#生涯子供なし なぜ日本は世界一、子供を持たない人が多いのか (福山絵里子)の書評

person holding baby's index finger

#生涯子供なし なぜ日本は世界一、子供を持たない人が多いのか
福山絵里子
日経BP

#生涯子供なし (福山絵里子)の要約

日本は世界一高い無子率と出生率の低さを抱えており、これらの問題は社会の根本的な構造問題を浮き彫りにしています。この状況に対処するためには、経済的、社会的、文化的な要因を総合的に捉えた対策が必要です。また、日本人が未来に希望を取り戻すことが最も重要だと考えられます。

日本は無子化社会になりつつある?

日本は世界でも突出した「生涯無子」の国であるということだ。 (福山絵里子)

経済協力開発機構(OECD)のデータによると、1970年に生まれた女性の50歳時点での無子率を比較した結果、日本は27%と先進国で最も高いことが明らかになりました。このデータを報じた日本経済新聞の記事は、SNS上で大きな反響を呼び、ハッシュタグ「#生涯無子」「#生涯子供なし」と共に議論が盛り上がりました。

日経新聞記者の福山絵里子氏は、日本が世界で最も子供を持たない国の一つである現状について、その背景や理由を多角的に分析しています。 これからの日本は、女性の3~4割、男性の4~5割程度が生涯にわたって子供を持たない国になると推計されています。この未来像は、「産みたくても産めなかった日本」、「家族がいない高齢期への不安」、そして「若者の絶望や無関心」という現実をさらに顕著にする可能性があります。

本書では、これらの現象を単に統計上の問題として捉えるのではなく、社会的な構造や背景に対する理解を深めるためのアプローチを採用しています。無子化を「問題」として取り組むことの重要性を説きつつ、同時に個々人の視点を丁寧に汲み取り、無子化がもたらす社会的な影響や個人の経験についても掘り下げています。

多くの男性は、結婚や子育てに必要な経済的安定を持っていないと感じています。若者の就職難や非正規雇用の増加が、この問題を悪化させています。特に都市部では生活費が高く、家族を養うための収入を得るのが難しい状況です。経済的な不安が結婚や子育ての妨げとなり、結果として子供を持たない選択をする男性が増えています。 

一方で、多くの女性は、仕事と子育ての両立に対する不安を感じています。日本社会では、依然として女性に家事や育児の大部分が求められることが多く、仕事とのバランスを取るのが難しいと感じる人が多いのです。また、職場環境が育児と仕事の両立をサポートする体制になっていない場合も多く、キャリアを諦めるか、子供を持たないかという選択を迫られることがあります。特に働く女性には、心理的負担が重くのしかかっているのです。

さらに、日本の少子化には社会的・文化的要因も関係しています。伝統的な家族観や性別役割の固定観念が根強く残っており、これが女性のキャリア選択や家庭内の役割分担に影響を与えています。また、教育制度や職場文化も、子育てと仕事の両立を難しくしている要因です。

「子供を育てることに希望を見いだせない」 「そもそも子供を望まない」3割の無子志向集団。

日本経済が衰退し、政治に不信感を感じる若い世代が増える中、「子供を育てることに希望を見いだせない」「そもそも子供を望まない」という理由の無子志向の人々が増加しています。これは、現代日本の社会的、経済的、文化的背景が複雑に絡み合った結果です。

今回の調査によると日本で子供を持たない理由にはさまざまな要因があることが明らかになっています。これらの要因は「子供の将来不安型」「経済力不安型」「子育て不安型」「個人の価値観型」「なんとなく型」「育った環境の影響型」「子供はリスク型」「パートナー不在型」「不妊型」といった分類がされています。

日本は無子率が高く、出生率が低い国

生涯無子率が世界一の国、日本

世界一高い無子率と出生率の低さは、日本社会の根本的な構造問題を浮き彫りにしています。この問題に取り組むためには、経済的、社会的、文化的要因を総合的に捉えた対策が必要です。

日本政府は出生率向上を目指してさまざまな少子化対策を進めていますが、政策が子育てに偏ることで、出生率は低下し続けています。国際機関からも、まずは男女間の不平等を是正するよう求める厳しい意見も出ています。日本の人口減少は厳しい未来像を示しており、手をこまぬいているわけにはいかない現実があります。

しかし、政府の少子化対策に対する国民の反応は冷めています。国民に「人口減少という脅威」を訴えても、国のために子供を産む人はほとんどいません。特に若い世代では、子供を持つ意欲が低下し、子供を持つことをリスクと捉える人も多いのが実態です。これは少子化が進む東アジアに共通する現象であり、「家族」への過大な負担が背景にあります。

課題解決のために、まず、子育て支援や賃上げは国民の幸せを第一義に考えて全力で実施されるべきです。一人ひとりが幸せになる社会を作ることは当然のことであり、その意味で何もしないでいることは誤りです。

女性が子育てをしながら働きにくい構造を残したまま、男女ともに経済的困窮という新たな問題が覆いかぶさってきている。もはや日本では子供を持たないことは珍しいことではなくなる。子供を持たないという人生を送る人が世界で多い国になる。

日本はしばらくの間、人口が減少していくことが避けられません。出産適齢期の女性の人口がすでに少なく、1人当たりの出生率を上げたとしても人口増加には転じません。できるのは減少のペースを可能な限り緩やかにすることです。

若者の子供を持つ意識が低下し続ける中で、日本社会は未曾有の課題に直面しています。少子化と無子化の進行は、人口減少とともに、経済的、社会的な問題を引き起こしています。今、私たちに求められているのは、人口減少や無子化を前提とした新しい社会構造を築くことです。

日本が直面する少子化と無子化の課題は複雑で、多面的なアプローチが必要です。経済の安定化、男女平等の推進、育児支援の強化、教育と啓発、地域コミュニティの強化など、多岐にわたる対策を講じることで、若者が安心して子供を持つことができる社会を目指していくことが重要です。

若者が日本という国に希望を取り戻すことが最も重要ですが、政治と企業の動きを見ていると期待値は下がるばかりです。国民を貧乏にする政策に終止符を打つために、今こそ一人ひとりの日本人が変化を選択すべきだと思います。私たちは多様で自由な社会になるか、多様で孤独な社会になるのかの分かれ道にいます。


 

 

 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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