調和的情熱が私たちに必要な理由。パッション・パラドックス(ブラッド・スタルバーグ, スティーブ・マグネス)の書評

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パッション・パラドックス
ブラッド・スタルバーグ, スティーブ・マグネス
左右社

本書の要約

調和的情熱は、個々の人々が彼ら自身の才能や興味に基づいて最高のパフォーマンスを発揮する助けとなります。この結果、それぞれの個人が持っている独自の視点やスキルが集約され、多様な価値観やアイデアが生まれます。それらが相互作用を持つ場で、社会全体が豊かになり、問題解決能力も高まる可能性があります。

情熱が私たちの成長に欠かせに理由

芸術、スポーツ、ビジネスなど、多くの分野に関する研究結果によれば、ある人がいだく調和的情熱と、その人の活力、前向きさ、学習、練習、成果、そして人生全般の満足度の間には関連が見られる。熟達思考を身につけ、調和的情熱をはぐくむことは、みずからの能力を開花させ、人生を満喫するためのカギを握る要素に思える。ブラッド・スタルバーグ, スティーブ・マグネス

芸術やスポーツなどの活動に情熱を注ぐ人々は、その活動に取り組むことで人生における満足度が高まる傾向があります。これは、活動に対する熱意や情熱が人々の活力や前向きさを引き出し、学習や練習を通じて成果を上げることにつながるからです。

人のパフォーマンスを高めるプロフェショナルのブラッド・スタルバーグスティーブ・マグネスが強調しているように、情熱は二面性を持つと言います。情熱にはよい情熱である調和的なものと悪い情熱の強迫的なものがあるのです。(パッション・パラドックスの関連記事

調和的情熱とは、自分が楽しむことができる活動に対する情熱のことです。例えば、音楽や絵画、スポーツなど、個々人が興味や関心を持つ分野に対して情熱を注ぐことがあります。この調和的情熱は、人々の能力を開花させる要素となります。

一方、悪い情熱である 強迫的情熱は、一見すると熱狂的で情熱的な行動や取り組みに見えるかもしれませんが、実際には自己犠牲や健康への悪影響をもたらすことがあります。このような情熱は常に自分自身に対して過度なプレッシャーや負担をかけ、結果的に燃え尽きてしまうことがあります。

調和的情熱と熟達思考は人生の質を高める素晴らしいレバーだち著者らは指摘します。両者は密接に関連しており、以下のように人々の生活にポジティブな影響を与えると考えられます。

調和的情熱は人々に目標を持ち、それに向かって努力する意欲を与えます。情熱を持つことで、人は自分自身に挑戦し、成長する機会を得ることができます。また、調和的な情熱は人々の創造性を引き出し、新たなアイデアや解決策を生み出す助けとなります。

このような行動は、個人のパフォーマンスをアップさせるだけでなく、組織や社会全体にもプラスの影響を与えることができます。 さらに、熟達思考は人々に持続可能な成果を生み出す力を与えます。熟達思考とは、常に自己向上を追求し、継続的な学びと成長を重視する思考のことです。この思考法を持つ人々は、努力と忍耐を通じてスキルや知識を高め、高いパフォーマンスを維持することができます。

最高の情熱は、「調和的情熱」であり、その活動そのものが楽しいという理由でいだく情熱です。このような情熱を持つことで、自己成長や充実感を得ることができます。一方で、無理や強制された情熱は持続しづらいものです。自分自身との調和を保ちながら、自分の本当の情熱を見つけることが大切です。

調和的情熱が私たちに必要な理由

調和的情熱は、その活動そのものが楽しいという理由でいだく情熱である。調和的情熱の持ち主は、健康で、幸福感が高く、成果も挙がり、人生全般に満足できる傾向がある。調和的情熱は、ひとりでに生まれることはない。

調和的情熱によって、私たちは自分のスキルをアップし、人生の満足度を高めることができます。調和的情熱は、自分自身が楽しんで取り組むことであり、自己成長や目標達成に向けた積極的なエネルギーを生み出します。 例えば、趣味や特技に対する調和的情熱を持つことで、その分野でのスキルを磨くことができます。自分が興味を持ち、楽しんで取り組むからこそ、時間や労力を惜しまずに学び続けることができるのです。

その結果、自己成長が促進され、自信や満足感も高まります。また、成長マインドセットを育むことも大切です。成長マインドセットとは、自己成長や学びの機会を積極的に捉え、困難や失敗をチャレンジと捉える考え方です。調和的情熱を持つことで、自分のスキルや知識を向上させるために努力を重ねることができます。そして、挑戦を通じて成長し、人生の目標を達成することができるのです。

