頼度を向上させるプロセスです。そのためには、顧客の心理や行動の深い理解が不可欠です。そして、その理解を深めるためには、文学作品や映画などの人間描写が与える洞察が有効な手がかりとなります。

私が広告業界に足を踏み入れたとき、数人の上司から「読書や映画、アートに時間を投資すること」を力説されました。この言葉は、40年近く経った今でも心の片隅に残っています。そのアドバイスに従い、時間を使って数多くの書籍に目を通し、映画を観賞し、アートに触れることで、マーケターの今の私が形成されました。

マーケターだけでなく、起業家や経営者も、同じように時間を割いて各種の媒体に触れることが重要だと強く感じています。読書や映画鑑賞は単なる娯楽ではなく、顧客体験を理解し、向上させるための重要な武器になります。

顧客との良質なコミュニケーションは、企業を成長させる大切な要素です。そのためには、多様な体験を通じて深い洞察を得て、顧客の視点と感情を理解する必要があるのです。忙しいという言い訳を言うのをやめ、読書や映画、人とのコミュニケーションにもっと時間を割きましょう。



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