レゴはなぜ復活し、イノベーションを起こせたのか?両立思考の書評

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両立思考 「二者択一」の思考を手放し、多様な価値を実現するパラドキシカルリーダーシップ
ウェンディ・スミス, マリアンヌ・ルイス
日本能率協会マネジメントセンター

両立思考の要約

イノベーションを成功させるためには、相反する要求や視点を同時に扱える「両立するマインドセット」を採用することが重要です。このアプローチにより、異なる視点やアイデアを統合し、より全面的でバランスの取れた解決策を生み出すことができます。

悪循環にとらわれる3つのパターン

択一思考はひいき目に見ても限界があり、最悪の場合は害をなす。パラドックスの一方のみを重視すると、選択肢が過度に単純化され、狭まってしまい、悪循環を誘発する場合がある。(ウェンディ・スミス, マリアンヌ・ルイス)

私たちの考え方(認知)、感じ方(感情)、動き方(行動)は、自己補強的であり、自分が好む見方を強化します。私たちはこれにより、間違った選択をしてしまい、失敗を犯すのです。

著者らは、以下の3つのパターンが悪循環につながると述べています
・ウサギの穴(行き過ぎた強化)
・解体用剛球(過剰修正)
・塹壕戦(二極化)

例えば、「ウサギの穴」という概念は、自分が好む方法に過度に依存することを意味し、新しい課題に適応する能力を制限し、成長や変化を妨げる可能性があります。

また、「解体用剛球」の概念は、長年無視してきた問題からの圧力に対して過剰反応することを指し、問題を解決するための修正が過剰になり、新たな問題を引き起こす恐れがあることを示しています。

「塹壕戦」は、対立する2つの極端な立場が互いに自分たちの立場を強固に守り、対立を深める様子を指します。これにより、どちらの陣営も互いに譲らず、解決が困難になる可能性があります。

これらのパターンを避けるためには、自分の思考や行動を客観的に評価し、固定観念にとらわれない柔軟なアプローチが必要です。自身の強みや好みに頼るのではなく、異なる視点や意見を受け入れ、多様な解決策や選択肢を模索することが大切です。常に自己反省を行い、成長と変化を促す行動を心がけることが、これらの問題を乗り越える鍵となります。

対立する両陣営が単純化し、反動的で頑固になると、収集がつかなくなる。 単純化、両極化、孤立化、人格攻撃のパターンは、手に負えないコンフリクトへとエスカレートする。私たちのバイアス、防衛機制、習慣が、のきなみ過剰に作用する。

自分たちの陣営の勝利を追求することに集中しすぎると、他者の意見に耳を傾ける機会を失ってしまうことがあります。その結果、意義のある議論を行うことが難しくなります。振り子のように二つの選択肢の間を行き来する状況を、解体用剛球のように扱ってしまうと、対立する視点から生まれる創造的なエネルギーを無駄にしてしまいます。対立する陣営が常に自分たちの立場を守るために戦う必要はありません。

より良いアプローチは、両立するマインドセットを採用し、競合する要求に同時に対処することです。これにより、異なる視点を統合し、より包括的でバランスの取れた解決策を見つけることが可能になります。このようなアプローチは、より建設的な議論と共同作業を促し、より良い成果をもたらすことが期待できます。

レゴはなぜ復活できたのか?

レゴはワールドクラスの大胆なイノベーションと、規律ある品質基準と財務管理の両方で評価されなければならないと説いた。世界情勢の継続的な変化を考えると難しい取り組みだが、レゴは破滅寸前の状況を2回生き残った。これからも学び、繁栄していけるだろう。

レゴのリーダーシップチームは、かつて成功していた戦略に固執しすぎた結果、問題に気づいた際に過剰な修正を行いました。初めは品質管理に重点を置いたアプローチに偏り、それが孤立、停滞、そして衰退を引き起こしたと認識しました。この認識から、次には極端なイノベーションに全力を注ぐ方針に転換しました。

レゴは戦略開発の指導と調査のために、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身のヨアン・ヴィー・クヌッドストープに依頼しました。クヌッドストープの調査によると、レゴの多くのイノベーションは当初成功を収めたものの、実際に利益を生むものは少なく、売上は頭打ち状態で研究開発費は過剰でした。これにより売上の約30%の減少が予想され、債務不履行の危機に瀕していました。

イノベーション戦略は規律を欠き、複雑さと混乱を増大させていました。たとえば、かつて10年かけて緑色のブロックを導入した会社が、わずか数年で157色ものパーツを生産するようになり、安定していたサプライチェーンはコスト、品質、調整のコントロールを失っていました。

長年のロイヤルカスタマーからは新製品に対する疑問の声が上がり、経営陣内での緊張が高まり、小売業者も新製品ラッシュにうんざりしていました。

しかし、この極端な変更はレゴの成長を一時的に停止させる結果となりました。この経験から、レゴはバランスの取れた戦略の重要性を学び、適切な調整を行う必要性を再認識しました。

また、1980年代以来レゴのオフィスに掲げられており、現在はレゴ博物館に展示されてい11のパラドックスを、クヌッドストープは何度も確認し、他の人にもそうするように伝え、レゴは成長を続けています。

レゴのクヌッドスヌープの11の処方箋
・部下と緊密な関係を構築し、かつ適切な距離を保つこと。
・先頭に立つことができ、かつ目立たずじっとしていられること。
・部下を信頼し、かつ何が起こっているかに目を光らせておくこと。
・寛容になり、かつどのように成し遂げたいかがわかっていること。
・部署のゴールを念頭に置き、かつ会社全体に対して誠実であること。
・自分の時間をうまく計画し、かつスケジュールを柔軟に保つこと。
・見解を自由に表明し、かつ外交的手腕に優れていること。
・先見の明を発揮し、かつ地に足をつけること。
・合意形成を試み、かつ手早く済ませることもできること。
・活動的で、かつ内省的であること。
・自分に自信を持ち、かつ謙虚であること。

レゴの復活に学ぶべき重要な教訓は、相反する要求や視点を同時に考慮する「両立するマインドセット」の採用です。極端な選択に走ると、最終的に成長が停滞するリスクがあるため、バランスを重視する姿勢が必要です。このアプローチにより、持続可能な成長と革新を実現することができます。

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