①調和的情熱と満足度
・自己啓発
調和的情熱を持つ人々は、自分自身のスキルセットと個性を磨くチャンスを見つけやすいです。

・内発的報酬
活動そのものから喜びを感じるため、外部からの報酬や承認が少なくてもモチベーションが維持されます。

・ストレス緩和
情熱を持つ活動はストレスを緩和する良い手段となりえ、心の健康にも貢献します。

②熟達思考と成長
熟達思考とは、単にスキルや知識を高めるだけでなく、深い理解や洞察を持つことです。これらの概念に基づいて行動することで、人々はより充実した人生を送ることができるでしょう。

・成長マインドセット
熟達思考は、失敗を成長と学びの一部として受け入れ、より高いレベルでのスキルと理解に繋がります。

・達成感
一定のスキルレベルに達したと感じることで、自己効力感が高まります。

・人生の目的
熟達思考を通じて、より高い目的や人生の目標に繋がることが多いです。

自分が何に情熱を感じるのかを理解することが成長の第一歩になります。自分自身の内面を探求し、自分が本当にやりたいことや興味を持っていることを見つけることが重要です。これには時間と努力が必要ですが、自分自身と向き合い、自分の本当の情熱を見つけることができれば、やりがいを感じながら取り組むことができるでしょう。

一度自分の情熱を見つけたら、次に重要なのは達成可能だが挑戦的な目標を設定することです。目標は自分にとって意味のあるものであり、自分の情熱を追求するための道標となるべきです。目標を立てる際には、具体的で明確な目標を設定し、それに向かって進んでいくことが大切です。

目標に到達するためには、計画を立てて行動する必要があります。計画は目標達成のための道筋を示し、自分の行動を組織化するための手段です。計画を立てる際には、具体的なステップや期限を設定し、自分の進捗を管理することが重要です。

また、計画は柔軟性を持たせることも大切であり、必要な調整を行いながら目標に向かって進んでいくことが求められます。 定期的に自分自身の進捗を評価し、必要な調整を行うことも重要です。自己評価を行うことで、自分の強みや課題を把握し、改善点を見つけることができます。他の人からのフィードバックを受け入れることも大切です。自己評価と他者からのフィードバックを通じて、自分自身を成長させることができます。

調和的情熱とは、自分自身が楽しんで取り組める興味や情熱を持ちながらも、バランスの取れた生活を送ることです。熟達思考と調和的情熱を組み合わせることで、スキルアップや目標達成を実現することは、私たちの人生に多くのメリットをもたらします。 熟達思考について考えるとき、単にスキルや知識を増やすことだけでなく、深い理解や洞察を持つことが重要です。

人生は終わりのない成長の旅

情熱について考えたり、情熱を追求したりするときも、このようなハーモニー(調和)を感じられる場合がある。自分が情熱と良好な関係をもっていて、本来すべきことを正しい理由で実践できていると、言葉では表現できないレベルで直感的に感じ取れるときがあるのだ。  

調和的情熱とは、楽しみや目的達成とは別に、活動自体が目的であり、報酬や失敗回避といった要素に左右されずに行動する情熱のことです。このような情熱は、古代ギリシャ人が「エウダイモニア」と呼んだ幸福感に近いものです。 調和的情熱を持つことは、常に心地よいとは限りませんが、総合的に見れば非常に充実した経験を得ることができます。

エウダイモニアは、圧倒的な快楽による幸福感ではなく、有意義な活動に関わり、自身の可能性を開花させるプロセスによって生まれる幸福感です。 外的な目標の達成は調和的情熱の主たる目的ではありませんが、活動に没頭することで副産物として外的な成果を得ることが多いです。

成功が最大の関心事である人は、しばしば成功することができません。一方、結果にあまりこだわらず、活動に携わるプロセスに主たる関心を持っている人の方が成功する可能性が高いです。 例えば、趣味の絵画に没頭することで、自己表現の喜びを感じたり、創造力を発揮することができます。このような活動に情熱を注ぐことで、自己成長や充実感を得ることができます。

また、仕事に情熱を注いでいる人も同様で、仕事そのものに楽しみを見出し、自身の能力を高めることで成果を上げることができます。 調和的情熱を持つことは、個人の幸福感や満足度を高めるだけでなく、社会全体の発展にも寄与することができます。個々の能力や情熱を最大限に発揮することで、多様な価値観やアイデアが生まれ、社会的な課題の解決や新たな文化の創造につながるのです。

