給料―あなたの価値はまだ上がる(デイヴィッド・バックマスター)の書評

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給料―あなたの価値はまだ上がる
デイヴィッド・バックマスター
新潮社

給料―あなたの価値はまだ上がる(デイヴィッド・バックマスター)の要約

従業員が自分たちの給与を信頼することで、組織は確実に成長します。そのため、公正な給与制度を構築し、給与の透明性を確保することが求められます。給与の決定基準や評価基準を明確化し、メリットやパフォーマンスに応じた報酬を提供することで、給与に対する信頼を築くことができます。

従業員の給与決定に信頼が必要な理由

給与決定の過程に信頼を築き、より多くの人の懐を潤すことによって、不公正で不平等な給与に対する制度上の不安を和らげることだ。(デイヴィッド・バックマスター)

デイヴィッド・バックマスター氏は、大手企業の人事部門で長年経験を積んだ給与の専門家です。彼は、スターバックス、ヤム・ブランズ(ケンタッキーフライドチキンやピザハットを運営)、ナイキなど、アメリカの大手企業で給与決定に携わってきました

アメリカでは、職場での不安に関わる病気が原因で毎年推定12万人が死亡しているという調査結果があります。この問題の重要な要因は給与と福利厚生です。実際、別の研究では最低賃金の増加が高卒以下の人の自殺率を低下させることがわかっています。

給与についての決定は、所得格差による不安を増大させたり抑えられなかったりするという点で、多大な害を及ぼすことも、防ぐことも可能な世界の鍵を握っているのです。

また、従業員のほとんどが自分が公正な給与をもらっていないと考えており、企業側の調査でも自社の給与プログラムを公正だと思っている従業員は、少数であることが判明しています。これは深刻な問題であり、企業の信用にも関わります。

顧客が信じられないと感じるような企業は、長期的な事業継続が難しいでしょう。 給与問題は単なる個人の問題ではなく、社会全体の問題です。公正な給与制度を確立することは、社会の不安を減らし、経済的な格差を縮小させることにつながります。給与の公正さは、労働者の満足度や生産性にも直結しています。

給料をめぐる問題は、企業の「報酬哲学」によって解決されると著者は指摘します。報酬哲学とは、誰がどれだけの給料をもらうかに関するルールだけでなく、企業が給料を支払う理由を明確にするものです。また、競合他社の給与決定にどのように対応するかを公に示す役割も果たしています。

報酬哲学は、企業の給料体系を支える重要な要素です。企業は従業員に対して給料を支払う理由を明確にし、公正なルールに基づいて給料を決定することが求められます。例えば、従業員の貢献度や能力に応じて給料を設定するなど、公正な評価基準を持つことが重要です。

また、報酬哲学は競合他社との給与比較にも関わってきます。企業は他社との競争力を保つために、適切な給与水準を設定する必要があります。競合他社が類似の業界や職種で高い給与を支払っている場合、企業はそれに対応する必要があります。

企業は報酬哲学を明確化し、公正な給与体系を構築することで、従業員のモチベーション向上や競争力の維持につなげることができるでしょう。企業は他社との競争力を保つために、適切な給与水準を設定することが求められます。

競合他社が類似の業界や職種で高い給与を支払っている場合、企業はそれに対応する必要があります。報酬哲学は、このような競争環境において、公平かつ適切な給与水準を維持するための指針となります。 給料をめぐる問題は、単に給与の金額だけではなく、その背後にある企業の給料に対する基本的な考え方やルールに関わるものです。

誠意ある給与が組織を成長させる理由

誠意ある給与とは、公平で透明性のある給与をひたすら追求し、人間らしい生活に必要なものを提供して、人々が自分の貢献と潜在能力に充分な報酬を求められるようにする手段のことだ。 理想的な誠意ある給与は、ブランド戦略のための試みや、1回試しただけで「完了」の印をつけて獲得できるような資格とはまったく違う。それは、企業が重要な給与情報の共有を歓迎し、時間をかけた改善と信頼構築に継続的で誠実な投資を行えるような環境をつくり、維持していく積極的な選択なのだ。

会社が従業員に低賃金を支払う場合、その結果として会社に何らかの不利益が返ってくることがあります。他社と比較して信頼性に欠ける低い給料を支払うと、人々はその会社で働くことを望まなくなるでしょう。

また、会社内に悪い習慣が存在すると、従業員との摩擦や顧客からの苦情に時間を費やすことになり、本来の業務が疎かになる可能性があります。さらに、業界全体が同様に低賃金を維持している場合、最終的には法律による業界のビジネスモデルの根本的な変革が求められることもあります。つまり、適切な給与を支払わないことは、長期的には会社に悪影響を及ぼす可能性が高いのです。

ビジネスリーダーとして、組織の活性化と社員の満足度向上を実現するためには、給与に注目する必要があります。自社で最も給与の低い人の収入やその理由を把握し、全ての従業員がきちんとした楽しい生活を送れるようにするためには、どのようなプロセスと方法論を採用すべきでしょうか。

まず、意味のある変化を起こすためには、公正な給与制度を築くことが重要です。給与の差異が大きすぎる場合、給与の低い人々はモチベーションを失い、不満や不公平感を抱く可能性があります。そのため、公正な給与制度を構築し、給与の透明性を確保することが求められます。給与の決定基準や評価基準を明確化し、メリットやパフォーマンスに応じた報酬を提供することで、給与に対する信頼を築くことができます。

グラヴィティ・ペイメンツの従業員は給与が劇的に上がったことで、同社の従業員は健康的な生活を送るようになりました。ヘルシーな食事、ジム通いの増加、家族旅行、新しい趣味など、充実した生活を実現しています。公正な給与は、人間らしい豊かな生活への道を開くと言えます。適切な給与が、さまざまな社会問題を解決する可能性があるのです。

また、給与だけでなく、福利厚生や労働条件にも配慮する必要があります。給与だけが満足度を左右するわけではありません。従業員が働きやすい環境を整えることも重要です。労働時間や休暇制度、福利厚生の充実など、従業員が仕事とプライベートのバランスを取りやすい環境を整備することで、従業員の生活の質を向上させることができます。

さらに、給与に関する情報の透明性も重要です。従業員が自分の給与がどのように決定されているのかを知ることで、給与制度への理解が深まり、納得感を得ることができます。給与の決定プロセスや基準を明示し、従業員とのコミュニケーションを促すことで、給与に対する不満や疑問を解消することができます。

まら、組織や企業は、従業員の潜在能力を引き出すために、彼らの成長やモチベーションを考慮しながら、報酬体系の見直しや能力開発に力を入れることが求められます。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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