センスの哲学 (千葉雅也)の書評

multicolored painting

センスの哲学
千葉雅也
文藝春秋

センスの哲学 (千葉雅也)の要約

人間の楽しみは、単に安心感を得ることだけではなく、何かしらの「問題」が存在して興奮が高まることから生まれます。このような時、不快感を感じながらも楽しむことがあります。楽しさにはしばしば「否定性」が含まれているため、違和感のある新しいカテゴリーの作品に触れることが、センスを磨くための重要な手段となります。

センスを磨くとは多様な文化資本を形成すること

なにか「すべてに共通するような判断力」を持っている人、というふうに、総合的に褒めるときにセンスがいいと言われることがあります。すなわち、センス:直観的で総合的な判断力、というわけです。 (千葉雅也)

音楽のセンスが良い、ファッションのセンスが良いなどと人を評価する際に、センスと良い言葉が使われますが、センスが良い人とは、どういう人なのでしょうか?

センスとは、直観的で総合的な判断力を指すと哲学者の千葉雅也氏は定義します。ある人が「すべてに共通するような判断力」を持っているとき、その人はセンスがいい人だと言われます。

このようなセンスを持つことは、様々な分野で活躍する上で重要な要素となります。センスを広げるためには、様々な分野に興味を持ち、新しい知識や経験を積極的に取り入れることが重要です。 自分の興味や好みにとらわれず、幅広い視野を持ち、異なる文化や考え方に触れることで、センスを豊かに育てることができます。

また、常に柔軟な思考を持ち、物事を多角的に捉えることもセンスを磨く上で大切な要素です。 子供の時の体験がセンスを身につける際には有利に働きます。確かに多様な文化的蓄積があることは重要ですが、著者はリズムとうねりを活用することで、文化資本は大人になってからも育成可能だと言います。

文化資本の形成とは、多様なものに触れるときの不安を緩和し、不安を面白さに変換する回路を作ることである。  

文化資本の形成は、異なる分野に触れ、柔軟な活動を通じて精神の活動範囲を広げ、異なるジャンル間での面白さの連鎖を促すことで築かれます。

例えば、ファッションに対する興味がきっかけで美術や文学、料理、仕事の方法に対する関心が高まることがあります。このように興味の幅が広がることで、個人の文化資本は豊かになります。これにより、個人は多様な分野に関心を持ち、豊かな文化的な経験を積むことができるのです。

文化資本は個々の文化的素養や知識、経験を指し、その形成には様々な要素が関与します。異なる分野に触れることで、人は新しい視点や価値観を獲得し、自らの世界観を豊かにすることができます。例えば、ファッションに興味を持つ人が美術や文学に触れることで、それぞれの分野における美意識や表現方法について学び、独自の視点を養うことができます。

私は読書や現代アート、R&Bを聴くことに多くの時間を費やしていますが、そのカテゴリーの進化(違和感の発見)によって、センスが磨かれると感じています。これをより広げて多様な作品に触れることで、人生をよりよくできそうです。文化資本は、個人の内面に影響を及ぼし、自己表現や他者とのコミュニケーションにおいて重要な役割を果たします。

文化的素養や知識を広げることは、自己成長や人間関係の豊かさにつながります。さまざまな分野に触れ、それを言語化することで、自分の世界を広げられることは間違いありません。

自らの価値観や考え方が深化し、他者との交流においてもより豊かなコミュニケーションが可能となります。文化資本を育むことは、単なる知識の蓄積にとどまらず、人間としての成長や社会での活動においても重要な役割を果たすのです。

センスを磨くとは何か?

再現から降りる。モデルはあるにしてもそれを抽象化して扱う。抽象化とは、意味を抜き取ることでもある。

著者は、先人の模倣を行う再現志向から一歩踏み出し、「ヘタウマ」のスタイルへとシフトすることが、センスの向上への第一歩であると言います。オリジナルを創るという姿勢の変化だけで、センスが良くなったと感じられるというのがこの考え方です。

この姿勢を取ることで、さまざまなものをインプットする際の受け取り方が変わってくると考えられます。 再現から離れること、つまりモデルは参考にしつつも、それを抽象化して取り扱うことが重要です。

抽象化とは、物事から意味を抽出し、本質を捉えることです。このプロセスを通じて、単に模倣するのではなく、自分なりの解釈や表現を見つけることが、センスを磨く上での鍵となります。

センスとは、喜怒哀楽を中心とする大まかな感動を半分に抑え、いろいろな部分の面白さに注目する構造的感動ができることである。 そのためには、小さな、ささやかなことを言語化する練習が必要でしょう。

センスを磨くことは、自己成長や人間関係の向上、創造性や問題解決能力の発展につながります。そのため、日常生活で新しい刺激を常に受け入れ、センスを磨く努力を怠らないことが重要です。

センスの良い人は、周囲に良い影響を与え、自己の可能性を広げることができます。 彼らは、独自のセンスや感性を持ち、それを活かして周囲に新しい視点やアイデアを提供します。芸術的自由は、予測できない誤差や偶然性から生まれることがあります。

作品が完成する過程での偶発的なアイデアや偶然の出来事が、新しい表現や芸術の可能性を切り開くことがあります。これは美学だけでなく、センスや感性の側面からも重要な視点です。

美しさやセンスについての基準は人それぞれ異なりますが、その違いが新しい発見や表現の機会を生み出すことも事実です。予期せぬ表現や発見が新しい可能性を切り開き、センスを磨くことにつながるのです。

センスの良い人は、常に柔軟でオープンな姿勢を持ち、新しいアイデアや視点を受け入れることができるため、自己の成長や可能性を広げることができます。彼らの周囲には創造性やポジティブなエネルギーが満ちており、その影響力は広がっていきます。

センスを磨くためには、常に新しい挑戦や経験に積極的に取り組むことが重要です。自己の感性やセンスを磨き、周囲に良い影響を与えることで、より豊かな人生を築くことができるでしょう。

また、私たちは社会的動物としての生物的基盤を持ちながら、それを文化や芸術という形で拡張し、さまざまな社会規範を形成しています。芸術的要素を最大限に拡張することで、全ての芸術や生活の中で面白いリズムを見つけその並びを変化させることで、センスの良さを形成することができます。

抽象度を上げ、さまざまな要素を組み合わせで、新たな作品が生まれます。調和的な作品が好きな人もいれば、複雑なリズムが絡み合うサスペンスが好きな人もいます。

人間の生活は、目的志向と、宙づりを味わう不安混じりの享楽という二つをミックスすることでできている。人によってはそのバランスがどちらかに片寄っている場合があるでしょう。

人間にとっての楽しさは単なる安心感だけではなく、どこかに「問題」があることに起因します。問題があることで興奮性が高まり、それが不快でありながらも楽しいと感じられるのです。

サスペンス小説などに私たちは、この問題、落ち着かなさを求めているのです。楽しさの中にはこのような「否定性」が含まれていることが多いです。これを理解し、新しい挑戦を楽しむことが、センスを磨く上での鍵となるというのが著者の主張です。

さまざまな作品のリズムやうねりを見出し、それを楽しむことで、人生の幅が広がりそうです。アートを鑑賞したり、小説、哲学書を読むなど効率的ではない時間をあえてつくることが、センスを高めてくれそうです。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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