熟達思考の持ち主は、ある特定の時点での状態ではなく、成長に向けて歩み続けるプロセス全体に照らして自分という人間を定義する。そのような人にとって、情熱の追求は、特定の目標を達成する手段ではなく、自分という人間の一部なのだ。

プロセスに集中することは、自分の努力を実感し、内面から充実感を得ることができると言われています。この独特の自信と満足感は、他人によって奪われることはありません。プロセスに集中する人は、「人事を尽くして天命を待つ」という心境に到達するのです。

長期間にわたって情熱を追求すると、成功も失敗も経験することでしょう。しかし、熟達への道には終わりがありません。プロセスに意識を集中することで、心をかき乱されず、常に落ち着きを保ち、モチベーションを維持することができます。目標を達成できたかどうかに囚われるのではなく、目標に近づくためのプロセスを実践できたかを考えることが大切です。

目標は終着点ではなく、進むべき方向を示すものであることを忘れてはいけません。プロセスに注意を払うことで、人は目標に向けての旅を続けることができるのです。 プロセスに集中すれば、日々、小さな勝利を得ることができます。これらの小さな勝利は、熟達への道の道路標識の役割を果たし、長期間のモチベーションを維持するのに役立ちます。

これは有力な科学誌であるネイチャーに掲載された論文など、多くの研究によっても明らかにされています。 プロセスに集中することで、自分の努力を実感し、充実感を得ることができます。目標に向かって進む旅を楽しみながら、小さな勝利をつかみ、モチベーションを維持しましょう。それが熟達への道を歩む秘訣です。

成長と情熱は深く結びついており、一方が他方を触発し、その逆もまた然りです。特に、人生の後半においては、物理的な能力や認知機能が減少する可能性が高くなるため、情熱を持ち続けることで得られる精神的、感情的な成長がさらに価値あるものとなります。

成長は単なるスキルや知識の向上だけではありません。それは、より強く、より優しく、より聡明になるプロセスでもあります。これは、人それぞれの価値観や人生観によって形成される多面的な成長です。

継続は力なり、とよく言いますが、情熱を持ち続けることが成長のエネルギー源になります。例えば、書くことが人生の一部になっている人が新しい知識や発見を著作に織り込むように、情熱が継続する限り成長も止まらないのです。

私の場合、この書評ブログを通じて情熱を継続する努力を重ねています。毎日書評を書くことが日課となっており、その習慣が私の成長のエネルギー源となっています。新しい本を読むたびに、知識や視野が広がり、自分自身の成長を感じることができます。

さらに、読書やブログの習慣は私の変化のきっかけにもなっています。新しいアイデアや視点を得ることで、自己の考え方や価値観が変わり、成長を促すことができます。また、他の人との交流やフィードバックを通じて、自己の成長を支えることもできます。

成長は一過性のものではなく、継続的な学びや努力を通じて築かれるものです。スキルや知識だけでなく、内面的な成長や思考の柔軟性、他者への思いやりなど、多面的な成長を目指しましょう。継続と情熱を持ちながら、自己の成長を支える習慣を築くことが重要です。

生涯にわたって情熱を持ち続けることで、困難な状況や大きな失敗からも立ち上がるレジリエンスが育まれます。このような人々は、成功や失敗によって揺らぐことなく、自分自身とその情熱に対する信念を保ち続けます。

人生は終わりのない成長の旅です。物理的な制限に達したとしても、感情や精神、知識といった面での成長は可能です。そして、その成長を続ける原動力が情熱です。 情熱はあなたの行動を制限するものではなく、むしろ自由と成長の可能性を広げるものです。それは一時的な熱意ではなく、生涯にわたるコミットメントとも言えるでしょう。

そうした情熱が、人をより強く、より優しく、より聡明に導き、絶えず成長し続ける力を与えるのです。 情熱を持ち続けることは容易なことではありません。人生には様々な困難や挫折があります。

しかし、レジリエンスを持つ人々は、そのような困難を乗り越えるために、自分自身の内なる情熱に支えられています。 情熱を持ち続けるためには、まず自分自身の情熱を明確にする必要があります。何に対して情熱を持っているのか、何を追求したいのかを自問自答し、自分の目標を明確にすることが重要です。

また、情熱を持ち続けるためには、モチベーションを維持することも必要です。目標を達成した時の「ワクワクした状態」をイメージする習慣を身に付けることで、情熱を意図的に生み出すことができます。


 

 

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